コベルコ建設機械ニュース

Vol.269Aug.2025

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適材適所のクレーン活用で
杭打ち工事の可能性を追求

杭打ちを中心とした基礎工事を専門とする有限会社オオブ工業。
需要に応えて新しい工法を採り入れるたびに、設備・機械を拡充して成長してきた。
それを支えてきたのがコベルコ建機のクレーンだ。最適な工法や工事条件に合わせてクレーンを活用し、基礎工事のレベルアップ、効率化につなげている。

杭打ちを中心とした基礎工事を専門とする有限会社オオブ工業。需要に応えて新しい工法を採り入れるたびに、設備・機械を拡充して成長してきた。それを支えてきたのがコベルコ建機のクレーンだ。最適な工法や工事条件に合わせてクレーンを活用し、基礎工事のレベルアップ、効率化につなげている。

社員とは会社のビジョンを共有し
「できない理由を探すのではなく、できる方法を考えよ」と伝えています。
時代の変化に対応するための理念です

代表取締役 岩永洋平さん

課題解決のために新工法を導入して事業を拡大

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TK550GSBはもともと、PSPエ法での新型杭打ち機の相番機としての活用を目的に購入された。狭隘地や高さに制限のある低空頭での作業に威力を発揮している

有限会社オオブ工業は1972年、愛知県大府市で、現会長の岩永直幸さんが創業した。クローラクレーンを用いた鋼矢板の打ち抜き工事などから始めたが、1979年には北海道の杭打ち会社から工法を学び、圧入工事を手がけるようになる。当時、北海道は冬場に仕事が減少するため、冬でも仕事の多い本州にこの会社を迎え、業務への協力を頼んでいたことが縁になったという。その後もオオブ工業は、次々に新しい工法を導入しては事業を拡大してきた。

「バイブロ工法による振動や音で周辺住民から苦情が出れば、それを機に圧入工法を手がける。その工事過程で硬質岩盤にぶつかると、パイラー工法(硬岩盤クリア工法)を導入。それでも困難な部分が出てくると全回転チュービング装置を用いるというように、需要に応えて課題を解決すべく工法を増やし、それを実現するための設備、機械を揃えてきました」と代表取締役の岩永洋平さんは語る。そうすることで、杭打ち基礎に関することならなんでも完遂できる企業を目指してきたという。

同社とコベルコ建機、販売代理店である株式会社ヨネイとのつながりは歴史があり、早くからコベルコ建機製クレーンを所有していた。「私自身がコベルコ建機のクレーンに触れたのは18歳のとき。父に言われてコベルコ教習所 (明石教習センター) で、玉掛け、クレーン、大型特殊の資格を取得したときです」と岩永さん。

当時、同社にはP&H製の315をはじめ、コベルコ建機歴代クローラクレーンの7035や7045、ラフテレーンクレーンのRK250があったのを覚えていると振り返る。

2011年に社長業を引き継ぎ、それまで現場業務一辺倒で経営管理や財務に関しては“ほとんど素人"という状態から、試行錯誤しながら事業を進めてきたという。同社は現在、社員数62名、グループ企業4社合わせて100名以上の規模となった。

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同社は75tクラスのTK750GFSも保有。樋門の耐震補強のため、堤防の障害撤去作業で、全回転チュービング装置の相番機として活躍

現場とともに開発する姿勢 TK550GSBの活躍にも期待

オオブ工業は現在、BM1000G、BM800G、TK750Gなど十数台のコベルコ建機製クレーンを所有する。しかし新しい工法や技術への意欲は今も変わらない。同社ではPSP工法(鋼管回転圧入方式)のため、バックホウをベースに回転圧入機と組み合わせた自走式掘削機を独自に製作し、利用していた。この自作機に日本車輌製造株式会社が注目したことから、両社で共同開発を行った新型機が誕生した。「共同開発機を構想した当時、ショートブームで狭所作業性に優れるTK550GSBは相番機としてピッタリだと思い、2021年に導入しました。ただ、共同開発機の完成は2年以上先になると判明。結局、日本車輌製造の全回転チュービング装置RT-120SLも新たに購入することになりました」と岩永さんは笑う。

これまで、コベルコ建機製クレーンが活躍した現場で特に印象に残っている仕事の1つが妙正寺川(東京都中野区)の災害復興整備工事だという。その現場は、鋼矢板や鋼管杭を打ち込んで進んでいく工事で、入口が狭く狭隘地であるため、より細かな操作性が求められたが、しっかりと応えてくれる機械の性能を実感できたと語る。この仕事で岩永さんは優秀技能者(2009年 第17回建設ステーション技能者)として東京都から表彰を受けている。

多くのクレーンを扱ってきた経験から岩永さんは、熟練したオペレータの感覚を正確に反映するコベルコ建機クレーンの性能を高く評価する。「しかも、mm単位の微妙な調整を要求してもコベルコ建機は改善への努力を惜しみません。こうしたユーザとともに開発する姿勢がコベルコ建機の強みだと思います。今後はクレーンのICT化にも期待しています。心ときめく進化を遂げてほしいですね」

また経営者の視点からは、コベルコ建機製クレーンが非常に堅牢な機械であり、資産価値が減じない魅力を語る。「長期間使用して、中古として払い下げてもあまり価格が下がりません。つまり、自分が気に入った機械を購入し、それを使って顧客に貢献する仕事ができ、さらに資産としても活用可能という3つの長所があります。オーナー企業の発想かもしれませんが、非常におトクな機械だと感じています」

杭打ち基礎工事では、杭打ち機が主役でクレーンは脇役だ。しかし主役の性能や有効性は変化するし、逆に主役が進化すれば、新たな脇役が求められる局面も出てくる。 オオブ工業はそうした組み合わせの可能性を追求しながら、事業拡大を目指している。

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社名の「オオブ工業」は、創業の地である愛知県大府市にちなんでいる。大府市で成功した20年後、現会長の岩永直幸さんは故郷の三重県桑名市長島町に本社を移転。このほか、支店を千葉県柏市に、営業所を東京都千代田区にもつ

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今回の訪問先は矢印

有限会社オオブ工業
所在地/三重桑名市長島町東殿名1056
tel 0594-42-3811
https://oobu.co.jp/
織田孝一= 取材・文 三浦泰章= 撮影 text by Koichi Oda/photographs by Yasuaki Miura