コベルコ建設機械ニュース

Vol.257Aug.2022

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独自の施工計画で
解体工事の技術革新に注力

創業以来、広島県江田島市にて船舶解体専門企業としての
実績を積み上げてきた株式会社フルサワ。
現在は、その解体技術を転用・発展させ、陸上総合解体にも進出し、
独自の施工計画で解体工事に技術革新を起こしている。

創業以来、広島県江田島市にて船舶解体専門企業としての実績を積み上げてきた株式会社フルサワ。現在は、その解体技術を転用・発展させ、陸上総合解体にも進出し、独自の施工計画で解体工事に技術革新を起こしている。

現状維持という言葉は好きじゃない。
海上もこなせる真の総合解体企業として、
常に環境への負荷低減を念頭に置きながら、革新をもたらしたいと思っています

代表取締役 古澤成憲さん

船舶解体からプラント解体へ新たなフィールドに挑戦

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ジブクレーンの解体に従事するSL6000J。パワフルなつり上げ能力は、重量物でも安定した作業を可能にする

株式会社フルサワは1960年の創業以来、船舶解体専門企業として大きな発展を遂げてきた。20世紀後半になると、船舶業界は国際化が進むと予見し、これまでに蓄積してきた技術・ノウハウを活かして、大型プラントなどの陸上総合解体にも注力していく。代表取締役の古澤成憲さんは、陸上解体の現場を見て「今までのノウハウを活かせるのはこれだ!」と確信し、施工計画書を独学で学び始めたという。

最初の大きな仕事は80mの蒸留塔解体。競合業者が提案した施工計画は、蒸留塔の外周に足場を組んで外側から溶断する従来工法と同一のものだった。一方、フルサワは蒸留塔の点検口から内部に入り、既設トレイを利用してガス溶断を行い、さらにクレーンでのつり作業を組み合わせる、新たな施工計画を提案。切断時に内壁の断熱材は蒸留塔内にとどまり、周囲に落下しない安全面での工夫も盛り込んだその計画は、外部足場を組む必要がなく、工期を大幅に短縮できる。そうした点がクライアントから評価され、初めての大型案件を獲得した。同社ではこの画期的な施工計画により、45日という短期間で蒸留塔解体を完了させた。

船舶解体のノウハウを陸上解体の実績に変えたフルサワでは、この工事をきっかけに、競合案件が10件あれば9件は勝つという驚異の勝率で仕事を獲得。そのすべてでこれまでにない新たな施工計画を生み出し、陸上解体においても技術革新を実現している。

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ジブクレーンの解体でもガス溶断は欠かせない。「船舶解体で培ってきたガス溶断の高度な技術は当社の自慢です」(古澤社長)

独自の施工計画を実現すべくSL6000Jを導入

フルサワのプラント解体の強みは、独自の施工計画でより安全かつ効率的、さらには短工期の工事を可能にすること。そのアイデアを生み出すのが古澤社長なら、それを現場のスタッフに説明し、実際の工事で指揮を執るのが常務取締役の古澤公憲さんだ。

「どの業者もやっていない方法で施工することが多いので、詳細な重量計算をして図面を起こすなど、管理者にとっての“当たり前”を現場でしっかり共有するよう心がけています。現場スタッフに“これならできる”と自信を持ってもらうことが重要です」

常に新たな解体工法を模索し、現場で実践しているフルサワでは、現在も大型プラント案件の解体工事が進行中だ。千葉県にある造船所のプラント解体現場では、高さ80m、全長170mにおよぶゴライアスクレーンの解体が計画されている。通常は、大型船舶に設けられた海上クレーンを使い解体工事を行うが、同社が提案した施工計画はコスト削減につながる陸上からの解体。耐荷重計算を事前に行い、ゴライアスクレーン専用の架台を海上から運び込む斬新な方法だ。

「切断するブロックごとにクレーンでつりながらガスで切っていく計画ですが、大きな構造物なので、当社が保有するクレーンでは高さもパワーも足りない。そこで、2022年4月に導入したのがコベルコ建機の超大型クローラクレーンSL6000Jです」(古澤社長)

SL6000Jが活躍する造船所の現場を訪れると、工場内のジブクレーンを解体する真っ最中だった。SL6000Jのオペレータ、山原耕二さんが対峙するジブクレーンはかなり大きい。ゴライアスクレーンの解体に備えSL6000Jとの相性を確認しているようにも見えた。

「コベルコのクローラクレーンはいろいろなクラスのものに乗りましたが、旋回がスムーズという印象があります。SL6000Jもその点はやはり同様で、スピードを出してもぶれずに操作できるのがいいですね」(山原さん)

さらに、SL6000Jなら、ブレーキをフリーにした瞬間につっているものの重みで機体が傾いたりする心配がなく、これならより大きなゴライアスクレーンの解体時も安心して作業できるはずと語ってくれた。

「解体は、仕事のカタチが残らないので、カーテンコールを受けることが仕事のやりがいに通じる」と古澤社長。解体工事の技術革新を進めるフルサワが超大型クローラクレーンのSL6000Jを手に入れた今、お客様からのアンコールはこれからもやむことはないだろう。

※移動式の門型クレ一ンの一種で、揚重能力やスパンが非常に大きなものをいう。プレキャストコンクリート部材の製造工場や造船所などで使用される。

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常務取締役・古澤公憲さん

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SL6000Jのオペレータ、山原耕二さんは入社25年。フルサワでクレーン免許を取った生え抜きだ

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フルサワでは再資源化を目指した解体業をモットーに、現場から出たスクラップなどの廃材を所有する船で自ら運搬。材質ごとに自社工場でリサイクルする

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ゴライアスクレーンの施工計画をカタチにした模型。これをもとに自社スタッフへ概要を説明しつつ、現場の担当者の意見も聞き、施工計画を完成させる

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解体が予定されているゴライアスクレーン。同様のものが3基あり、これらの解体がこの造船所における現場のハイライトだ

今回の訪問先は矢印

株式会社フルサワ
本社所在地/広島県江田島市江田島町秋月4丁目10-9
tel 0823-42-1602
山田高弘= 取材・文 三浦泰章= 撮影 text by Takahiro Yamada/photographs by Yasuaki Miura