コベルコ建設機械ニュース

Vol.271Jan.2026

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特集コベルコ建機日本が追求するこれからのユーザー現場主義

コベルコ建機日本が 追求するこれからの ユーザー現場主義

ユーザー現場主義

コベルコ建機グループにおいて、
国内での販売・サービスを担うコベルコ建機日本。

社会および市場環境が激変するなかで、
お客様の要望によりスピーディーに応え、
信頼を構築するための新たな一歩を踏み出した。

本社を移転し新体制でお客様と向き合う姿勢、
その具体的な取り組みをひもといた。

SPECIAL INTERVIEW

組織と事業を変革し、
お客様に高い価値を提供する

あらき じろう
荒木 治郎
コベルコ建機日本
代表取締役社長

コベルコ建機グループの基本的な経営理念は不変と言っていい。真に価値ある商品、サービス、情報を提供することでお客様の満足に応えると共に、豊かな社会に貢献するために“ユーザー現場主義”を貫く。国内での販売とサービス提供を担うコベルコ建機日本もそこは変わらない。

「大切にしているのはお客様の声、目線です。それを商品やサービスにスピーディーに反映させたい。もともとお客様との距離が近い会社ですが、それをさらに近づけていきたい」と、コベルコ建機日本・代表取締役社長の荒木治郎は語る。

コベルコ建機日本は2024年に中古車事業を、2025年4月にはクレーン事業を統合、10月には本社を千葉県・市川から東京都・お台場に移転した。

東京都江東区・お台場にあるコベルコ建機日本の新本社。最寄駅は東京テレポート(りんかい線)。旧本社のあった市川(現・市川事業所)、コベルコ建機東京本社のある大崎の中間エリアにあり、新幹線や羽田空港も利用しやすい

ユーザー現場主義を貫き、変化に対応

これらの背景には市場環境の変化がある。それに対応するためにコベルコ建機日本では、「モノ」、「コト」、「ストック」という三本の柱で新機軸を打ち出している。

まず「モノ」で注目すべきは環境系建機ビジネスの強化だ。「コベルコ建機の強みの1つ、建物解体機、金属リサイクル機、産廃リサイクル機、林業機の四分野に注力します。工期短縮、安全性向上などに役立てていただき、差別化を図ります」。コベルコ建機の高度な技術が生み出し連綿と磨き上げた商品への自信が、販売を支える力になっている。

お客様の課題を解決するサービス・ソリューションを意味する「コト」では、デジタル技術を駆使した新事業開拓に力を入れる。その代表格がK-DIVE®だ。

「市場環境の変化のなかでも顕著なのが労働力不足。いま現場では切実な問題となりつつあります。これを解決するには生産性向上が欠かせません」

その解の1つがICTの活用だ。コベルコ建機ではホルナビをはじめ、ICT活用に積極的に取り組んできた。K-DIVE®はそうした流れの最先端に位置し、遠隔で建機を操作できるシステムだ。「生産性向上はもちろん、安全性向上、人材多様化など、建設業に多くのメリットをもたらします。現在、浸透活動に力を入れていますが、お客様からも多くの支持を得ています」。

そのために組織も再編し、K-DIVE®とICT建機が一体となった社長直轄の「DXソリューション部」を設置。「この部は、K-DIVE推進グループとホルナビ推進グループで構成されています。これにより、ICT建機に関するお客様からの意見や相談をさらに採り入れやすくなりました。またK-DIVE®とホルナビの連携もしやすくなったと思います。K-DIVE®を迅速に普及させ、ICT施工の市場で先行することを目指しています」。

今後、K-DIVE®とICT建機を現場での必要性に応じて組み合わせ、その有効性を検証しつつさらに進化させていく予定だ。

稼働中の建機を基盤にした「ストック」では、特に中古車販売、整備サービスなどの拡充を目指す。「国内市場は成熟し伸びにくくなっている一方で、中古車ニーズは高まっています」。

