コベルコ建設機械ニュース

Vol.263Jan.2024

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特集土木・建設現場で進化するコベルコ建機の安全装置

土木・建設現場で進化するコベルコ建機の安全装置

現場における事故ゼロの実現、それは建機メーカであるコベルコ建機の悲願でもある。
そこで、今回の特集では新たに開発された安全装置やシステムの詳細情報をレポート。
その高度な技術力がもたらす、革新的な安全装置の開発背景や、今後目指す姿などについて絹川秀樹取締役に語ってもらった。

絹川秀樹

取締役 専務執行役員
マーケティング事業本部長
兼 ショベル営業本部長

絹川秀樹

「安全」にかける
コベルコ建機の想い

土木・建設業界における
「安全」面の現状とは

2007年度のいわゆる建設機械による死亡事故のなかでも、ショベルやホイールローダー、ブルドーザーなどの車両3モデルによる事故で亡くなられている方は、痛ましいことですが58名いらっしゃいました。それが、2021年度は28名になるなど、半分とは言えないまでも確実に死亡事故は減少しているという状況ではあります。

その要因は2つあり、1つは現場での安全教育です。施工業者さんやゼネコンさんが現場での安全教育、安全管理を着実にやってこられた結果が、この数字に表れてきたのだと思います。それから、もう1つの要因が建設機械そのものの安全装置が進化したこと。私たちコベルコ建機もそうですが、業界を挙げてショベルなどの安全に関する機能を開発することで、成果を上げてきたという面もあるでしょう。

この2つがあって半減してきたというのが、土木・建設業界における「安全」面の現状です。ただし、半減したといってもまだ28名が亡くなられているというのは厳然たる事実であり、これを当然のことながらゼロにする努力をしていくことが、私たちコベルコ建機に与えられた使命であると考えています。

安全に勝る品質なしとの考えで、
事故防止のための技術開発を推進

現場においては、そもそも安全以上に大事なことはないというのがコベルコ建機の考え方です。現場には工期があり、それに遅れないようにすることは大切ですが、しかし万が一遅れたとしても謝罪して善後策を考えれば済むことなんです。

しかし、事故となるとそうはいきません。人をいてしまって命を落とすようなことがあれば謝っても済まない。だからこそ、工期通り仕上げるために効率化や生産性を上げること以上に、安全性を高める技術開発はコベルコ建機にとってやはり一番大事なことであり、それを最優先でやってきました。

例えば、ショベルに装着する旋回フラッシャーは、業界内でいち早くコベルコ建機が開発した安全装置です。ショベルでは旋回時の巻き込みや挟み込みによる事故の割合が最も多く、それを防止する目的で開発されました。ショベルが旋回していることを光で周囲の人に知らせて注意を促すのですが、これはある程度の抑止力にはなりましたね。ただ、周囲の人に注意を促すというのは、結局のところ人に任せるということ。その人が気づかなかったら挟まれてしまうというのは否めません。

そこで、1996年に登場したのが後方小旋回機です。通常のショベルは車体の後方、お尻部分が長くてクローラの幅よりはみ出していて、それが挟まれ事故や激突事故の原因となっていました。それならば、クローラの幅からはみ出ないようにすればいいのではということで、後方小旋回機を生み出しました。このモデルの登場以降、挟まれ事故というのは劇的に減少しました。

旋回フラッシャー
旋回フラッシャー
後方小旋回機

ICTの進化に伴う最新の取り組み、
そして目指すべき未来について

そのほかにも、走行しているのを知らせるための警報やライト、後方視界を確認できるカメラなど、これまでにいろいろな安全装置を開発してきましたが、やはり後方小旋回機のように機械側で何か対処しなければならないというのが、コベルコ建機の基本的なスタンスです。人の注意力には限界があります。1日8時間、注意し続けながら作業できるかといったら、それはなかなか難しいもの。現場の安全性を画期的に高めるにはそれを大前提としなければならず、人に頼らなくても事故を防止できる工夫や装置の開発が必要だと考えます。

コベルコ建機のそうした考え方をカタチにするべく、私たちがいま注目しているのが、近年になって目覚ましい進化を遂げているICT技術です。当社が2017年、20tクラスのショベル用に開発した現行の「K-EYE PRO」は、先進のICT技術から生まれた衝突軽減システム。そのコンセプトは自動停止です。人や障害物が旋回半径のなかに入ってくると、機械が危険を察知して自動で減速・停止するということを可能にしています。開発を進めている次期K-EYE PROは、より事故率の高い現場で効果が出るようこれまでの経験を活かすとともに、カメラによる画像学習と新技術を駆使し、検知対象を人に特化することで、衝突軽減システムとしての精度を高めています。

  • 山田高弘= 取材・文 text by Takahiro Yamada
  • 三浦泰章= 撮影 photographs by Yasuaki Miura