コベルコ建設機械ニュース

Vol.250Oct.2020

menu

特集

新社長就任
Premium Talk

新たな価値創造
目指して

コベルコ建機
代表取締役社長

尾上善則

フリーアナウンサー
内田恭子さん

コベルコ建機では、2020年6月に尾上善則が新たな代表取締役社長に就任しました。
日本各地で豪雨や河川の氾濫による浸水、土砂災害などが多発し、
併せて新型コロナウイルス感染症の流行も深刻化するなかで、
復興や建設のフロントラインを担う建設機械メーカとして、コベルコ建機が
果たすべき使命は極めて大きいものと思われます。
そこで尾上善則新社長に、
今後の経営戦略や明日への展望などについて、
フリーアナウンサーの内田恭子さんがインタビューしました。

photo

Yoshinori Onoe

コベルコ建機代表取締役社長
尾上善則

京都大学大学院工学研究科修士課程修了。1980年神戸製鋼所入所。以来、長年鉄鋼事業に携わり、「生産現場が大好きだ」と語る。神戸製鋼所代表取締役副社長を経て、2020年6月から現職。趣味はゴルフの練習、釣り、散歩、旅行など。

photo

Kyoko Uchida

フリーアナウンサー
内田恭子

慶應義塾大学商学部卒業。フジテレビアナウンサーとしてスポーツ番組や報道番組などで幅広く活躍。2006年からフリーになりタレントとしても活動している。2児の母でもあり、ダイバーシティ時代の女性たちのロールモデルとして、多くの支持を集めている。

時代の変化に対応した
企業姿勢と働き方を推進

Uchida

社長ご就任、おめでとうございます。まずコベルコ建機の新社長としての抱負をお聞かせいただけますか。

Onoe

建設業界は、以前から他業界にも増して、就労人口の減少や現場での技術継承といった課題がありました。それが今回のコロナ禍を機に、オペレータの方々をはじめとする第一線の働き手不足がさらに深刻化し、生産性アップや安全性向上など、お客様の現場における働き方改革をあと押しする施策が強く求められています。私たちは、それらに対するソリュ−ションとして、ICT施工をいっそう強力に推進していきたいと考えています。

Uchida

コロナ禍で、御社自体の働き方も変化したのではないでしょうか?

Onoe

まず、お客様にICT化を提案する私たち自身が、ICTによる働き方の変革を推進しなければなりません。もちろん、営業職などお客様と相対する、あるいは実際に稼働中のマシンがある現場に出向くべきサービス技術者など、外に出かけることが基本となる職種もあるので、一様には語れません。ですが、現在テレワークによる在宅勤務を推奨し、東京地区を例にとれば出社率は約20%、ピーク時でも約30%となりました。私は、仕事とは社員一人ひとりが自ら考え、生み出すものだと考えています。これを機に、より自律的で前向きな組織づくりを目指したいと思っています。

Uchida

一方で最近は豪雨などの被害が深刻化していますが……。

Onoe

国土のいち早い復興は、社会インフラ整備を担う私たち建機メーカの使命でもあります。私たちは災害などが起こった時にこそ、全力を振り絞る必要があるのです。求められる建機を求められる場所に、迅速にお届けする姿勢を強化していきます。

「ホルナビ」によるICT化で
現場が大きく変わる

Uchida

先ほどICT施工の話題が出ましたが、土木建設業界全体が情報化施工に向かうなかで、コベルコ建機ならではの独自性や優位性について、教えてください。

Onoe

やはりICT施工こそが、建設現場が抱える問題を総合的に解決してくれる道なのです。まず当社が誇る「ホルナビ」について、ご説明いたします。

Uchida

おもしろいネーミングですね。

Onoe

そうでしょう(笑)。これは、その名の通りショベルの「掘る」を「ナビゲート」するもので、まさにカーナビのイメージですね。具体的には、施工計画と実際の現場の差分を示す「マシンガイダンス」で、図面通りの正確な施工を支援します。さらに「マシンコントロール」機能は、簡単なレバー操作だけで施工計画に沿った機械の動きを制御します。また、オプションの1つである「チルトローテータ」機能は、バケットの傾きや回転を自在に操ることで、従来高度な技術を要した法面施工などの傾斜地作業を、正確かつスピーディーに実行することができる、というものです。コベルコ建機では、大規模工事から中小規模の工事まで、お客様のニーズに即した幅広いICT施工システムのラインナップをご用意しています。