かつて中古車のほとんどは東南アジアをはじめとする海外に輸出されていたが、近年はまず国内で販売され、それから海外に送られる流れが定着しつつある。

中古車の国内市場では、品質が重要な要素だ。そこでコベルコ建機日本ではレンタル機を中心に整備や塗装に十分に手をかけ、高品質な中古車を揃える。その結果2025年7月に市川で開催した中古車フェアでは、高い成約率を得た。12月には神戸でも中古車フェアを実施した。「中古車ビジネスでは十分な量を仕入れることが重要。そのためにもレンタル企業や代理店との連携を強化したいと思っています」。

ショベルとクレーンの統合で生まれる意識変革

コベルコ建機日本は2024年4月に、中古車販売を担うコベルコ建機インターナショナルトレーディングのショベル部門を統合、その後2025年4月には、コベルコ建機の国内クレーン販売・サービスも統合した。これにより新車販売から中古車買い取りまでの一貫した体制を構築した。

クレーン販売部門を統合したことにより新車販売から中古車買い取りまで一貫した体制を構築

「私が入社した1990年頃、当社はショベルとクレーンの両方を1つの会社で販売していました。その後、ショベルとクレーンは別会社となりましたが、今回のクレーン事業の統合は、以前の形に戻ったとも言えるわけで、自然な流れだと感じます。また、歴史的に見るとコベルコ建機はクレーンがシェアもブランド力も高かったため、今回の統合はコベルコ建機日本のブランド力向上にも寄与すると思います。もちろんショベル事業にはショベル事業の良さがあり、双方を合わせてさらにブランド力を高めていくのはこれからです」

ショベル、クレーン両方を用いるお客様は少なくない。そうしたお客様に向け、荒木は営業の意識変革も期待する。

「これまではショベルとクレーンで営業が分かれていました。しかし今後、ショベル営業はクレーンを、クレーン営業はショベルを意識するようになる。どちらの営業も視野を広げ、これまで不足していた情報交換などにより、お客様の事業をより正確に理解し、必要な建機をご提案できるようになると思います」

すでにショベルとクレーンの同行営業もはじまり、長期的視野で見れば人のネットワークが広がる可能性も大きい。大規模プロジェクトでは、工事の過程で建物解体機、クローラクレーンなどさまざまな大型の建機を組み合わせる必要があるため、ご提案の機会が広がり、お客様にとっては課題解決につながる。新体制での営業としては腕の見せどころと言えよう。

サービス部門ではヤードを融通し合うなど、ショベルとクレーンの一貫した事業体制が構築されたことによって、業務をより柔軟に進められることもメリットだ。

拡大した組織に合わせて本社を移転

新しい体制に伴い、コベルコ建機日本では、本社を千葉の市川から都内のお台場に移転した。「直接的な理由は本社が手狭になったためです。本社のスタッフ業務の部署新設や増員、中古車販売のショベル部門やコベルコ建機のクレーン事業統合、さらにDXソリューション部の新設も決まり、陣容が拡大するのに伴い移転を決定しました」。

移転先としては代理店やお客様にも気軽に立ち寄っていただけるように、都内を志向した。一方で市川にはカスタマーサポート、中古車部門、ホルナビ部門の一部などをサテライト拠点として残している。加えてコベルコ建機の本社が東京都・大崎にあるため、市川、大崎の両方から近いエリアで物件を探した結果お台場となった。

変化を恐れず、成長を目指す

このように、コベルコ建機日本は社会の激しい変化に対応し、お客様と時代の要請に対応する新体制を整えた。

「“ユーザー現場主義”を忘れず、お客様の声を聞き、市場ニーズをとらえたい。スピードを大切にすることで、信頼を勝ち取り、良きパートナーを目指したい。さらに言えば、最前線で聞いたお客様の声を、コベルコ建機に的確に伝えることも、販売・サービス企業である当社の大切な役割と自負しています。それがより優れた商品開発にもつながると思います」

コベルコ建機日本の変革は人材の成長にもつながる。「組織も人も、変化しなくては成長できないところがあります。社員には変化を恐れるな、と激励しています」。

FOCUS_1

さまざまな要素をコーディネートする力で、
K-DIVE®の普及を目指す

おの ともひろ
小野 朝浩
コベルコ建機日本
DXソリューション部 部長

就業人口減少という課題への解

「建設業をとりまく国内外の経営環境が大きく変化しています。日本の場合、最も大きな変化の1つが就業人口の減少です。しかし、国内インフラの建設・維持管理、災害復旧などの必要性の高さは変わりません。こうなると従来のように現場で1人のオペレータが1台の重機を操作するやり方では追いつかない状況になります」と、DXソリューション部部長の小野朝浩は語る。

