建設機械とは

クローラクレーンとホイールクレーン

移動式クレーンのうちでも、土木・建設工事の主役として圧倒的に多いのはクローラクレーン、ラフテレーンクレーンです。
クローラクレーンは、クローラ式の走行装置の上に、クレーン装置+ラチスブームを搭載したもので、安定性がよく、軟弱地盤でも使用できるのが特長です。駆動方式は、機械式の時代を経て、現在ではほとんどの機種が、油圧式となっています。
ラフテレーンクレーンは、専用キャリヤの上にクレーン装置+テレスコピックブームを搭載したもので、機動性にすぐれ、組立て・分解の手間も不要です。上部本体とキャリヤそれぞれに運転室、エンジンがついているトラッククレーン(オールテレーンクレーン)と異なり、運転室もエンジンもひとつで、作業と走行に兼用します。駆動方式は、すべて油圧式です。

クローラクレーンの特性

クローラクレーンは、タイヤで走行するホイールクレーンに比べると、足回りの幅が大きくとれ、安定性が高く、全周どの方向でも同一のつり上げ能力が得られます。接地面積が広いため接地圧が小さいので、ホイール式に比べて比較的軟弱な地盤でも使用できますが、走行速度が遅く、しかも公道を走行できませんから、現場間の移動は、トレーラなどに搭載して輸送しなければなりません。
また、一定以上の質量になると、道路走行や積載の制限により、分解して輸送し、現場で再び組み立てる必要があります。
クローラクレーンは、テレスコピックブームを取り付けたものもありますが、ほとんどがラチスブームですから、Lattice Boom Crawler Craneの頭文字をとって、クローラクレーンをLBCCと呼ぶこともあります。

ホイールクレーンの特性

機動性のラフテレーンクレーン
ラフテレーンは、rough-terrain=不整地用の意味。運転室もエンジンもひとつで兼用するため、車体寸法がコンパクトで、機動性、狭所作業性にすぐれています。走行も作業も1人の運転者が1ヵ所で操作でき、荷をつったまま移動することもできますが、条件によっては前後方向と側方の能力が異なり、接地圧が大きく、軟弱地盤での作業にはあまり向いていません。
専用キャリヤは、運転室がなく自走できないため、クレーンの一部とみなされ、道路交通法では大型特殊自動車となり、固定資産税が課税されます。

高速走行が可能なトラッククレーン
2軸またはそれ以上のトラックキャリヤの上に、クレーン装置+ブームを搭載したもので、キャリヤと上部本体それぞれに運転室、エンジンが搭載されているため、車両寸法が大きくなります。狭い現場への進入性が劣り、作業時占有面積も大きいので、いまでは、港湾荷役等、一部の用途を除いて、あまり使われません。
キャリヤは自走できるのでトラックの一種とみなされて大型自動車に分類され、高速道路も走行できる代わり、自動車税、重量税を払わなければなりません。
現在では、油圧式でテレスコピックブームのものがほとんどですが、港湾荷役などでは、ラチスブームのついたトラッククレーンが、使われていることもあります。

クローラクレーン各部の名称と働き

クレーンアタッチメント

アタッチメントは作業装置とも呼ばれるように、直接荷をつって作業をする部分です。強度が高ければ高いほど、強度域でのつり上げ能力は大きくなりますが、強度を上げるためにブームを太くしたりすると、アタッチメントが重くなって重心が前へ移動し、安定性が低下します。 クローラクレーンのアタッチメントは、一部、ボックスブームもありますが、ラチスブームの先端にフックを取り付けたものが基本です。

タワーアタッチメント

60°~90°に起伏するタワーの先端に、タワージブを取り付けたラッフィングタワーは、クローラクレーンのバリエーションの一種ですが、クローラクレーンより建物に接近して作業ができ、より大きな揚程、作業半径が得られるため、ビルの建て方などに使われます。
タワーもジブも能力表に指定された範囲の任意の角度で起伏させて使用することができます。タワーは、ブームトップ以外はクローラクレーンと共用できます。

上部本体

ブームやジブも、土台となる本体や足回りがなければ、ただの天秤棒です。上部本体は、ブームを取り付けるベースであるだけでなく、エンジンや油圧ポンプなど、機械を動かすための駆動装置や、機械をオペレーターの意のままに制御するための、操作装置、運転室などが搭載されています。上部本体は、360゚旋回できます。

足回り

足回りは、つり荷やアタッチメント、上部本体の質量を支えるとともに、必要な場所に移動する役目があります。こうした足回りがあってはじめて、移動式クレーンと呼ばれるのです。クローラクレーンの走行装置は、クローラシューと走行モータ等の駆動装置から構成されています。

ホイールクレーン各部の名称と働き

ブーム、ジブ

ここではホイールクレーンのうち、テレスコピックブームのクレーンであるラフテレーンクレーンを中心に、一部オールテレーンクレーンについて説明します。
ラフテレーンクレーンのアタッチメントは、油圧シリンダで伸縮するテレスコピックブームの先端に、フックをつり下げたもので、ジブは、常時、基本ブーム側面に取り付られています。クローラクレーンのブーム、ジブのように別送して組立・分解する必要がなく、ブーム長さも、ブームを組み替えることなく、各段ブームの伸縮によってを変更できます。
※ここでいうホイールクレーンは、テレスコピックブームの機種のみを示します。

