コベルコ建設機械ニュース

Vol.251Jan.2021

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イノベーションを成長の原動力に
特殊土木で確かな実績を積む

愛知県名古屋市を拠点に土木工事業を展開する太洋基礎工業株式会社。地中連続壁や地中障害物の撤去といった特殊土木工事を得意とする同社では、新たな技術の導入にも積極的で、独自工法の開発でも数々の実績を上げている。その技術力は業界でもトップクラスを誇り、同社の成長をけん引する原動力となっている。

愛知県名古屋市を拠点に土木工事業を展開する太洋基礎工業株式会社。地中連続壁や地中障害物の撤去といった特殊土木工事を得意とする同社では、新たな技術の導入にも積極的で、独自工法の開発でも数々の実績を上げている。その技術力は業界でもトップクラスを誇り、同社の成長をけん引する原動力となっている。

「技術を伸ばす、開発する」にこだわって60余年。特殊土木の分野ではどこにも負けない自信があります

顧問 豊住満さん

多様な特殊土木工事に精通し独自工法の開発を手がける

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TRD工法の現場で稼働するTK750G。その役割は重さ3t、長さ15mにおよぶ芯材をつり上げ、TRD施工機が掘削した溝に次々と挿入することだ

太洋基礎工業株式会社の創業は1958年。現顧問の豊住満さんがわずか3名で始めた基礎土木の会社は、今や221名の従業員を擁する規模にまで成長した。それを可能にしたのが、同社ならではの卓越した技術力。創業以来、上下水道、電気・ガス管路、河川、道路などの一般土木工事に加え、主に地中連続壁や地中障害物撤去、地盤改良、管路工事などに代表される特殊土木工事の分野で実績を積み重ねてきた。

「社会の役に立つ会社を作るという目標のもと、同業他社があまり手がけていない特殊な工事の技術力を磨くとともに、新技術の導入や独自工法の開発にも力を注いできました」(豊住さん)

「例えば、狭小地でも最大深度20mの地中連続壁を施工可能にするミニウォール工法は、当社が独自開発したものです」と語るのは、代表取締役社長の加藤行正さんだ。

「そのほかにも、地中障害物撤去を目的とするヒロワークKmighty工法やバウアー工法、地盤改良のための浅深4軸工法など、新工法の研究開発および導入を積極的に推進しています」(加藤さん)

太洋基礎工業の技術開発を担う、取締役神守研究開発センター長の土屋敦雄さんは、技術開発におけるコベルコとの連携についてこう説明する。

「一度に施工深度の全層を掘削・攪拌するため、地下掘削時の土留め止水壁などの施工に最適なのがTRD工法です。その実用化には、専用の施工機械をコベルコ建機に開発してもらいました。ともにTRD工法の普及、技術の向上ならびにその健全な発展を目的に設立されたTRD工法協会の正会員に名を連ね、現在も技術協力などで緊密な関係を継続しています」

“当社は特殊土木のデパート”だといえるほど、さまざまな工法に対応できると話す加藤さん。技術開発に対する太洋基礎工業の強いこだわりは、業界内でも唯一無二の存在感を放っている。

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工事対象の道路は、直線ではなく微妙にカーブしていることから、芯材の挿入時に精度を欠きやすいという。そのため、人の目で常時確認しながら作業が進められていた

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取締役神守研究開発センター長の土屋敦雄さんは、新工法のための機械開発や実証工事など、太洋基礎工業の技術開発を一手に担っている

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代表取締役社長の加藤行正さん。「コベルコ建機のクレーンに対しては今後、IT化による安全面の強化に期待したいですね」

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TRD工法の施工現場で
コベルコのTK750Gが活躍

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コベルコ建機が開発したTRD施工のためのメインマシン、TRD35-2。太洋基礎工業では計7台のTRD施工機を所有している

2020年10月、太洋基礎工業は東京都のJR高輪ゲートウェイ駅近くの高架下道路の修繕に向けて鋼製連壁を施工するべく、空頭制限のもとTRD工法による工事を行っていた。機械高10mで最大深度60mの地中連続壁を施工可能なTRD工法には、コベルコ建機が開発した施工機械とともに、芯材の建て込み用としてクローラクレーンが使用される。本現場では、太洋基礎工業が新たに導入したコベルコ製のテレスコピッククローラクレーン、TK750Gが稼働しており、TRD施工機により掘削された溝に芯材を挿入する作業に従事していた。TK750Gの操作を担当するのは、オペレータ歴20年以上におよぶベテランスタッフの安西稔さんだ。

「伸縮式ブームを装備したTK750Gは高さ制限のある現場に最適です。掘削された穴には固化液が注入されるため、芯材の挿入にはスピードが求められますが、TK750Gは旋回を含めてすべての動きがスムーズなため、迅速に作業を遂行できます」(安西さん)

太洋基礎工業の土木工事では、現場ごとに異なる工法が採用されているため、クレーンには多様な性能が求められる。その点、TK750Gなら優れた旋回性だけでなく、つり上げ能力もパワフルな上、輸送性を考慮したコンパクト設計で、どんな現場でも快適に作業できると安西さんは評価する。

「工法によってクレーンをいろいろな作業に使う当社にとって、オールマイティな性能を備えたTK750Gは非常にマッチしていると思います」(安西さん)

2021年は、大阪・関西万博やリニアモーターカー関連の基礎工事が目白押しの上、将来的にはベトナムにおける浚渫土の再利用の実証工事という海外事業も予定されている。太洋基礎工業が起こすイノベーションは、今後もさまざまな現場で採用され、世の中の役に立つべくさらに広がっていくはずだ。

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TK750Gのオペレータを務める安西稔さん。本現場では、道路の両サイドに40mほどの地中連続壁を施工するべく、まずは片側にTK750Gで計36本の芯材を挿入。反対側の工事は1年後に予定されている

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TRD施工機は、写真のチェーンソー型カッターポストを駆使し、横方向に移動させながら地盤を掘削。上下の刃を異なる長さにすることで、土壌を攪拌しやすくする工夫も施されている

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TRD施工機のオペレータとして、日本屈指の技術を誇る増田隆宏さん。キャブ内に設置されたモニタで垂直性をリアルタイムで確認しつつ、高精度で施工していく

今回の訪問先は矢印

太洋基礎工業株式会社
本社所在地/
愛知県名古屋市中川区柳森町107番地 
tel 052-362-6351
神守研究開発センター所在地/
愛知県津島市神守町持竿58-1 
tel 0567-25-1373
山田高弘= 取材・文 神保達也= 撮影 text by Takahiro Yamada/photographs by Tatsuya Jinbo