コベルコ建設機械ニュース

Vol.264May.2024

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特集コベルコ建機のDX&GXソリューション

CSPI-EXPO 2024出展から読み解く コベルコ建機の DX&GX ソリューション CSPI-EXPO 2024出展から読み解くコベルコ建機のDX&GXソリューション

〜現場の課題を解決し、ワクワクする未来へつなげる〜

次世代を担う最先端技術が一堂に会する「建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO 2024)」が、
今年も千葉県の幕張メッセで5月22〜24日の日程で開催される。
「誰でも働ける現場へ」をテーマに、多様なDX&GXソリューションを出展するコベルコ建機の
現在地や今後目指す姿について担当者から話を聞いた。

山下 耕治

コベルコ建機株式会社

技術開発本部 本部長

山下 耕治

小見山昌之

コベルコ建機日本株式会社

取締役 マーケティング本部長

小見山 昌之

CSPI-EXPOが今年もいよいよ開催へ

2018年にスタートしたCSPI-EXPOの第1回から参加しているコベルコ建機は、今年も数々の新製品や新技術を出展する予定だ。

同社で技術開発本部長を務める山下耕治は、出展し続ける意義をこう語る。

山下:
CSPI-EXPOは国土交通省や経済産業省などの各省庁をはじめ、多くの業界団体が関わる展示会です。そうした舞台を活用して私たちが開発した新しい建設機械や技術、創出した新事業を発信できる機会は、さらなる開発へのシーズを見つけるためにも大変貴重なものであると考えています

一方、コベルコ建機日本の小見山昌之は、営業面の観点からCSPI-EXPOの価値についてこう話す。

小見山:
機械を展示してデモを行うといった販売に直結するような展示会は別にあるのですが、CSPI-EXPOというのは未来に向けてコベルコ建機がどこを目指しているのか、その方向性を示す取り組みやコンセプトを伝える場だと思っています。コベルコ建機とともに進むことで、お客様へ安心感や期待感を届けるための重要な展示会だと認識しています

足元の課題解決のためのソリューションを多数出展

CSPI-EXPO 2024におけるコベルコ建機のコンセプトは“誰でも働ける現場へ”。これは同社が掲げるDXソリューションの開発ビジョンでもあり、昨年同様のワードが踏襲されている。しかし、出展アイテムはこれまでとはひと味違う。従来は新製品・新機能の訴求に軸足をおいた参考出展が多かったが、今回は考え方を変更。建設現場における足元の課題解決を目指し、提供可能な機械の展示を増強している。その背景には、ICT施工が導入コストなどの問題から、中小企業に十分浸透していないという現実があるという。

小見山:
2016年に国土交通省推奨のもと、業界で取り組み始めた i-Constructionですが、中小規模の工事では実施率が20%程度とあまり進んではいません。一方で、最近は都道府県の発注する中小規模の工事でもICT施工の指定が拡大しているため、中小企業にICT活用へのニーズが増えてきているのは確かです。そこでコベルコ建機では、小規模現場でもICT施工を従来よりも低コストで導入できる杭ナビショベルAutoや、3Dマシンガイダンスに連携するミニショベルに装着可能なチルトローテータなど、現場における喫緊の課題に着目したアイテムの展示を増やしました

カメラ+AIで人を検知して止まる衝突軽減装置OmniEye®など、小規模現場で使える安全システムも実機での展示が予定されている。

山下:
機械などの製品だけの提供にとどまらず、お客様の困りごとに寄り添うソリューションを提供できるメーカになることがコベルコ建機の目標です。CSPI-EXPO 2024では、目の前にある課題を解決する出展アイテムを多彩に揃えることで、お客様に共感いただけるような発信ができるのではないかと思っています

次なる一歩へ、
DX分野での方向性を示す

提供可能な機械を中心とした出展に加え、ワクワクするような未来のソリューションアイテムももちろん発表している。今年の展示ではコベルコ建機のGX(グリーントランスフォーメンション/エネルギーの転換による変革)分野の進化や取り組みを初めて紹介することも予定されている。世界トップクラスの燃費性能やハイブリッドショベルの開発など、業界でも環境対策の分野でいち早く成果を上げてきた同社が、これまでのCSPI-EXPOではカーボンニュートラルへの取り組みを語ってこなかったのはなぜなのか。

山下:
現場での実運用を考えると、機械だけを発表しても仕方がないというのが、私たちのGXソリューションに対する考え方です。例えば、バッテリ式の電動ショベルでいえば充電をどうするのかといった問題や、燃料電池式の電動ショベルにおける水素の供給方法など、現実的なインフラ整備の課題はまだあります。ただ一方では、国土交通省によって2023年に創設された「GX 建設機械認定制度」が始まり、社会的な関心や業界全体の動きが活性化していると感じており、今回発表することにしました

