コベルコ建設機械ニュース

Vol.260Apr.2023

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“杭抜き”というニッチ市場での
スペシャリストを目指して

有限会社和央興業は、杭抜きをメインに展開する基礎土木業者だ。およそ17年前に杭抜きというニッチな市場に着目して以来、成長のためのスキルアップに努めるとともに、テレスコピッククローラクレーンをいち早く導入するなど、機械力の向上にも注力。現在では、東海エリアにおける杭抜き事業をリードする存在として、その地位を確立している。

京都府北部を中心に、多数の工事実績を積み上げて急成長を遂げている岩鼻工業株式会社。同社では、地元河川の治水工事の受注を契機に、ICT施工を推進している。これにより工事の大幅な効率化と安全性が向上。さらには、社員の労働環境改善まで見据えているという。

TKシリーズの導入で、どんな杭抜き作業でも安全かつ効率的に対応できるという独自のスタイルを確立できました

代表取締役 安藤和央さん

杭抜き現場にいち早くテレスコピッククローラ機を導入

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杭抜き作業に従事するTK750G。TKシリーズならではのコンパクトな機体は、街中での狭い現場に最適だ
写真提供:(有)和央興業

1995年に創業した有限会社和央興業が、長野県から愛知県へと拠点を移転したのは、長野オリンピック終了後のこと。当時、同社は建築現場で足場や鉄骨を組むことを業務としていたが、こうした現場が急激に減少してしまったのだ。

しかし、この移転が和央興業の発展に大きく寄与することになる。移転後は主に矢板の打ち抜きや河川工事に従事していたが、あるお客様から「杭抜きをやってみないか」と相談された。「こちらは未経験なので、そのお客様に聞くしかなかったのですが、ケーシングとオーガで杭のまわりを掘って、あとはワイヤーを掛けて抜くだけだからそう難しくないはずだと言われました。それならやってみようと、チャレンジしたのが杭抜きとの出合いでした」。こう振り返るのは、同社の代表取締役である安藤和央さんだ。

ところが作業が始まるとトラブルの連続。毎日現場からケーシングを持ち帰って改造するなど、「なにかいい方法はないか」と、常に試行錯誤しながら進めたという。

こうした経験を通して杭抜きのノウハウを、まさに一から体得した和央興業は、さまざまな現場から杭抜きの依頼を受けるようになった。現在では東海エリアで杭抜きといえば和央興業といわれるほど業界内での認知度は高く、ほかのエリアの現場から声がかかることもしばしば。その成長の背景には、杭打ちと比べて強力な競争相手の少ないニッチな市場に甘んじることなく、他社との差別化をしっかり図ってきた姿勢がある。その最たるものが、杭抜きといえばホイールのラフテレーンクレーンでの作業が当たり前だった時代に、作業の安全性を考えて移動時の安定感に優れたテレスコピッククローラクレーンを導入したことだ。

「当初はラチスブームのクローラクレーンで作業していましたが、現場での組み立てにスペースと時間を要するため、10年ほど前にテレスコピッククローラクレーンへと切り替えました。そのきっかけが、コベルコ建機のTK750S。伸縮ブームでもこれほどのパワーが出せるのかと驚いたことを覚えています」(安藤さん)

TKシリーズをベースに
さらなる成長への準備は万全

コベルコ建機のTK750Sとの出合いを契機に、その後も毎年約1台ペースでTKシリーズを導入し続けている和央興業。現在、75tクラスと55tクラスを合わせて計6台を所有している。

「パワー、操作性、安定性と、TKシリーズは日本で販売されているテレスコピッククローラクレーンのなかでも最もトータルバランスに優れた機械だと思います」(安藤さん)

現在の主要機であるTK750Gのオペレータとしても活躍する常務取締役の久保貴史さんも、その性能を高く評価する。

「TK750Gは安定性が抜群ですね。物をつった際に機体がふわふわと動く感じがなく、前のめりにならないので安心して作業に集中できます。キャブ左側の視界が開けているので、周囲のスタッフを確認しやすいのも作業の安全性を高めていると思います。さらに、旋回やブームの起伏がとてもスムーズ。杭抜き作業は古いものだと図面がないものもあり、抜いてみないとどんな杭が埋まっているのかが分からないケースがあるため、オペレータには杭打ちよりも繊細な操作が求められます。その点、TK750Gなら指先のレバー操作にもしっかり反応してくれるので助かっています」

昨年、和央興業ではオーガと比べてよりトルクが大きい全周回転掘削機と、そのためのクレーンとしてコベルコ建機のBM1000Gを導入。近年顕著な杭の大口径化にも備えている。また、地上壁の撤去用にマルチドリル機を導入するなど、地中障害物撤去への幅広い対応力も強化。杭抜き業者から地中にあるものすべてを取り除ける企業となるため、ニッチ市場における同業他社との差別化への布石を打ち続けている。

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コベルコのTKシリーズを何台も所有する和央興業には、1つの現場で複数のテレスコピッククローラクレーンが稼働するような大型案件も少なくない。写真には、同社にテレスコピッククローラクレーン導入の先鞭をつけたTK750S(写真奥)の姿も見える

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常務取締役の久保さんは、社長の安藤さんと二人三脚でここまで会社を発展させてきた功労者。現場ではTK750Gのオペレータも兼務している。「その性能とともにデザインの良さも、TKシリーズの魅力です」(久保さん)

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“どんな杭でも抜いてみせる”。杭の大口径化に伴い導入されたコベルコのBM1000Gは、そんな和央興業の信念を体現する1台だ

今回の訪問先は矢印

有限会社和央興業
本社所在地/愛知県日進市三本木町一番割 573-1
tel 0561-74-8522
山田高弘= 取材・文 三浦泰章= 撮影 text by Takahiro Yamada/photographs by Yasuaki Miura