オペレータの仕事やデスクワークでありがちなのが、“座りっぱなし”になること。
実は、長時間座り続けることは免疫力の低下をはじめ、体にさまざまな悪影響をもたらしてしまう。
これを回避する簡単なエクササイズを、早稲田大学スポーツ科学学術院非常勤講師の荒木邦子さんに伺った。
「座りすぎは病気のリスクと隣り合わせ」だと、スポーツ科学を専門とする荒木邦子さんは警報を鳴らす。 例えば「日に8時間以上座っている人は、4時間未満の人に比べて死亡リスクが20%高まる」という報告や、「座ってテレビを見続けると平均寿命が22分短くなる」という研究データ※1もある。
※1岡浩一朗など著『座位行動の科学ー行動疫学の枠組みの応用ー』 P143
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kenkokyoiku/21/2/21_142/_pdf
なぜ座りすぎが寿命を縮めるのか。
「筋肉を動かすと中性脂肪が分解するリポタンパクリバーゼがはたらき、糖代謝が行われます。一方、座位状態が続くと脚の筋活動が行われず統治者が低下したり、太ももの裏の圧迫や股関節の屈曲で血流が悪化し、高血圧や脂質異常などを引き起こします。これらは肥満や糖尿病、心血管疾患などのリスクを高めることにつながります。」(荒木さん)
筋活動がないと体温が上がらず、免疫力も低下する。“座りすぎ”の解消には、頻繁に立ち上がることが大切。
今回は荒木さんに座ったままでもできる運動を紹介してもらった。
「お尻上げ」「状態ひねり」「前かがみと上体反らし」の3つは、立ち上がるのが困難ないう介護高齢者の座りすぎを解消するために考案されたエクササイズ。荒木さんによると、これらの運動を行ってから立つ、という一連の動作を午前中に1回、3ヶ月間継続した結果、血行が促進され、立ち上がりやすい体になったという研究データ※2もある。時間に余裕がないときは、この3つの運動だけでも実践したい。
座りすぎで圧迫されがちな太もも裏をストレッチすることで、効率よく血流を促すことが可能。できれば、1時間に1回は太もも裏を伸ばそう。椅子に浅めに座る。片脚を軽く伸ばし、かかとをつけてつま先を上に向ける。背筋を伸ばし、太ももの付け根に手を添え、息を吐きながら上体を軽く前に倒す。深く倒すことよりも背筋を伸ばし骨盤を前傾させるのがポイント。左右8〜10秒程度ずつ。
座りっぱなしは筋活動が行われない状態のため、「糖代謝が上がらない」「下肢から上肢に血液が流れない」などといった弊害が起きる可能性が高くなる。太もものような大きな筋肉を刺激することで、座りすぎによるダメージを予防できる。
座った状態が続くということは、股関節が90度に屈曲した状態が続くということ。簡単な運動で固まった股関節をほぐそう。膝を曲げたまま1、2でゆっくり上げ、3、4でゆっくり下ろす。浅めに座って行うと、腹筋に力が入りやすくなる。左右交互に10回程度。
体の状態に余裕があるときは、腹筋にも刺激を与える少し強度の高いエクササイズを。Step1で紹介した「お尻上げ」「上体ひねり」「前かがみと上体反らし」などの運動で、腰まわりの緊張を緩めてから行いたい。