Uchida

経験の浅いオペレータさんでもベテランのような作業ができるよう、ICTが分かりやすくナビゲートしてくれるわけですね。

Onoe

その通りです。また従来は施工に先立って、図面が示す現場の位置関係を杭や板などで立体的な目印として設置する「丁張り」という作業が必要で、人手と時間を要していました。ところが、施工位置や深さを正確な3Dデータで把握することができる「ホルナビ」では、このプロセスも不要になります。工期やコストの圧縮だけでなく、マシンの周囲に人が立ち入ることで起こる現場事故の防止にもつながるというメリットもあります。

Uchida

施工の精度と効率が上がることによってコスト減につながるとともに、安全性の向上も図れるのですね。

Onoe

はい。お客様にはなによりも、まずこうした「ホルナビ」の多彩なメリットをご理解いただきたいですね。当社では、お客様にその魅力を疑似体験していただくための「ホルナビ・ジョブサイト」を設置しております。さまざまなメニューのもとに、施工時の重要ポイントに関する講習なども充実させています。ICT施工プロセスの導入から戦力化まで、トータルにサポートいたしますので、お気軽にご利用いただきたいですね。

コベルコ建機が推進するICT

photo

2Dマシンガイダンス バケット刃先で基準の位置を定めることで施工を開始。 バケット刃先と設計ラインを見ながら、精度の高い施工を行うことができる。従来の工事に比べると少ない丁張りで施工が可能なため、人員削減、工期短縮に貢献。中小規模現場でも費用対効果が高く、導入しやすく使いやすいICT施工システムだ。

photo

3Dマシンコントロール
「ホルナビ+PLUS」
簡単なアームレバー操作だけで、今まで高い熟練度を必要としたショベルの複合的な動きを正確に再現。設計図面に沿った正確な施工ができるので、初心者でもベテラン並みの生産性と仕上がり精度を実現。人材不足や操作技術継承の断絶が叫ばれる現場の課題解決に貢献する。

photo

チルトローテータ バケットが45度チルト(傾斜)するので、例えば法面に正対していない場合や足場が整っていない現場でも、すぐに施工が可能となる。また、バケットが360度ローテート(回転)するため、従来のショベルでは施工できず、人力施工が必要だった現場でも、人的負荷を減らしながら施工することができる。

「K-DIVE CONCEPT」が
可能にする新しい働き方

Uchida

先ほど、今回のコロナ禍を機に御社もテレワークを推進してこられたと伺いましたが、これからはオフィスワークだけでなく、土木や建設の現場においても、離れた場所から機械を操作して工事を行う時代がやってきそうですね。

Onoe

「ホルナビ」は、オペレータの方がショベルに乗車して行う作業を支援するシステムです。これに対して遠隔操作ができるようになれば、操作する方から距離的に遠い現場や、被災地などの人が入ることができない現場などでも、自在にマシンを動かすことができる。お客様の働き方や社会への貢献度も大きく変わってくるはずです。

Uchida

コベルコ建機は、そのような遠隔操作に関しても、現状すでに具体的なソリューションを発表しておられますよね。

Onoe

当社はマイクロソフト社とのアライアンスのもとに、「K-DIVE CONCEPT」という遠隔操作システムの開発を進めています。

Uchida

遠隔地の機械を、コントローラ操作によってディスプレイを見ながら動かせるシステムだと伺いました。まるでゲームのように、離れたマシンの操縦ができるんですね。

Onoe

おっしゃる通りで、まさにゲーム感覚で操作できますので、若い人たちにも興味を抱いていただけるのではないかと自負しています。そうなればオペレータ志望者も増え、お客様の人材採用活動などにも貢献できると考えています。

Uchida

いながらにして、さまざまな現場の仕事ができるのですから、例えば、育児や介護のためにフルタイムでは働けない方などが活躍できる場も広がり、働き方改革がますます加速しそうですね。

photo

K-DIVE CONCEPTMicrosoft Azureを採用したクラウド環境で、オペレーションの円滑化や可視化、効率的なコミュニケーションを実現。特定の人・場所・時間などの制約を受けることなく遠隔操作を可能にすることで、建設現場のテレワーク化が現実となる。人材活用や現場の生産性向上、無人化による安全確保などにも貢献する。

Onoe

ICTは、誰もが働きやすい職場環境づくりにも、もっと貢献できるはずなのです。また遠隔操作なら、東京にいながら午前中は北海道、午後は鹿児島の現場で仕事をする、といった働き方も可能になります。人の移動を伴うことなく、コスト削減や工期短縮、生産性アップなどを一気に実現することができます。

