競合他社との差別化を図るべく
環境リサイクル機械の開発を推進
コベルコ建機は、1970年代より次世代を見据えた「環境への取り組み」をスタートさせた。以来約半世紀の間に、建物解体、金属リサイクル、産廃リサイクル、林業などの分野で、それぞれの作業環境に配慮した専用機である環境リサイクル機械の開発を積極的に展開してきた。その背景となったのは、時代とともに社会の価値観が消費型から循環型へと変革していったことのほかに、コベルコ建機の事業形態も少なからず影響している。
建機メーカのなかには、ダンプトラックやブルドーザーなど油圧ショベル以外の重機も取り扱っているフルライナーが存在しているが、コベルコ建機がそういった他社と競合し、優位性を高めて収益を上げていくためには、顧客の作業環境にきめ細かく対応する環境リサイクル機械の開発が必要不可欠だったのだ。
どのメーカもやっていないことを突き詰めることで他社との差別化を図り、コベルコ建機としてのアイデンティティーを確立する。そうした事業戦略のもと、コベルコ建機が業界に先駆けて1978年に開発したのが、解体工事のための油圧圧砕機「ニブラー®」だった。
コベルコ建機の商標名ともなっているニブラーをアームの先端に装着することで、解体時の作業効率が飛躍的に向上。今や建物解体技術の基本となっているニブラーの開発は、“建物リサイクルのコベルコ”として世に知られるきっかけとなり、その後に続く世界初の自動車解体機の実用化へとつながっていくことになる。
油圧圧砕機「ニブラー®」
環境建機の先駆者として
世界初の自動車解体機を開発
アスファルトやコンクリートを剥いだり、掴んで圧砕する道路解体用アタッチメントとして開発されたニブラー。その技術をもとにコベルコ建機が1979年、世界で初めて実用化したのが自動車解体機だ。開発の発端となったのは、ユーザからのリクエストだった。
沖縄のリサイクル業者である拓南商事様より “自動車解体の作業をより安全で効率的に行えるように、機械化することができないか” と、コベルコ建機の前身である油谷重工へと持ちかけられたのだ。メーカとお客様がともに協力し、試行錯誤しながら完成させた自動車解体機。その際、自動車解体専用のニブラーとともに開発されたのが、自動車を押さえるための装置「クランプアーム」だ。ニブラーだけだとどうしても車が浮いてしまい、取りたい部品が取れない。クランプアームで車体をしっかり押さえつけることで、ニブラーで引きちぎるという作業が可能になった。
これにより、従来ガス切断と一般的な作業工具、フォークリフトなどを併用して手バラシで行われていた自動車解体は、1台あたりの作業時間が短縮。作業効率は手作業に比べて数倍から10倍以上になるなど、処理台数の大幅な増加を実現し、自動車解体の業界に大きなインパクトとメリットをもたらした。後には、それまで固定式だったニブラーに油圧回転機能が追加されるなど、一層の作業性の向上を図ることで、自動車解体機の国内普及が加速。やがて、建設業界では圧砕機の名称であったニブラーは、リサイクル業界において自動車解体機そのものを表す名称として認知されていくことになる。
拓南商事様にてレストアされた初代自動車解体機「YS750」