コベルコ建設機械ニュース

Vol.262Nov.2023

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特集環境リサイクル機械としての自動車解体機の可能性

[環境リサイクル機械としての]
自動車解体機の可能性

建物解体、金属リサイクル、産廃リサイクルと林業を4本柱とした、
独創的な環境リサイクル機械を幅広く提供しているコベルコ建機。
なかでも、1979年に世界で初めて開発された自動車解体機は、市場シェア約7割を誇るなど圧倒的な支持を集めている。
そこで今回は、モータリゼーションの発展に伴うリサイクル業務に長く寄与し続けてきたコベルコ建機の自動車解体機をクローズアップ。
これまでの歩みと未来に向けた取り組みを探っていく。

競合他社との差別化を図るべく
環境リサイクル機械の開発を推進

コベルコ建機は、1970年代より次世代を見据えた「環境への取り組み」をスタートさせた。以来約半世紀の間に、建物解体、金属リサイクル、産廃リサイクル、林業などの分野で、それぞれの作業環境に配慮した専用機である環境リサイクル機械の開発を積極的に展開してきた。その背景となったのは、時代とともに社会の価値観が消費型から循環型へと変革していったことのほかに、コベルコ建機の事業形態も少なからず影響している。

建機メーカのなかには、ダンプトラックやブルドーザーなど油圧ショベル以外の重機も取り扱っているフルライナーが存在しているが、コベルコ建機がそういった他社と競合し、優位性を高めて収益を上げていくためには、顧客の作業環境にきめ細かく対応する環境リサイクル機械の開発が必要不可欠だったのだ。

どのメーカもやっていないことを突き詰めることで他社との差別化を図り、コベルコ建機としてのアイデンティティーを確立する。そうした事業戦略のもと、コベルコ建機が業界に先駆けて1978年に開発したのが、解体工事のための油圧圧砕機「ニブラー®」だった。

コベルコ建機の商標名ともなっているニブラーをアームの先端に装着することで、解体時の作業効率が飛躍的に向上。今や建物解体技術の基本となっているニブラーの開発は、“建物リサイクルのコベルコ”として世に知られるきっかけとなり、その後に続く世界初の自動車解体機の実用化へとつながっていくことになる。

油圧圧砕機「ニブラー®」

油圧圧砕機「ニブラー®」

環境建機の先駆者として
世界初の自動車解体機を開発

アスファルトやコンクリートを剥いだり、掴んで圧砕する道路解体用アタッチメントとして開発されたニブラー。その技術をもとにコベルコ建機が1979年、世界で初めて実用化したのが自動車解体機だ。開発の発端となったのは、ユーザからのリクエストだった。

沖縄のリサイクル業者である拓南商事様より “自動車解体の作業をより安全で効率的に行えるように、機械化することができないか” と、コベルコ建機の前身である油谷重工へと持ちかけられたのだ。メーカとお客様がともに協力し、試行錯誤しながら完成させた自動車解体機。その際、自動車解体専用のニブラーとともに開発されたのが、自動車を押さえるための装置「クランプアーム」だ。ニブラーだけだとどうしても車が浮いてしまい、取りたい部品が取れない。クランプアームで車体をしっかり押さえつけることで、ニブラーで引きちぎるという作業が可能になった。

これにより、従来ガス切断と一般的な作業工具、フォークリフトなどを併用して手バラシで行われていた自動車解体は、1台あたりの作業時間が短縮。作業効率は手作業に比べて数倍から10倍以上になるなど、処理台数の大幅な増加を実現し、自動車解体の業界に大きなインパクトとメリットをもたらした。後には、それまで固定式だったニブラーに油圧回転機能が追加されるなど、一層の作業性の向上を図ることで、自動車解体機の国内普及が加速。やがて、建設業界では圧砕機の名称であったニブラーは、リサイクル業界において自動車解体機そのものを表す名称として認知されていくことになる。

初代自動車解体機「YS750」

拓南商事様にてレストアされた初代自動車解体機「YS750」

コベルコ建機/環境リサイクル機械

  • 建物解体

  • 金属リサイクル

  • 産廃リサイクル

  • 林業

  • 建物解体の様子

    建物解体

    1978年、コベルコ建機では業界に先駆けて解体工事用の圧砕機「ニブラー」を開発。解体機のアーム先端にニブラーを装着し、コンクリートや鉄筋をつかんで圧砕、切断する工法は、建物解体に画期的な進化をもたらした。木造家屋解体機から63mの作業高さを誇る超大型機まで、解体機の土台を築いた業界の先駆者として、幅広いラインナップを誇る。

  • 自動車解体の様子

    金属リサイクル

    コベルコ建機は1979年に自動車解体機を開発して以来の金属リサイクル機械のパイオニア。自動車解体機から各種ハンドリング機まで、金属リサイクル現場の作業効率をアップさせるラインナップを幅広く揃え、質、量ともに世界のトップクラスにあるといわれる日本の金属資源リサイクル業に大きく貢献している。

  • 廃棄物仕分けの様子

    産廃リサイクル

    産廃リサイクル事業の可能性をより拡大させるため、コベルコ建機では各工程で行われる廃棄物のハンドリング作業を中心に効率化を図る機械を開発。大量の粉塵が舞う過酷な現場だからこそ力を発揮する産廃仕様機をはじめ、さまざまな角度から貢献できるリサイクル機械を取り揃え、産廃リサイクル事業の拡大をサポートしている。

  • 伐採の様子

    林業

    林の中での不整地や急傾斜地へ進入し、架線を介して伐採木を集材するタワーヤーダを国内で初めて開発するなど、コベルコ建機では林業の機械化を推進。現在は林業現場の作業ニーズに対応すべく、ベースマシンのエンジンをパワフルにチューンナップし、迅速かつ効率的な伐採作業を可能にする林業専用機をラインナップしている。

金属リサイクル自動車解体機

道路解体用アタッチメントとして開発されたニブラーを自動車解体用にカスタマイズ。さらに、解体時に使用済み自動車を押さえつけるクランプアームを新開発し、スムーズな解体作業を可能にしたのが自動車解体機だ。切断、もぎ取り、仕分けといった解体分別作業が短時間で安全に行える上、1日の処理量も飛躍的に増やすことが可能。自動車解体専用のニブラーによるパワフルなつかみ力、切断力が、エンジンや硬材質部分の取り出しにも効果を発揮する。

一方、使用済み自動車をはじめ、エンジン、二輪車、廃家電品、農機、自販機など、各種金属製品の解体分別作業に投入できるのが、自動車解体機の進化系であるマルチ解体機だ。独自の開閉式クランプアームを利用した押さえ込みまたは挟み込みにより、対象物の大小を問わずしっかりと固定できるので効率的に作業を進められる。また、専用のマルチ解体ニブラーにより微細選別もでき、有価金属の回収もスムーズに行える。

道路解体用ニブラ

ベースとなった技術
道路解体用ニブラー

現在の自動車解体機の技術
  • 自動車解体用ニブラー

    自動車解体用
    ニブラー

  • マルチ・自動車解体用ニブラー

    マルチ・自動車
    解体用ニブラー

  • クランプアーム(非開閉式)

    クランプアーム(非開閉式)

  • 開閉式クランプアーム

    開閉式クランプアーム

  • 山田高弘= 取材・文 text by Takahiro Yamada