この「GX 建設機械認定制度」によって、インフラ面の影響に加え、販売面においても推進が進むきっかけになると小見山はこう語る。

小見山:
GX 建設機械認定制度の創設に伴い、そろそろ補助金などの制度設計も発表されてくる今だから、これまでの私たちのGXソリューションにおける取り組みをアピールするには、ちょうど良いタイミングなのかなと思います

コベルコ建機の開発思想でもある「ユーザー現場主義」とは、お客様のニーズをしっかりとつかむことからものづくりを始める。しかし、昨今ではモノではなくコト、お客様の課題を深掘りしてそのためのソリューションを提供することがより重要になってきた。最新技術に対して意識の高い人々が集まるCSPI-EXPOは、コベルコ建機にとって効率的に情報を発信できる場であると同時に、お客様のニーズをつかみ、誰でも働ける現場づくりのための新たなヒントを見つけ出す貴重な場でもあるのだ。

CSPI-EXPO2024出展
アイテム
補足
現在のソリューション
ICTの小規模現場対応
効率化(ICT建機)
  • SK75SR-7 杭ナビショベルAuto
  • SK55SR-7 3DMG&チルトローテータ
安全
  • SK30SR-7 キャブ仕様OmniEye®
  • SK135SR-7 K-EYE PRO 2.0
DXソリューション
身近になった先進技術
  • K-DIVE®
  • クレーンドローン点検
  • K-D2 PLANNER®
未来のソリューション
GXソリューション
  • 燃料電池ショベル
  • 電動ショベル
  • 電動クレーン
昨年行われたCSPI-EXPO 2023の様子

昨年行われたCSPI-EXPO 2023の様子

現在のソリューション

足元の課題解決に向けた
コベルコ建機の取り組み

現在抱えている現場の課題を即座にしっかり解決。
コベルコ建機がCSPI-EXPO 2024に出展するDXソリューションの数々を紹介する。

工事のICT化を中小企業へと広めるために

建設業においては、2024年4月より時間外労働の上限規制が適用となり、人手不足はさらに深刻化するといわれている。いわゆる2024年問題だ。さらに就労人口の減少にも拍車がかかるため、1人当たりの生産性向上の観点からもICT施工の導入は待ったなし。しかし、コスト面などの問題からICT施工の導入は、中小企業にはいまだに拡大していないのが現状だ。

そこでコベルコ建機では、特に中小企業が現在まさに直面していると思われる課題解決にフォーカス。今回のCSPI-EXPOでは、導入して即活用できるソリューションの展示を増強している。

例えば小規模現場における作業の効率化を実現するのが、杭ナビショベルAutoとICT化したチルトローテータだ。杭ナビショベルAutoはICT施工を従来よりも低コストで導入できるDXソリューション。3Dマシンガイダンスに連携するチルトローテータは、ミニショベルに装着できる。

そのほかにも、カメラ+AIによる人検知システムを採用したミニショベル用の衝突軽減装置OmniEye®や、13tクラス用のK-EYE PRO 2.0など小〜中規模現場での安全性を高めるDXソリューションも出展。さらに、先進技術である「K-DIVE®」については固定ヤードで作業するショベルの遠隔操作をその場で体験できる試みも予定されている。

また、K-D2 PLANNER®、クレーンドローン点検といったコベルコ建機ならではの先進技術を駆使したクレーン用のDXソリューションも見逃せない出展アイテムの一つだ。

ICTの小規模現場対応
安全
SK30SR-7キャブ仕様OmniEye®
SK30SR-7キャブ仕様OmniEye®
3tクラスのミニショベル向け衝突軽減装置OmniEye®が、これまでのキャノピ仕様からキャブ仕様にもバリエーションを拡大。後付けのカメラとAIで人のみを検知して機械を停止させるため、小規模現場でも効率よく作業しながら安全性を確保できる。
SK30SR-7キャブ仕様OmniEye®
K-EYE PRO 2.0
事故ゼロを目指して生まれた建機メーカ初の衝突軽減システムがさらに進化。カメラ+AIで人のみを検知し、危険な動作のみを停止させるため、現場での安全性を高めつつも作業の邪魔にならない。後方超小旋回、13tクラスのショベルに搭載可能。
効率化
ミニクラス用3DMG&チルトローテータ
ミニクラス用3DMG&チルトローテータ
バケットが45度チルト・360度回転する油圧ショベル用先端アタッチメント“チルトローテータ”が、ミニクラスのショベルにも装着可能に。3Dガイダンスと連携し作業の効率化を実現。
杭ナビショベルAuto
杭ナビショベルAuto
従来の杭ナビショベルのお手軽さはそのままに、建機のさまざまな操作をアシスト。高精度な施工を可能としたマシンコントロールシステムがより身近に、小規模現場でも、ICT施工を従来よりも低コストで導入できる。
DXソリューション
K-DIVE®
K-DIVE®
実機搭乗時のような操作性で屋内のコックピットから重機を操作。安全で快適な場所から現場作業が行える遠隔操作システム「K-DIVE®」なら、場所や時間を問わず働ける環境をつくり出すことで多様な人材の活用につなげられる。今回のCSPI-EXPO会場では、本システムと遠隔地をつなぎ、遠隔操作によるショベル作業を体験できるようにする。
K-D2 PLANNER®
K-D2 PLANNER®
クレーン施工計画を支援するアドイン型シミュレーションソフト「K-D2 PLANNER®」なら、その現場で使用できる最適クラスのクレーンを確認でき、コスト削減に貢献。また簡単操作により経験が少ない担当者の施工計画作成時間の短縮につながり、残業規制などの働き方改革にも貢献。
クレーンドローン点検
クレーンドローン点検
ドローンによるクレーン点検が、昨年の参考出展からサービスインへ。ブームを下ろさずに点検できるため、手間や作業時間を大幅に短縮。高所点検などの危険作業も減らすことが可能になる。
未来のソリューション

