特別鼎談
- 建山:
- 少子高齢化社会が進展するなかで、今後ますます労働人口の減少が加速化していきます。すでに製造業では、自動化やロボットとの協働、さらに無人化などの施策が進んでいるのはご存じの通りです。一方で、土木・建設業界はやや後れをとりましたが、ここにきて3次元のデジタルデータを測量・設計などの上流工程から施工~運用・管理に至る下流工程まで一気通貫させることで、現場の安全確保や省力化、生産性・施工精度向上などを実現しようというICT化が進行。遠隔操作や自動化、さらに無人化へと舵を切り始めました。こうした流れに対する、コベルコ建機の現状を教えてください。
- 山﨑:
- 当社は2018年に、「誰でも働ける現場へ KOBELCO IoT」というコンセプトを掲げ、中長期的なR&D戦略を描き、推進してきました。その1つである『K-DIVE CONCEPT』は、操作する人や場所、時間などの縛りから解放されたテレワーク化を築こうというものです。都市にいながら全国の現場の仕事ができるため、時間やロケーションに制約されず、女性や障がい者の活躍機会の拡大や、作業内容に最適なオペレータをマッチングするなどの動きも可能にするものです。
- 田中:
- 例えばクレーンはつり荷の荷重によりブームにたわみが生じますが、これはクレーン操作時のオペレータの経験や、施工計画時の施工計画者の熟練度、経験によってカバーされています。現在、建築設計向けBIM(Building Information Modeling)ソフトウェア「Revit※1(AUTODESK※2社)」にアドインする施工シミュレーション用ソフトウェア『K-D2 Planner』の開発を進めています。これは、クレーンとつり荷の位置を指定するだけで、コンピュータ上にクレーンの姿勢を表現でき、また作業半径や負荷率、接地圧など施工計画に必要な情報の表示、さらにブームのたわみ量も視覚的に表現されます。施工の計画や管理にICTを活用することで、経験や熟練度に頼ることなく、効率的に、安全で最適な施工の実現に貢献します。
- 山﨑:
- 私たちは、ICT化のなかでも操縦の楽しさや喜びは残していきたいと思っています。また自動化といっても、単に人の作業を代替させるのではなく、目指すべきは「そこで生まれた時間や労力を、より人間にしかできない仕事に活用。さらに高次の価値を生み出し、仕事自体を楽しんでいく」という“コトづくり”だと考えています。
- 建山:
- 私は、建機の操縦資格試験に関する委員会にも参加していますが、受講者数は年々減少傾向にあり、合格率も低下しています。たしかに、ICTの力で建機の操作自体を、より安全かつ魅力的で楽しいものにしていくことで、若い世代の関心を喚起することができそうですね。その結果として、業界の将来を託す人材採用にもつながるのではないかと思います。
※1※2 Revit、AUTODESKはAUTODESK社の商標です