Uchida

その意味で、ICTの守備範囲はますます拡大していきそうですね。

Onoe

私たちの事業のもう1つの柱であるクレーンの場合には、旋回に伴って生じる慣性の法則などの影響を受けますので、操作のICT化の実現にはショベル以上の難題が山積しているのも事実です。しかし、ショベルで蓄積した実績や、そこで獲得した知見やノウハウをベースとしながら、AIや機械学習などの最新技術を積極的に取り込み、さらにお客様のビジネスと働き方を進化させるICT提案を進めていきたいと考えています。

ICTを軸にした
ビジネス施策の展開

Uchida

一方、社内業務をシームレスにつなぐためのICT戦略も、推進中とのことですが……。

Onoe

変化が著しい時代背景のなかで、製造業として、市場把握〜開発〜調達〜生産〜販売〜サービス〜管理に至る業務全般における戦略的なICT化の取り組みは、もはや焦眉の課題です。ICTパワーを駆使して、事業の全プロセスで、お客様やサプライヤの情報を一元化するとともに、製品からリアルタイムで直接送られる情報についても共有、活用を進めていきます。その情報に基づいて、細分化した各々のお客様ニーズに即した製品を、タイムリーに提供していきたいのです。また、日々のお客様とのコミュニケーションのなかで蓄積したご要望や情報などを、製品の機能改善や追加、さらに次期製品の開発リソースに還元することで、よりお客様に顔を向けた「マーケットインなものづくり」をする姿勢を貫いていきます。

Uchida

お客様に導入していただいたあとのマシンのフォロー体制については、いかがですか?

Onoe

当社の製品は、お客様の業務の最前線を支える戦力そのものです。したがって、障害の発生は、そのままお客様のビジネス機会損失につながってしまいます。そこで、稼働中の機械の情報から、リアルタイムなマシンの健康状態を把握することで、万一の事態を引き起こさない「予防保全サービス」をご提供しています。さらに、機械が停止してしまった場合には、統合サービスツールによる故障診断などによって、早期復旧を実現する体制をさらに強化していきます。

Uchida

そうなると、メンテナンスに必要となる交換部品や消耗品などのスムーズな供給体制も、より重要になってきますね。

Onoe

ストックビジネスの充実策としては、特に部品事業とサービス事業に注力しています。部品事業では、お客様への交換部品の迅速な供給を最優先事項ととらえ、国内のロジスティックパーツセンターをハブとして、グローバルに迅速な供給体制を敷いています。また、パーツのお届けをスピーディーに行うために、パーツセンターを国内2カ所体制にして効率化を推進しています。アフターサービス専用の部品、KGSP(KOBELCO Global Service Parts)の品ぞろえも、いっそう充実させました。

Uchida

サービス事業については、先ほどICT活用による「予防保全サービス」と「早期復旧」に関するサービスを教えていただきましたが、このほかにも対策をお考えなのでしょうか。

Onoe

ICTによる2つのサービスの充実とともに、整備拠点の拡充を進めています。いずれにしましても、当社が従来から掲げてきた「ユーザー現場主義」をさらに強く肝に銘じ、「お客様にとって、より長く、より安心してお付き合いいただけるメーカであり続けたい」と願っています。

国際市場戦略と
これから進むべき方向性

Uchida

今、国際競争もよりいっそう激化してきていますが、海外の生産体制や販売体制における今後の戦略を教えてください。

Onoe

グローバル生産体制の基本的な考え方は、「地産地消」。つまり、国や地域ごとのローカルニーズにマッチした製品を現地で生産することにより、適正な規模とスピードでタイムリーに提供するということです。一方、特殊機や、経済効率的に見てより大きなロットで生産したほうがメリットが大きい機種については、幅広い生産メニューをもった国内工場で生産して、世界需要に対応していきます。

Uchida

それでは、最後に『コベルコ建設機械ニュース』の読者の皆様に向けて、メッセージをお願いします。

Onoe

コベルコ建機は、ICTをはじめとするさまざまなソリューションを提供することで、建設現場に「働きやすさ」という新たな価値を生み出し、そこで働く皆様とともに豊かな社会づくりに貢献していきたいと願っています。特に、最近の自然災害による爪痕が著しい日本においては、安全・安心な社会の実現に向けて、皆様とともにさらに力を合わせる努力を重ねていきたいと考えています。どうぞこれからも、私たちコベルコ建機に倍旧のお力添えを賜りますよう、重ねてお願い申し上げます。

Uchida

本日は興味深いお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

photo

今まで以上に、
お客様に顔を向けた
「マーケットインなものづくり」を
貫いていきます

尾上善則

コベルコ建機が
ICTを通じて進める、
現場の働き方改革に
期待しています

内田恭子