人口減少が続くなかで、今後、建設業はどうインフラを支え、社会に貢献するのか。その解の1つがK-DIVE®だ。「これは場所に影響されにくい遠隔操作のシステム。しかも1つのコックピットで複数の建機を切り替え操作できます。現場に出向く必要もないため、効率的かつ安全性も高い。コベルコ建機グループは将来に備え、このシステムを先行して普及させようとしています」。しかしK-DIVE®の技術的な先進性だけではなかなか普及にはつながらない。代理店やお客様の共感を得て、新たなマーケットをつくる必要がある。「それには実際のサービスに落とし込むことが必要です。そうした特性から、コベルコ建機日本がコベルコ建機と共にこの事業を担うことになりました」。

K-DIVE®はすでに発売され、代理店にも認知が広がり、試乗だけでも2025年は1000件を超える。「試乗されたお客様のほぼ全員が、このシステムに共感し高く評価してくださっています。特に実搭乗に近い操作感は大きな魅力となっています」。

今後は試乗から積極的に導入提案を行っていく。

「就業人口は減少しているものの、多くの企業がまだ本当の危機に直面していないし、労務単価も極端には上がっていない。そのためコストをかけてでも導入する決断には至らないのかもしれません。しかし今後5年ほどで日本社会の状況はさらに変わるはず。K-DIVE®の導入は大きく進むと期待しています」

K-DIVE®は生産性向上に加えて安全性向上、人材多様化など多くのメリットをもたらす

コーディネート力が「コト」事業を進化させる

コベルコ建機日本において、K-DIVE®の推進グループが属するのはDXソリューション部、ここには、ホルナビの推進グループも属している。ホルナビはICT建機の先駆けとなった技術で、3D設計データを活用し、マシンガイダンスやマシンコントロールを行えるものだ。

「K-DIVE®は、ホルナビよりあとに登場した技術やソリューションですが、ゆくゆくはホルナビと共に利用していくものです。さらに今後は、ここに自動運転技術も加わることになります。こうした連携も想定して、同じ部署に属す形になりました」

K-DIVE®の開発における大きな特色は、実際のお客様を事業パートナーに迎え、その要望を採り入れては改善してきたことである。「現場でお客様の意見を採り入れながら進めていく、アジャイル開発をしています。現在もそれは続いていて、K-DIVE®は常に進化しています」。実際の導入例においては、現段階では人手不足の危機を感じているお客様が先行して導入されており、それ以外のお客様からは国土交通省が推進する「i-Construction 2.0」への取り組み、作業環境の改善、多様な人材の活用につながる点が評価されている。

2025年度上期にK-DIVE®はスターリンクをはじめ衛星通信を経由して遠隔操作できるようになった。従来に比べさらに場所を選ばず利用可能となり、土木分野などへと市場も広がった。

「今後を展望すると、技術面ではデータの蓄積と活用を、サービス面ではコーディネート力を強化していく必要があります」。小野はこの「データを活用したコーディネート力」が、K-DIVE®をはじめとした「コト」事業の推進にとって極めて重要であり、競合他社より先行して市場投入してきたコベルコ建機グループの強みでもあると考えている。

「K-DIVE®やホルナビ、将来は自動運転を現場に導入する場合、施工会社、システムベンダー、測量機器メーカ、通信事業者など関係するさまざまな企業や専門家が連携する仕組みをつくっていく必要があります。それには全体をコーディネートする力が不可欠。そこを強化することは、当社の優位性につながります」

K-DIVE®をはじめとした「コト」事業推進の鍵はコーディネート力をもつ人材をいかに育てるか、ということでもある。

人手不足という社会・業界課題解決においてICT建機活用は大きな可能性を秘める
FOCUS_2

ストックビジネスでお客様と収益に貢献

うどう たくじ
有働 拓二
コベルコ建機日本 取締役
カスタマーサポート本部長

コベルコ建機日本の中核事業の1つにストックビジネスがある。部品販売を含めたサービス事業、中古車事業などだ。

「そのなかでもサービス事業は確かな実績を上げてきました。近年では存在感も収益もさらに大きくなり、貢献度も高まったと感じています」と、取締役 カスタマーサポート本部長の有働拓二は振り返る。

