コベルコ建設機械ニュース

Vol.258Nov.2022

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特集未曾有の変化に応える創意工夫を追求

新社長就任

PREMIUM TALK

コベルコ建機代表取締役社長 山本 明×フリーアナウンサー 馬場 典子さん

未曾有の変化に応える
創意工夫を追求

2022年6月、コベルコ建機の新たな代表取締役社長に
山本明が就任いたしました。
社会変化がますます加速度的に進む時代、
社会インフラ整備に不可欠な建設機械メーカとして、
コベルコ建機が担うべきミッションは一層重大になっています。
そんな状況下で、舵を取る新社長の基本姿勢や戦略について、
フリーアナウンサーの馬場典子さんがインタビューしました。

コベルコ建機 代表取締役社長

山本 明

1987年大阪大学大学院工学研究科金属材料工学専攻修士課程修了。同年4月、株式会社神戸製鋼所に入社し、溶接事業部門企画管理部長兼溶接事業部門企画管理部システム室長などを歴任。2015年4月、同執行役員、17年4月、同常務執行役員、20年4月、同専務執行役員を経て、22年6月、コベルコ建機株式会社 代表取締役社長に就任

コベルコ建機代表取締役社長 山本 明

フリーアナウンサー

馬場 典子さん

1997年早稲田大学商学部卒業。同年、日本テレビにアナウンサーとして入社し、局を代表する数々の番組のレギュラー司会など、報道からバラエティ、スポーツまで幅広く担当。2014年に日本テレビを退社し、フリーアナウンサーとして活躍中。15年4月より大阪芸術大学放送学科アナウンスコース教授

フリーアナウンサー 馬場 典子さん

知見やノウハウを総動員した
高品質なソリューション提供を

馬場:
ご就任おめでとうございます。早速ですが、新社長として大切にしておられるものはなんですか。
山本:
就任直後から、国内の製造現場をまわってきました。製造業の基本は現場ですから、現場のマインドを大切に、より働きやすい環境づくりを進めていきたいのです。同様に、コベルコ建機のお客様の事業基盤も現場にあります。そんな現場の声に耳を傾け、常に良き伴走者でありたいと考えています。
馬場:
神戸製鋼では長年、溶接事業に携わってこられたそうですが、その経験や知見は、コベルコ建機の中でどのように活きてくるのでしょうか。
山本:
建設現場では、例えばH形鋼や角パイプ、鋼板、鉄筋などを溶接することが多く、それが建造物の強度を左右する大きな要素にもなっています。ここでも、神戸製鋼で育んできた知見が、役に立てられるかもしれません。さらに溶接のみならず、神戸製鋼が長年培ってきた多くの知見やノウハウを、お客様の現場のお悩みを解決するソリューションとしてご提供していきたいと考えています。建機や土木建設の周辺情報はもちろん、より広範なソリューションによって、お客様の施工精度や生産性の向上、効率的な経営を支援することができ。それこそが、コベルコ建機ならではの強みであり、高付加価値戦略の要であると自負しています。
馬場:
今後さらに優れた製品に有益なソリューションを添えてご提供していきたい、ということですね。
山本:
その通りです。私たちの経営の柱となるのは品質です。ここで言う品質とは、製品と企業姿勢の双方に貫かれた確かな価値の基軸です。優れた製品や価値のあるソリューションの提供と同時に、社員一人ひとりが日々責任をもって行動することで、「社会に必要とされる企業」としての質と品格を磨いていきたいのです。

ICT戦略への取り組みが
次代を制す

馬場:
変化が著しい時代の中で、お客様から求められる価値もめまぐるしく移り変わっていきますね。
山本:
コロナ禍、気候変動とそれに起因する環境破壊、世界のパワーバランスの変化など、私たちはまさに未曾有の事態に直面しています。こうした局面では、常に「何が求められているのか」という優先順位を意識した対応が大切です。いまや、一社のリソースだけで変化が激しい時代のニーズにすべてお応えすることは困難です。サプライヤーや協力会社、さらに独自技術を有する広範な企業群とのアライアンスを深め、モノづくりから販売、維持管理・サポートまでを一気通貫させた、バリューチェーン全体をカバーする新たなパートナーシップの強化を進めていきます。
馬場:
建設業界でも、時間外労働の上限規制の適用など、働き方改革に向かう「2024年問題」が大きな課題となっていますね。
山本:
ご指摘のように「人材不足」と「長時間労働」が、建設業界の大きな課題でした。この問題へのソリューションとしては、DXやロボット、AIなどのICT活用が重要なポイントとなるでしょう。いずれにしても、その核となるキーワードは、「楽に、楽しく働くことができる環境整備」だと思います。
馬場:
たしかに情報化は、高齢化の進行による人材不足対策、技術承継などの課題に大きな福音をもたらしてくれそうですね。
山本:
少子高齢化が加速する中で、今後さらに女性や外国の方の活躍への期待も膨らんでいきます。ここでは、直感的なインターフェースや操作性のもとに、より楽に誰もが高精度で安全な施工を実現できる環境整備が重要なポイントです。一度ショベルの操縦席にお座りいただければ分かると思いますが、レバーやペダル類がたくさん並んでいて、それだけでかなり悩ましく、敷居が高くて近づき難い(笑)。そこで当社は2017年、簡単なワンレバーの操作だけで、3次元データに沿って設計面通りの正確な施工を実現する3Dマシンコントロール「ホルナビ+PLUS」をリリースしました。熟練オペレータの操作技術がワンレバーで実現するので、新人教育期間や実戦力化のリードタイムが大幅に圧縮されます。さらに、ベテランの方にお使いいただければ、一層の工期短縮などが望めます。

