コベルコ建設機械ニュース

Vol.262Nov.2023

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カーボンニュートラルの先頭へ
電動仕様機をいち早く導入

TREホールディングスグループであるリバー株式会社は、創業100年を超える静脈産業の老舗企業だ。静岡を含めた関東を中心に18の拠点を有し、金属を中心としたさまざまなリサイクル・廃棄物処理を行う同社では、2023年1月に電動仕様の自動車解体機を導入。CO2の排出量を削減し、カーボンニュートラルの実現に向け、たしかな成果を上げている。

TREホールディングスグループであるリバー株式会社は、創業100年を超える静脈産業の老舗企業だ。静岡を含めた関東を中心に18の拠点を有し、金属を中心としたさまざまなリサイクル・廃棄物処理を行う同社では、2023年1月に電動仕様の自動車解体機を導入。CO2の排出量を削減し、カーボンニュートラルの実現に向け、たしかな成果を上げている。

自動車解体機の電動化によりリバーの企業価値が一段と高まっています

ELV川島事業所 所長 山口剛さん

環境に優しい選択、電動仕様の自動車解体機を導入

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電動仕様の解体機の場合、電源供給のためのケーブルを重機につなげなければならないが、自動車解体の現場では重機を大きく移動させる必要が無いため、電動化が可能となった

リバー株式会社の創業は1904年、明治時代まで遡る。創業者の鈴木徳五郎氏が東京・浅草で「鈴木徳五郎商店」を構え、くず物一般の売買を手がけたのを皮切りに、100年以上にわたり一貫して再資源化に取り組んできた。

そして現在では、2000年代に入って整備された各種環境関連法を背景に企業のサーキュラーエコノミーやカーボンニュートラルへの取り組みが加速するなか、リバーでは金属スクラップ類だけでなく取扱品目を拡大。使用済み自動車を解体し、再利用できる部品の販売や解体後に破砕・選別する「自動車リサイクル」、家電リサイクル法にもとづいて回収された家電4品目を対象とする「家電リサイクル」、金属系の廃棄物を圧縮・破砕する「廃棄物処理」などを手がける総合リサイクル事業者へと進化を遂げている。

「当社では、“地球を資源だらけの星にしよう。”というビジョンを掲げています」と話すのは、執行役員の浅野晃可さんだ。

「企業としての目標を達成すべく、私たちは持続可能な開発のための国際的な目標であるSDGsに率先して取り組んでいます。当社の自動車解体工場であるELV川島事業所に電動仕様のコベルコ建機製自動車解体機、SK210D-10WEを導入したのは、そうした方針の一環です。これまで使用していたエンジン仕様の解体機を電動仕様のものに入れ替えたことで、稼働時のCO2排出量をゼロにすることができました」

導入コストについては、軽油代と電気代の差額により電源設備の工事費用や車体価格の増額分も7〜8年で回収できるはずだと浅野さんは語る。

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自社ビジョンに向けて数々の取り組みを推進する執行役員の浅野晃可さん

電動化で作業効率が向上、メンテナンスコストの削減も

エンジン仕様から電動仕様へと解体機のリニューアルを果たしたELV川島事業所。その結果、自動車解体の現場には予想外のメリットがもたらされた。それは、解体現場における作業効率の向上だ。ELV川島事業所の所長である山口剛さんは語る。

「これまでは2日に1回、重機への給油時間に40分ほどかかっていたのですが、それが無くなったのは作業効率上とても大きかったですね。1台の車を解体するのにはおよそ15〜30分ほどかかるのですが、給油で作業を中断しなくなったことで、1日につき1〜2台は解体する車の数を増やすことができました」

さらに、山口さんは故障による修理代や消耗品の交換費用も低減できるのではないかと期待している。

「ELV川島事業所では1日に30〜40台を解体していますが、8時間連続して稼働しているということもあり、これまでの解体機は5年ぐらいするとエンジンまわりの故障や部品交換が一気に必要となっていました。しかし、エンジン仕様に比べて仕組みがシンプルで消耗品も極端に少ない電動仕様の解体機なら、今後は修理・交換費用を大幅に減らせるのではないかと見込んでいます」

一方、電動仕様の解体機で作業するオペレータの高篠憲司さんは、エンジン仕様と比べて何の違和感も無く操作できることに驚いていると話す。

「作業精度は問題ありませんし、ボルト類が付いた車の足まわりをむしり取る際のパワーも十分。むしろエンジン仕様よりも力強いと感じるほどです」

電動解体機の導入以降、新聞やテレビの取材依頼が急増し、同社のサスティナビリティに対する姿勢がより広く知られるようになったことで、各業界のリーディング・カンパニーからカーボンニュートラルに向けた取り組みで連携したいという要望が殺到。そのなかのいくつかは、すでにプロジェクトとして進行中だ。自動車解体機の電動化を通じて、リバーには新たなビジネスの果実が多方面で実り始めている

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電動仕様のSK210D-10WEを操る高篠憲司さんは、自動車解体機の操作歴30年を誇るベテランオペレータだ

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「自動車解体の現場は埃が多く、真夏の稼働時はオーバーヒートなどの心配もあったが、エンジンが無い電動仕様機はマシントラブルのリスクが軽減できる」と語る高篠さん

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現在、ELV川島事業所では自動車解体の作業に2台の解体機が稼働中だ。まずは、手作業で前処理をした自動車を、電動仕様のSK210D-10WEで大まかに解体。マフラやラジエータなどの大物の部品を取り外しつつ、ルーフ部分を剥がすことにより次の工程で小型の自動車解体機が細かな部品類を回収しやすいようにする

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小型の自動車解体機、SK75SR-7では、主に車内の小さなモータ類を回収。所長の山口さんは、本モデルの電動仕様の開発にも期待を寄せる

今回の訪問先は矢印

リバー株式会社
本社所在地/東京都墨田区緑1-4-19
tel 03-6365-1200(代)
ELV川島事業所 所在地/埼玉県比企郡川島町戸守440番地
tel 049-297-2116
山田高弘= 取材・文 三浦泰章= 撮影 text by Takahiro Yamada/photographs by Yasuaki Miura