コベルコ建設機械ニュース

Vol.269Aug.2025

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特集 特集 機能もサポートもアップデート進化するK-D2 PLANNER

機能もサポートも
アップデート
進化するK-D2 PLANNER

Building Information Modeling(以下BIM)推進という建設業界の一大トレンドのなかで、コベルコ建機が開発し2023年4月にリリースしたのが、クレーン施工計画最適化のためのシミュレーションソフト「K-D2 PLANNER」だ。リリースから2年半を経て、進化した現在の姿を探る。
効率化やコスト削減、品質向上を目指し、建築物の設計、施工、維持管理に関する情報を3Dモデルに統合し一元的に管理する手法

座談会 with 大塚商会

頼れる協業パートナーを得て販売を強化
K-D2 PLANNER
今後の可能性も開拓

K-D2 PLANNERの販売・普及促進面においてコベルコ建機が得た強力なパートナーが株式会社大塚商会だ。
両社の連携の経緯、製品への想い、さらに今後の展望や期待について語り合った。

佐藤 豊

大塚商会 マーケティング本部
特定CADソフト
プロモーション課 課長

佐藤 豊さん

施工での3Dシミュレーションを普及させるには、ユーザ企業の上層部の意識を変える努力も必要です。

藤垣 茉友

大塚商会 PLMソリューショングループ
BIM・CIMソリューション課

藤垣 茉友さん

RevitやK-D2 PLANNERのメリットを最大限に引き出せるように、お客様をトータルにサポートしたいですね。

岡本 真典

コベルコ建機 新事業推進部
K-D2事業推進グループ グループ長

岡本 真典

今後は製品の拡充に加え、ほかのアドインソフトとの連携も大きなテーマになると思います。

髙松 伸広

コベルコ建機 新事業推進部
K-D2事業推進グループ

髙松 伸広

お客様に製品価値をきちんと感じていただき、運用するというミッションを果たしていきます。

青木 美緒

コベルコ建機 新事業推進部
K-D2事業推進グループ

青木 美緒

大塚商会様がもつノウハウを活かして、製品の価値を最大限に引き出したいですね。

ソフトウエアを売るノウハウを学ぶ

まずK-D2 PLANNERの機能面の現在地を整理する。2023年4月のリリース以降、3つの機能拡充を行った。

時期の早い順に、

  1. リンクされた複数の3Dモデルの情報を使用可能とした機能(2023年10月)
  2. オフライン環境で一時的に利用できる機能(2024年4月)
  3. クレーンメーカ4社のモデルの標準搭載(2024年5月)

の3つだ。

「①と②は、リリース後にユーザの要望を反映させたもの、また③はリリース時からの懸案でした」と髙松伸広(コベルコ建機 新事業推進部 K-D2事業推進グループ)は振り返り、次のような説明を続ける。「建設においてでは建物、設備、鉄骨など複数の3Dモデルを利用することが多いため、①の機能が役立ちます。②は事務所から持ち出すとライセンス認証が切断されてしまうなど、通信環境が整っていないと使えないという課題に対応したものです。③は、建設会社は工事の検討段階では、クレーンメーカや機種を決めていないことが多いという実態に即して用意しました。当初のコベルコ建機、株式会社タダノに加え、住友重機械建機クレーン株式会社、株式会社加藤製作所のクレーンモデルを追加しました」。搭載機種は今後、海外メーカも検討していく予定だという。

標準搭載モデル

標準搭載モデル 標準搭載モデル 2024年2月2日時点で、株式会社タダノ、株式会社加藤製作所、住友重機械建機クレーン株式会社と当社がBIM データとして公開しているモデルを標準搭載しています。今後公開されるBIMデータは随時対応していきます。

これらの機能の拡充を果たした2023年春頃から、コベルコ建機はK-D2 PLANNERの販売や普及促進面で、大塚商会と協力して取り組んでいる。

「当社は、建機販売はしてきましたが、ソフトウエア販売は未経験。販売ノウハウ、販売チャネル、販促方法、価格体系など、すべてが未知の領域でした。そこでベースソフトAutodeskRevit(以下Revitの国内販売最大手の大塚商会様に協力を仰ぎました」と岡本真典(新事業推進部 K-D2事業推進グループ グループ長)

髙松もこう付け加える。「K-D2 PLANNERはリリース後、ユーザから非常に高い評価を得ました。ですから、配信プラットホームに置いておけば売れるだろうと期待していましたが、実際にはなかなか、受注につながりませんでした。ビジネスを成立させるにはソフト販売の方法論を知らなくては、と改めて気づいたのです」

K-D2 PLANNERは、建築設計用の3DCADであるRevitのアドイン型ソフトだ。大塚商会はRevitやその関連ソフト販売の実績を豊富にもち、この点でもパートナーとして最適だった。

優れたアドインツールとして評価

大塚商会はK-D2 PLANNERにどのような印象をもったのだろう。「“売らせてもらえるならぜひ売りたい”と感じる印象的な製品。つり上げ時のクレーンのたわみなど、見かけ上は気づかないような要素まで精密にシミュレーションできるなど、建機メーカの強みが反映されていると思いました」と佐藤豊さん(大塚商会 マーケティング本部 特定CADソフトプロモーション課 課長)

アプリケーションエンジニアの藤垣茉友さん(大塚商会 PLMソリューショングループ BIM・CIMソリューション課)は、「ユーザインターフェースの分かりやすさも魅力。クレーンの専門知識が少ない人でも、マニュアルにあまり依存せず操作しやすいツールだと思います」と評価する。

