コベルコ建設機械ニュース

Vol.261Aug.2023

menu

ひとクラス上の設備投資で
事業の継続的な発展を促進

1956年の創業以来、海上での杭基礎建設を主事業としてきた株式会社種瀬(たなせ)組。海上での仕事は専門的な技術が必要なことから、同社の設備に対するこだわりは非常に強い。高い能力をもつ機械を自社専用にカスタムして導入し、常に現場の安全性や作業効率の向上に取り組んでいる。

京都府北部を中心に、多数の工事実績を積み上げて急成長を遂げている岩鼻工業株式会社。同社では、地元河川の治水工事の受注を契機に、ICT施工を推進している。これにより工事の大幅な効率化と安全性が向上。さらには、社員の労働環境改善まで見据えているという。

「大は小を兼ねる」をモットーに将来を見据えた設備投資を心がけています

代表取締役 種瀬正康さん

安全、効率、負担軽減という3つの条件を、設備投資で実現

photo

ハーフセップ台船に搭載されたSL6000J-2が、バイブロハンマーと鋼管矢板をつり上げ中。鋼管矢板の径と大きさから、これまで使用していた7350Sよりも余裕をもって作業ができる

現在、株式会社種瀬組が手がける基礎土木事業の比率は、陸上が2割、海上が8割となっている。海上での杭打ち工事が同社の主事業になったきっかけは、創業間もない1959年に発生した伊勢湾台風だ。その復興事業に従事した際、海上での基礎工事を請け負ったことで、種瀬組はその後、海上杭打ちのスペシャリストとしての道を歩むことになる。

「手がける業者が少ないということもあり、海上での仕事が年々増えていったと聞いています」と話すのは、91年に代表取締役に就任した種瀬正康さん。全国より依頼されるさまざまな工事に対応すべく、当時から今に至るまで杭打船などの設備投資を積極的に行ってきたという。

なかでも、種瀬組にとって重要な転機となった設備投資が、96年に完成した第十八御在所号(杭打船兼起重機船)だ。550tという海上では国内最大級のつり能力を誇り、海洋開発や港湾整備といった数々の大型プロジェクトを受注。羽田空港のD滑走路や名古屋港の桟橋、東京ゲートブリッジ、東京オリンピックの会場となった海の森水上競技場など、その稼働現場は枚挙にいとまがない。

第十八御在所号をはじめ、こうした種瀬組の設備投資には大きく3つの目的がある。基礎工事の大型化に伴い、現場の安全性を確保すること。新たな工法への対応などにより作業の効率化を図ること、さらに、オペレータと手元作業員の負担軽減も同社が設備投資に注力する大きな動機の1つだ。

「これらの条件を叶えるため、当社では設備を導入する際、現状で必要とするよりもひとクラス上の能力に着目し、それを選択の基準としています。能力に余裕をもった設備なら、将来に渡ってより長く使用することも可能ですから」(種瀬正康さん)

photo

バイブロハンマーに鋼管矢板をセットし、いよいよ打ち込みへ。本現場では、1週間の工期で計14本を打ち込む予定だ

photo

現場のとりまとめやクライアントとの打ち合わせなどを担う専務の種瀬悠さん。「SL6000J-2は既存機7350Sに比べ遠い場所にも杭を打ち込めるので、競争力の強化につながります」

photo

SL6000J-2のオペレータ、坂下浩一さん。長く搭乗していたコベルコ建機7350Sに比べて、より広いキャブ空間の快適な居住性を評価

コベルコ建機のSL6000J-2を大型化する基礎工事の切り札に

年を経るごとに大型化していく基礎工事。その傾向は、東日本大震災以降になるとさらに顕著になり、使用される杭はより長く、径の大きさも増している。

そうした現状に対応すべく、種瀬組では2023年、コベルコ建機の大型クローラクレーン、SL6000J-2を新たに導入。15年以上活躍しているコベルコ建機の7350Sと比較し、能力アップとなる機械だ。

導入初日、現場である静岡県・清水港の富士見岸壁を訪れると、同機は新造されたハーフセップ台船に搭載され、鋼管矢板の打設による耐震補強工事に従事していた。ハーフセップ台船とは、クローラクレーンを搭載して海上での杭打ち作業などを行うスパット(船上から海底へ突き立てる柱体)付きの台船のことだ。潮流や波風の影響をうけにくいため安定性に優れている。

「SL6000J-2の導入に当たっては、さまざまなカスタム要件をリクエストさせてもらいました」(種瀬正康さん)

例えば、7350S同様にSL6000J-2でもウインチを既存の主巻、補巻に加えて計6個にまで増設している。本現場では、主巻ウインチで振動式杭打機であるバイブロハンマーを、補巻ウインチで鋼管矢板をつって打設。さらに、鋼管矢板のつり込み時にバイブロハンマーが邪魔にならないための引き込み用に第5ウインチを活用していた。

オペレータの坂下浩一さんは、SL6000J-2のつり能力を高く評価してくれた。

「ブームの強度があって良いですね。これならSL6000J-2の余裕のあるつり能力を最大限活かせるのではないでしょうか」

さらに、坂下さんは使い心地も高く評価。重量物に車体を近づけなくても作業半径に余裕をもってつれるため、安心して作業が行えるという。

「こちらのカスタムに関する要望をしっかり聞いて応えてくれますし、オペレータからの評価も上々。今後もクローラクレーンはコベルコ建機にしたいと考えています」と種瀬正康さん。

今後ますます海に映えるブルーグリーンの機体が、全国の海上杭打ちの現場を席巻することになりそうだ。

photo

SL6000J-2の安定感は、坂下オペレータのお墨付き。使用するほどに、作業効率の向上を実感できるという

photo

代表と専務を中央にして事務の皆さんと。左端は販売店・株式会社ヨネイの名古屋支店長、渡部茂さん。種瀬組からのカスタム要件をコベルコ建機に伝達し、種瀬正康さんの思い描く機械作りをサポート

今回の訪問先は矢印

株式会社種瀬組
本社所在地/三重県四日市市貝家町1720番地
tel 059-321-2050
山田高弘= 取材・文 三浦泰章= 撮影 text by Takahiro Yamada/photographs by Yasuaki Miura