コベルコ建設機械ニュース

Vol.251Jan.2021

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ICT施工の推進で人を育み
若手社員のさらなる成長を促す

2003年、代表取締役の渡辺義幸さんが30歳の時に起ち上げたアトム工業株式会社。土木業界では珍しく若いスタッフが多い同社では、創業時より人材育成に注力し、彼らの成長を促すために、仕事の選び方にもこだわってきた。最近ではICT施工の推進を通じて、若いスタッフのやる気を喚起。さらなる技術力向上を目指している。

2003年、代表取締役の渡辺義幸さんが30歳の時に起ち上げたアトム工業株式会社。土木業界では珍しく若いスタッフが多い同社では、創業時より人材育成に注力し、彼らの成長を促すために、仕事の選び方にもこだわってきた。最近ではICT施工の推進を通じて、若いスタッフのやる気を喚起。さらなる技術力向上を目指している。

ICT施工の導入を
これからの人材育成の
柱と位置づけて
会社としてのさらなる発展に
つなげていきます

代表取締役 渡辺義幸さん

人材育成の一環として
チルトローテータを導入

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チルトローテータでは、バケットを180度回転させることで作業半径が30cmほど伸びる。その少しの差で人力による作業が不要になるケースも多く、本現場でも当初6人いた手元作業員が3人まで削減できたという

福島県いわき市で公共工事を中心とした土木事業を展開するアトム工業株式会社は、社員15名の少数精鋭の土木業者だ。そのうち、代表取締役の渡辺義幸さんを筆頭に、12名がオペレータとして活躍している。驚くべきは彼らスタッフたちの年齢だ。20代が5人、30代が2人、40代が渡辺さんを含めて5人という年齢構成は、土木業界としては極めて若いといえるだろう。

熟練オペレータが不在の分、若いオペレータに経験を積ませたいと考えた渡辺さんは、これまでにさまざまな分野の仕事を受注するよう努めてきたと話す。その言葉通り、アトム工業では2003年の創業以来、山や川、海から街まで多様なフィールドの土木工事を手がけ、それぞれに特有の技術を幅広く磨いてきた。そうした努力が実を結び、今やその技術力は業界からも高く評価され、他社では技術的な問題で実現できない工事を依頼されるケースも年々増えているという。

そしてここ数年、スタッフのさらなる技術力のレベルアップに向け、同社が新たに力を入れている取り組みがある。それがICT施工の推進だ。

「新しい技術の習得は、若いオペレータのモチベーションとして成長を後押しする効果が期待できます。そのため、現在はICT施工の推進に全力で取り組んでいます」(渡辺さん)

手始めとして2020年夏に導入したのが、バケットの傾きと回転を自在に操作できるチルトローテータだ。この機械での作業を、「かゆいところに手が届く感覚」と表現する渡辺さんは、YouTubeでの日々の情報収集を通じて、以前からチルトローテータに注目していたという。国や県の公共工事でICT施工が増加している今こそ、新しい技術の習得に最適な時期だと見定め、導入を決定した。

3Dマシンガイダンスで
先進のICT施工にも挑戦

取材時、チルトローテータ搭載のコベルコ機SK200-9は、河川堤防の修復に従事していた。2019年に起こった台風19号の被害に対する復旧工事である。オペレータを務める相田悟志さんは、アトム工業に入社して10年の26歳。手元作業から始めて現場のすべてを体験してきたと語る彼は、アトム工業における人材育成の成果を象徴する人物だ。チルトローテータを使い始めてわずか1カ月ほどだというが、すでにバケットを自らの手のように操っていた。

「バケットの傾きと回転を組み合わせて操作すれば、従来は手元作業員がスコップで行っていた際(きわ)の部分まで機械で仕上げられます。機体を移動させずに、障害物を避けながらの整地作業も可能です。直線だけでなく曲線にもバケットを引くことができるなど、法面から掘削まで、まさに何でもこなせる万能性がチルトローテータの魅力だと思います」(相田さん)

チルトローテータは、手元の操作でバケットの角度を調整すれば、足場の悪い現場においても正確な作業が可能になるため、実は災害復旧工事に最適な装備だ。機体を動かす必要がない分、そうした現場でもオペレータにかかる負担を軽減できると、相田さんは話してくれた。

今後、アトム工業には3D設計データを活用したICT施工の土木案件が控えている。その指揮を執るのが、本部長の櫻井隆行さんだ。

「法面に設置された農業用の送水管を入れ替えるという工事に向け、コベルコ機用の3Dマシンガイダンスを近々導入する予定です。設計データの3D化を含め、本工事ではICT施工をトータルで請け負うべく計画中で、コベルコさんにはそのためのサポートをお願いしているところです」

アトム工業の若きオペレータ陣も、本格的なICT施工に前向きで、一日も早くマスターしたいと語る。「若い人は覚えるのが早いですから」と渡辺さん。ICT施工を通じて人材育成を図るアトム工業の躍進は止まらない。

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本部長の櫻井隆行さんは、これから始まるICT施工における設計図面の3D化を担当。アトム工業の頭脳と呼ぶにふさわしい存在だ

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オペレータの相田悟志さん。アトム工業の生え抜きオペレータとして、26歳の若さで本現場の職長を務めている

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現場では、チルトローテータ搭載のSK200-9が法面を整形。もう1台のコベルコ機が土砂などの積み込みといった役割を担っていた

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チルトローテータには、物をつかむことができる簡易荷役用グラブも付属。「ワイヤによる玉掛けが不要で、ちょっとした物を運べるのはとても便利です。この現場でも、河辺の小枝や倒木を運ぶ際に役立ちました」(相田さん)

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法面整形や掘削など、作業に合わせたバケットへの交換もワンタッチで行える

今回の訪問先は矢印

アトム工業株式会社
福島県いわき市平字五町目15-1 アトムビル3階 
tel 0246-88-7430
山田高弘= 取材・文 神保達也= 撮影 text by Takahiro Yamada/photographs by Tatsuya Jinbo