こうして両社の想いは一致し、コベルコ建機と大塚商会の協業による販売が動き出した。

協業することでコベルコ建機が学んだことは多い。「Revitと周辺ソフトを熟知している方々に支えられて、システム全体を踏まえた提案を考えられるようになりました。また、建設機械とは異なるソフトウエアの販促手法なども学ばせてもらいました」(岡本)

大塚商会の佐藤さんもこう評価する。

「Revitは、設計者の利用が多いソフトです。しかし施工は設計の後工程であり、そのためのアドインツールは十分にそろっていません。K-D2 PLANNERは施工にジャストフィットするツールで、Revit全体としての価値にも貢献してくれると思いました」

設計と施工を同じファイル形式で扱い、施工計画を強力に支援できる。建設業界では、設計に比べて施工の3D化はまだこれからの部分が多く、今後のBIM推進にとっても大きな意味がある。

2社が協力してユーザへとアプローチ

2024年に協業が正式に決定、両社のメンバーで構成する連絡会を定期的に開き、情報交換することから始めた。

「マーケティングと技術で、それぞれのチームをつくり、意見を交わしては展示会などへの出展、営業活動を行っています」(岡本)。マーケティングとしては営業チームと連携してユーザの理解を深めること、技術としてはRevitも含めたソリューション全体としての利用促進にも力を入れた。

「第4回 建設DX展(2024年12月)では共同でブースを設けて出展しました。大塚商会の方が同じ場にいてくださることで安心感もありましたし、Revitとの相乗効果も大きかったと思います」と青木美緒(コベルコ建機 新事業推進部 K-D2事業推進グループ)は語る。

また現在、導入のためのスクールも開始された。提供するのはユーザ企業ごとに実施する半日のプランだ。テキストはコベルコ建機が制作、大塚商会がより客観的な視点で確認、監修し、講師も大塚商会のエンジニアが務める。

大塚商会と共同出展した2024年12月「第4回 建設DX展」

「クレーンに関する知識が少ないお客様が利用するケースも想定されるので、コベルコ建機の知見を採り入れながら分かりやすい解説を心がけました。また、機能を解説するだけでなく、実際に操作して使い方を習得する部分を増やすようにしました」(大塚商会・藤垣さん)

広がるユーザ、高まる作業効率

協業のなかで見えてきたことも少なくない。「ユーザに想定していたのはゼネコンの施工計画部門です。しかし実際に共同でお客様対応すると、クレーンの需要はゼネコン以外にもいろいろあって、例えば設備機器を扱うサブコン、プラント企業などによる活用が予想外に多かったのです」(大塚商会・佐藤さん)。「ゼネコン以外の企業の問い合わせを受け、説明に伺うと、要望にぴったり合致して喜ばれ、ユーザ層が広がることもしばしばありました」と髙松も同様の体験を語る。

ユーザが期待する効果では、計画担当者の工数削減(=作業時間の削減)が大きい。「干渉の確認などが事前にでき、つれると予測していたが、いざ現場でつろうとしたらできないといった見込み違いが起こりません」(髙松)。こうした初期段階で作業工程を確認することがコスト削減には最も貢献する。

さらに設計との関係で考えると、再設計が楽であるというメリットに大塚商会の佐藤さんは注目する。「このツールの従来と最も違う点は、設計が決まっても、施工から考えてこれで良いのかと検討し、設計をやり直せることにあります」

どうしても建築は意匠(デザイン)が優位になる傾向がある。しかし、こうしたシミュレーションソフトによって、工数やコストの面から設計を見直すことができるようになった。これは、安全や作業環境の面から見ても明らかに好影響を及ぼしている。

さらに優れたツールへの進化目指す

2社は協業が始まるとすぐにサポート体制を整備した。現状の問い合わせ窓口はコベルコ建機、大塚商会のどちらにもあり、コベルコ建機はソフトに関する部分を回答し、大塚商会はより広く全体的な分野をカバーする。

「大塚商会では1人のエンジニアが一企業を担当する形です。またK-D2 PLANNERの前提はRevitなので、Revitを介さないと理解できない部分は私たちがお答えしています。Revitによるモデリングも私たちが説明します」(大塚商会・藤垣さん)。また大塚商会ではテレホンサポートのほか、パソコン画面を共有しリモートでサポートするといった分かりやすいサービスも提供している。

K-D2 PLANNERの今後についても模索が始まっている。

「Revitにはさまざまなアドインツールがあり、それらと機能連携できる可能性もあります。いずれは他社のアドインツールとの連携も検討したいと考えています」(岡本)

大塚商会の佐藤さんはユーザが使いこなすことによる施工プロセスの変化にも期待を寄せる。「例えば敷地が限られ、資材をいったんある場所に降ろし、そこからつり上げて目的の場所へ降ろすといった複雑な作業のシミュレーションもできるため、極めて無駄のない計画を立てられると思います」

コベルコ建機では今後、年2回のアップデートを目標としている。「当初はゼネコンの協力を得て、その要望を聞きながら開発してきました。その後、想定していなかった企業にもお客様が広がりました。そうした方々の声を反映させて、さらに優れたものにしていきたいですね」(髙松)

施工計画の効率化だけではない。建設業界全体にとって、BIM推進は喫緊の課題だが、K-D2 PLANNERはその推進のきっかけとなり得る。コベルコ建機、大塚商会は協業を強化し、K-D2 PLANNERの普及を加速させることで、建設業界全体の発展に寄与していく。

左から佐藤さん、藤垣さん、青木、岡本、髙松

  • 織田孝一= 取材・文 text by Koichi Oda
  • 三浦泰章= 撮影 photographs by Yasuaki Miura