コベルコ建設機械ニュース

Vol.258Nov.2022

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ゼロ災害の実現へ
100年企業の新たな挑戦

福岡県福岡市を拠点に、とび土工工事を中心に多様な工事を手がける中村工業株式会社。2022年に創業117年を迎えた同社の目標は、200年企業を目指すこと。その重要な施策として挙げているのが、現場で事故を起こさないための安全対策だ。ゼロ災害を実現するために、中村工業の安全文化を継承していきたいと代表取締役の中村隆元さんは語る。

福岡県福岡市を拠点に、とび土工工事を中心に多様な工事を手がける中村工業株式会社。2022年に創業117年を迎えた同社の目標は、200年企業を目指すこと。その重要な施策として挙げているのが、現場で事故を起こさないための安全対策だ。ゼロ災害を実現するために、中村工業の安全文化を継承していきたいと代表取締役の中村隆元さんは語る。

自社スタッフによるチームづくりを進め、作業の連携を良くすることが私たちの安全対策。
「そんなに人を増やして大丈夫か」
と言われますが、安全は何ものにも代えられません

代表取締役 中村隆元さん

現場での事故を防止すべく
自社スタッフでの作業にこだわる

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サッカースタジアムのスタンドに使う柱を現場で製造している。取材当日、マスターテック7120Gは型枠や鉄骨を素早くスムーズに運搬していた

中村工業株式会社の創業は、日本が文明開化を迎えた1906年。九州のとび職人たちによるプロフェッショナル集団「中村組」を前身としている。47年には株式会社として法人化。戦後の復興工事にその腕を振るうことになる。福岡銀行本店、岩田屋別館、福岡天神センタービルなど、70年代に建てられ、今でも福岡市内のランドマークとなっている大規模施設の数々も、同社のとび職人たちがその建設に関わった。

現在、中村工業の事業はとび土工工事だけにとどまらない。重機を駆使した解体・基礎工事をはじめ、九州全域のインフラをつくる土木工事、オフィスや商業施設のリニューアル工事、さらには建築部材を工場で製作して現場で組み立てるPC工事にも参入。土木から建築までを一社で手がけられる企業へと成長を遂げている。

中村隆元さんは創業から数えて5代目となる代表取締役。「200年企業の実現を見据え、企業としての石垣を固めるのが自分の使命」と話す。そこで特に力を入れているのが、事故防止のための安全対策の強化だ。安全対策といえば、ミーティングによる注意喚起を徹底するといったアプローチが一般的だが、中村工業はそれに加えて人材採用という施策も重要視している。

「従業員数を現在の約200人から300人まで増やしたいと考えています。その理由は、現場のスタッフを常に自社の従業員で固め、いつも一緒に作業するチームをつくりたいからです。それができれば、あうんの呼吸でチームワークが育まれ、作業がよりスムーズになり、事故リスクの低減も可能。安全性は飛躍的に向上します」(中村さん)

自社スタッフによる工事でより安全な現場づくりを目指す中村工業では、YouTube用の動画を制作して採用業務に活用。また、新人研修時には配属先の希望を何度も申請できる機会を設けて“思っていた仕事と違った”というミスマッチの解消にも取り組むなど、採用活動の活性化と定着率アップに寄与する施策を多彩に展開する。長く安心して働いてもらうことで、同社の安全文化を身につけ、次代へと継承してほしいという想いから、終身雇用にもこだわっているという。

「こうした取り組みを通じて、社員が『自分の子どもを就職させたい』と思える会社を目指しています」(中村さん)

コベルコ製クレーンの高い操作性は
事故防止にも効果的

人材の確保とともに、安全性の向上を目指して中村工業が注力してきた施策の1つが、作業の機械化だ。81年にはクレーンをはじめとする重機を導入し、現場の効率化を推進。その利益を原資に従業員を増員し、自社スタッフによるチームづくりを進めることで、ゼロ災害の実現を目指してきた。

「200人以上の人数を雇用できるのは、重機があるからこそ。機械化は当社の目指す安全対策にとって、大きな一歩でした」(中村さん)

現在、中村工業ではコベルコ建機のクローラクレーンだけでも6台を所有。なかでも一番大きな120tクラスのマスターテック7120Gはサッカースタジアムを中心にアリーナ・オフィス・商業施設・ホテルなどの周辺施設を開発する「長崎スタジアムシティプロジェクト」の建設現場で活躍中だ。

「コベルコ建機のクローラクレーンはとにかく操作しやすいのが魅力です」と話すのは、オペレータの中尾康弘さん。フックの上げ下げや旋回がスムーズで微調整が利く上、イメージ通りにきっちり止められるため、より安全に作業できる点を評価しているという。

「キャブが広く快適なので、ストレスが少ない点も事故の防止に役立っていると思います」(中尾さん)

取材の最後に中村さんから、より事故リスクを回避できるクレーン開発をしてほしいとの要望をいただいた。

「どんなに気をつけていても、人はミスをしてしまうもの。乗用車に装備されている接触防止システムなど、ヒューマンエラーをカバーしてくれる機能を備えたクレーン開発を、コベルコ建機さんには期待したいですね」

このリクエストにどう応えるのか。コベルコの今後の開発プロジェクトから目が離せなくなりそうだ。

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マスターテック7120Gは大規模工事での稼働が多く、20tにおよぶ重量物をつる作業も日常茶飯事だ

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足が伸ばせるほど広いキャブが特長のマスターテック7120G。長く作業しても疲れにくく、オペレータの中尾さんからも好評だ

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中村工業では1980年より高卒者の定期採用を開始。そのため、同業他社と比べて若い従業員が多く、資格取得支援など入社後のキャリアサポートも充実。写真は新入社員研修の様子

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中村工業のスタッフ、販売代理店(株)マルカ福岡支店担当者と本社前にて

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建機に乗りたくて中村工業に入社したという中尾康弘さんは、オペレータ歴25年。「現場では強い風が吹くこともありますが、ブレーキモードを使えば問題なく安全に作業できます」

今回の訪問先は矢印

中村工業株式会社
本社所在地/福岡県福岡市中央区舞鶴3丁目2-6 
tel 092-751-9381
https://nakamura-k.com/
山田高弘= 取材・文 三浦泰章(現場)、中西ゆき乃(代表取締役・人物集合)= 撮影 text by Takahiro Yamada/photographs by Yasuaki Miura, Yukino Nakanishi