DX構想が着々と新機能に結実

馬場:
工事の効率化や省力化もさることながら、安全性の確保は非常に重要な要素ですね。
山本:
はい。現場で何よりも優先されるべきは「安全」なんです。建設事故の約6割は「挟まれ」と「轢かれ」です。そこでコベルコ建機は17年に、業界に先駆けて衝突軽減システム「K-EYE PRO」をリリースしました。これは、ショベル周辺で人や障害物を検知すると、機械が自動で減速・停止するという画期的な新技術です。
馬場:
とはいえ、大規模公共工事ではICT活用がすでに9割以上の割合で普及している一方で、施工規模が小さな案件ではまだ実施率が低いと伺っています。実際は、小さな案件を担う会社ほど人手不足がより切実で、ICT化が必要な気もしますが……。
山本:
その通りです。だからこそ、ICTの恩恵を享受していただきたいのです。ところが、「ICT導入を牽引する人材がいない」「初期投資の負荷が大きい」といった事情が、取り組みへのネックになっていることが多いのです。そこで、まず着手できるところから始めて、企業の成長に合わせて徐々に拡大を図る姿勢を意識していただきたいと思います。そんなロードマップ策定においても、私たちがお客様ごとにベストなソリューションをご提供していきたいと思います。自社の実状や経営計画に即しながら、できるだけ早期に、柔軟な導入を図っていただきたいですね。
馬場:
先ほど女性の活躍への期待というお話が出ました。現場のロケーションに縛られることなく、居ながらにして各現場での施工が可能となる「建設現場のテレワーク化」も、働き方改革を大きく加速させてくれるものだと思います。育児や介護など、現場に出向くことができない事情をお持ちの方にも活躍の機会が広がるのは魅力的ですね。
山本:
テレワークの支援策としては、油圧ショベルの遠隔操作システム「K-DIVE®」を、22年度下期に市場投入予定です。建設現場のテレワーク化は、現場間移動などに多くの時間や労力を割かれていた人たちの働き方や、生活パターンを大きく変えてくれます。また馬場さんがおっしゃったように、建設現場で働くことができなかった多様な人たちにも門戸を開き、活力ある人材活用の実現を後押しします。さらに現場を無人化することによって、根本的な安全確保もできます。
馬場:
一方、ショベルに比べてクレーンはICT化が難しいと聞きますが……。
山本:
生産性向上を狙い国土交通省が2025年度までにBIMを活用した3D施工計画を必須化しました。建築現場ではクレーンが活躍していますが、BIMでクレーンの施工計画を行うにあたり生産性を上げる仕組みが存在していませんでした。しかし当社は、建機メーカの強みを活かし「K-D2 PLANNER®」を販売しました。これは、煩雑な3Dモデルの入力作業を介さず、マウスでクレーンの位置やつり荷の位置を指定するだけで、クレーンの姿勢を反映するシミュレーションが実現でき、スムーズなクレーン施工計画策定を支援するシステムです。

ICT化を促進させるコベルコ建機の取り組み

  • K-DIVE®

    建設機械の遠隔操作とクラウドマッチングシステムを融合させた「建設現場のテレワーク化」を目指すシステム

  • K-D2 PLANNER®

    クレーン施工計画に貢献する建機メーカならではのアドオン型シミュレーションソフト

全社のパワーを
お客様メリットの追求に集中

馬場:
昨今は製品(モノ)、ソリューション(コト)の提供と併せて、ストックビジネスにも力を入れておられますね。
山本:
生産財である建機が現場で停止することは、工期にも直接影響し、重大な機会損失を招きかねません。そこで、お客様のマシンを遠隔から見つめ、不具合などの兆候を未然にチェックし、さらに稼働時間などからパーツの交換時期をお知らせするなど、大事に至る前の予防保全的な見守りを徹底しています。また、最先端の設備を導入した部品供給拠点、東条パーツロジセンターの本格稼働が始まっています。
十分な在庫のもと、すぐに必要なパーツをお届けする体勢を整えています。
馬場:
お客様へのサービスを言い換えれば、悩みごとへの的確な解答、ということになりそうですね。
山本:
その意味では、お客様のお困りごとはまだまだ潜在しているはずなのです。それらをしっかり捉え、フォローしていくことが私たちの使命だと考えています。それこそが、今後のソリューション形成や開発の源泉でもあるのです。私たちが、今後とも「必要とされる会社」であり続けるためには、日々お客様との接点の最前線を担っている営業担当者やサービス担当者が、現場のリアルな声をどれだけキャッチできるかがとても重要です。
馬場:
社員の皆さんが日々の発見や意見を自由にエスカレーションしやすい社内文化形成や仕組みづくりも、社長の大切なお仕事になりそうですね。
山本:
決して無から生まれるものではなく、潜在化していた情報を顕在化し、相互に組み合わせる中から生まれるものだと思います。だからこそ、お客様メリットの追求を基軸に、組織間の壁を越えた横断的で自由な議論を繰り広げていきたいですね。部門ごとに閉じられがちな情報をつまびらかにして、全体最適の視点で統合していきたいと思っています。さらに、社内の知見資産の透明度や流通性を高め、相互に刺激し合う文化の醸成を進めていきたいですね。今後、働き方改革の進行で生まれるゆとりの時間を「創造」に振り向け、グループ一丸となって、お客様の「より楽で、楽しい仕事環境づくり」のお手伝いをしていきたいと願っております。
馬場:
コベルコ建機から目が離せませんね。今日は貴重なお話をありがとうございました。
  • 太田利之= 取材・文 text by Toshiyuki Ota
  • 三浦伸一= 撮影 photographs by Shinichi Miura