これは新車の性能や価格以上に、購入後のトラブルのなさ、スムーズな稼働という面を重視するお客様が多いからだ。

そうしたニーズに応えつつ、コベルコ建機日本は、サービス事業でのトップを目指す。基本となるのは、1.マシンダウンさせないこと、2.ダウンした場合には一刻も早く復旧させること、の2つだ。

「1については、お客様に定期メンテナンスの重要性を理解していただくことが大切です。きちんと保守をすればトラブルは減ります。サービス担当者の丁寧な説明や対応も重要です。2については、建機が止まれば工事が止まります。特に大型機では簡単に代替機を用意することが困難なため、現場でいかに迅速に修理し、復旧できるかが肝心です」

建機を止めないために手を尽くす

特にトラブル発生後の初動で、状況をいかに正確に把握できるか、原因がどこにあるかを素早く突きとめトラブルシューティングできるかが鍵になる。

「現在の建機は電子制御が進んでおり、ソフトなどの目に見えない不具合を解決できる能力が必要。そのレベルを上げていきたいですね」

トラブルなどの連絡についてはFSR(Field Service Report)という情報報告システムを導入した。「実運用はこれからですが、サービス担当者が機械のトラブル調査で確認した情報や画像を入力すると、関係部署に迅速に展開されるシステムです。調査の二度手間や情報の伝達漏れが減り、無駄なく迅速に一元管理できます」。

クレーン事業を統合したことはサービス面の拡充にもつながった。

「例えば、これまではクレーンの整備経験が浅いサービスマンが対応せざるを得ず、原因究明までに時間がかかるケースがあったと思います。それが経験豊富なクレーン専門サービスマンとより連携できるようになったことでスピードアップし、的確にお客様に対応できるようになりました」

成長する国内市場の中古車販売

建機の中古車販売は、国内販売が増加し海外販売と同程度になっているのが現状。背景には新車の価格上昇、国内市場の成長鈍化などがある。「国内では多少高価でも良質な中古車を求める声が増えています。それに応えて当社ではこの数年、再塗装を施し消耗品などを新品に交換した『プレミアム中古』と呼ばれる中古車を創出し、それらを集めた即売フェアを開催しており、これは毎回好評を博しています」。

中古車事業においては、入口である商品調達と、出口である販売(再販)の両輪が必要だ。それによって新車とのスムーズな循環が起こる。

「お客様にしてみれば、中古車が高く売れてこそ、新車を購入できる状況もあります。特に大型機や解体機の場合、新車販売促進のためにもその入替を成立させる中古車販売=出口戦略が欠かせません。当社ではその事業戦略の構築にも取り組んでいます」

有働は今後ストックビジネスを拡大するために必要なのはお客様への対応力向上と考え、具体的には次の点を挙げた。

消耗品を新しいものに交換し、塗装をし直した中古車の即売会は好評を博す

「コベルコ建機日本の拠点は全国約50カ所にあります。今後は大型機に対応できるところを増やしていきたいと考えており、大型機を扱うのに十分な敷地と設備をもつ拠点を整備したいです。さらにサービス事業全体の取り組みとして、ICT、デジタル、AIなどの活用を進めること。トラブルシューティングにしても、事例やナレッジを大量に蓄積し、AIで分析・診断するといった手法がどんどん進化しているからです。それと同時に、これが最も重要ですが、“人の育成”です。このような取り組みを通して、建設機械のサービスマンという仕事を、若い人が魅力や誇りを感じることができる姿にしたい。その結果、若いサービス担当者が増え、育つことで設備やICTを最大限に活用できると思います」

トラブルを未然に防ぐ予防保全の発想は、お客様にとっての大きな価値につながる
  • 織田孝一= 取材・文 text by Koichi Oda
  • 三浦泰章= 撮影 photographs by Yasuaki Miura