カーボンニュートラルを見据えた
コベルコ建機の取り組み

未来の建設機械の在り方を、カーボンニュートラルを中心に考えるコベルコ建機。
そのGXソリューションの具体例と先端技術の進化を紹介する。

電動ショベルは使われ方で給電方式を考える

CSPI-EXPO 2024では、コベルコ建機の進化と取り組みの目指す方向性を知ってもらうべく、未来に向けたソリューションも出展する。そのうちの1つがGX、カーボンニュートラルの取り組みだ。

これまで同社では、世界トップクラスの燃費性能を誇る油圧ショベルを手始めに、2003年には排出ガスゼロ、給油不要で連続稼働が可能な有線の電動仕様機を開発。抜本的な動力源を見直した建設機械として、すでに自動車解体などの現場で活用されている。23年に国土交通省が創設したGX建設機械の初回認定を3機種で取得済みだ。また、06年には従来機比で約40%の燃費低減を達成したハイブリッドショベルを開発するなど、“低燃費のコベルコ”として環境対策への意識の高い製品づくりを通じて、CO2排出削減に貢献してきた。

そして、次の取り組みとしてコベルコ建機が推進しているのがバッテリ式電動ショベルの開発だ。現在、普通乗用車ではバッテリ式のEVが普及し始めている。しかし、走るだけではなく掘削や積み込み作業などパワーを必要とする重機の場合、乗用車に比べ大容量バッテリを積む必要があり、中型ショベルを例にとると使用ごとに長時間の充電が必要となる。これでは稼働効率が低下するため、新たに取り組み始めたのが燃料電池(水素)式電動ショベルの開発だ。その優位性は、30分程度の充填で約4時間の連続稼働が可能になること。燃料電池式ショベルは、コベルコ建機が開発したハイブリッドショベルの考え方がベースにあり、技術的にもつながっているという。過去の経験が大いに役立っているわけだ。

こうした大容量のバッテリを必要としないミニ・小型ショベルはバッテリ式、中・大型ショベルは燃料電池式というように、クラスに応じて充電方式を使い分けることで、生産性を損なわない働きができる電動ショベルを開発中。充電や水素の供給方法といったインフラ整備も徐々に進みつつあるなか、今回のCSPI-EXPO 2024でいよいよその取り組みが発表される。燃料電池式電動ショベルは試作機でのデモ運転を予定しているので、会場で稼働する姿は必見だ。

今回のCSPI-EXPO 2024を通じて、コベルコ建機が目指す『誰でも働ける現場』が着々と実現に向かっていることを実感できるはずだ。

現場環境・用途に応じた
カーボンニュートラル対応製品の
考え方

現場環境・用途に応じたカーボンニュートラル対応製品の考え方
GXソリューション
バッテリ式電動ショベル
バッテリ式電動ショベル
通常のエンジン駆動モデルの性能をベンチマークとして、ミニ・小型ショベル用に開発中。低振動・低騒音でもあり、ヤード内で使用する産廃・金属処理や、都市部での基礎、解体、水道などの現場での稼働を想定し、現在は試作機のテストを重ねている。まずは2025年に欧州市場への投入を目指す。
燃料電池式電動ショベル
燃料電池式電動ショベル

2023年3月に試作機が完成、水素を動力源として基本動作させることに成功した。グループ内の“技術のかけ算”にて重機としての機能、安全性、信頼性の確立に向けた研究開発を推進中で、30年の実用化を目指している。CSPI-EXPO 2024では、試作機によるデモ運転を計画中。

※この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業の結果得られたものです。

有線電動式クローラクレーン
有線電動式クローラクレーン
有線電動式ショベルのノウハウを活用し、電動クローラクレーンを開発中。2024年中には評価試験に入り、25年には市場投入の予定。
  • 山田高弘= 取材・文 text by Takahiro Yamada
  • 木下裕介= 撮影 photographs by Yusuke Kinosita