上部本体、キャリア

ラフテレーンクレーンの上部本体は、クローラクレーンと同じ360゚旋回タイプで、ブーム、キャブ、ウインチが搭載され、後端にはカウンタウェイトが搭載されています。キャリヤは、アウトリガが取り付けられている以外は、トルコン・オートマチックのトラックと同様の構造ですが、運転室がないため、キャリヤ単独では走行できません。オールテレーンクレーンは、上部本体にクレーン作業用、キャリヤに走行用のエンジンが、それぞれ搭載されています。キャリヤにも運転席がり、上部本体を取り外してキャリヤだけ道路を走行することができます。

クローラクレーンの巻上、旋回、走行の仕組み

クローラクレーンの、巻上、ブーム起伏、旋回、走行といった主要な動作は、すべて油圧で行います。エンジンを始動すると、その駆動力で油圧ポンプが駆動され、作動油が回路に押し出されます。作動油はコントロールバルブに送られ、操作レバーの動きに従って巻上、ブーム起伏、旋回、走行の各油圧モータへ振り分けられます。

巻上回路の特長

巻上モータを駆動する油圧ポンプの数と回路構成によって生じる、主巻、補巻の複合操作時の干渉やショックを防ぐために、機種に応じた巻上回路が開発されています。

1ポンプ2モータ / 2ポンプ2モータ切換回路
主巻、補巻、ブーム起伏を2つの油圧ポンブで駆動し、クレーン作業とタワー作業で巻上回路を切り換えて、最適な油圧特性が得られます。モード1、2とも、単独操作では、1ウインチで最大の速度で最大の力を発揮します。モード1は、主巻、補巻同時操作時に、2ウインチとも最大速度が得られるクレーン作業モードです。モード2は、主巻、補巻を同時に操作しても相互干渉はありませんが、力が最大の時には速度が遅くなり、速度が最大の時には、力が小さくなるタワー作業モードです。

1ポンプ1モータ方式主・補巻完全独立回路
主巻、補巻、ブーム起伏をそれぞれ独立した油圧ポンプで駆動します。主巻・補巻同時操作時にも、各ウインチは最大ラインプルが得られ、お互いの回路の影響を受けないので、位置決めなど、操作性を要求される建て方作業に適 しています。

1ポンプ1モータ方式主・補巻合流回路
2つの油圧ポンプの作動油を合流させて、巻上モータを駆動します。主巻・補巻の負荷が異なっても、2ウインチの速度の同調が容易で、バケット作業に適しています。

旋回

旋回モータ~ピニオンは、上部本体側にあります。上部本体のフロアは、旋回ベアリング外側サークルにボルトで取り付けられていて、自由に回転します。旋回ベアリング内側サークルは下部本体に固定されています。左へ旋回する場合には

  • ①旋回モータの回転力は旋回減速機で増力され、出力軸のギヤ(ピニオン)を右に回転させます。
  • ②出力軸のギヤは、内側サークルのギヤとかみ合っていて、右への回転により、旋回サークルの内側を左に公転することになります。
  • ③ピニオンが回転すると、ピニオンと一体になった旋回ベアリング外側サークル、上部本 体も左に旋回します。旋回モータを逆転すると、右に旋回します。
走行

走行モータは、左右それぞれのクローラフレームに1個または2個付いています。走行モータの一方から作動油が入ると、モータの出力軸および出力軸の先に、減速機を介して取り付けたドライブスプロケットが前進方向に回転し、トラックリンクとかみ合ってシューを後方へ駆動し、前進します。走行モータの反対側から作動油が入ると、後進します。

ホイールクレーンのブーム起伏・伸縮・走行の仕組み

ブーム起伏

ブーム起伏シリンダのヘッド側(本体に取り付けた側)から作動油が入ると、シリンダは伸びてブームが上がり、ロッド側(ブームに取り付けた側)から作動油が入るとブームは下がります。

ブーム伸縮

ブームは、油圧シリンダとワイヤロープで伸縮します。機種により4~6段に重ねたボックスブームの内部に、2~3本のブーム伸縮シリンダと、ワイヤロープ、伸縮用シーブが取り付けられています。シリンダのヘッド側から作動油が入るとブームは伸び、ロッド側から作動油が入るとブームは縮みます。先端ブームは、すぐ下のブーム(5段ブームなら4段目、4段ブームなら3段目)の伸縮力を利用して、ワイヤロープで伸縮させます。

オールテレーンクレーンは、1本の油圧シリンダで伸縮する方式となっています。油圧シリンダと一緒に1段の中間ブームが伸びて、ロックされます。油圧シリンダは縮んで根元に戻り、次の段のブームと一緒に伸び、これを繰り返して必要なブーム長さとします。

走行

エンジンの動力を、トルクコンバータ、トランスミッション、アクスル、タイヤと伝えて走行するのが、ラフテレーンクレーンの足回り=キャリヤで、機動性に富み、公道も通行できます。キャリヤは、運転室がないだけで、オートマチック車と同じようなしくみです。
オールテレーンクレーンは、キャリヤの運転室で運転するので、キャリヤ単独でも走行できることと、アクスルが3軸以上あり、全軸でステアリングが切れる点以外は、ラフテレーンクレーンと大きく変わることはありません。走行姿勢は、構内移動時と公道走行時で異なります。

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