コベルコ建設機械ニュース

Vol.266Nov.2024

menu

KOBELCO TOPICS SK26SR/SK28SR 開発ストーリー

建設機械としてのパワーを高めて
パフォーマンスの向上を図りつつ、機械の軽量化を実施

開発ストーリー

パワーを向上させつつ
機体重量を軽量化
矛盾する開発要件に果敢に挑む
3tクラス
新型ミニショベル

今回のストーリーは矢印

SK26SR/SK28SR-7
2024年10月、コベルコ建機の3tクラス新型ミニショベルSK26SR-7(以下SK26SR)、SK28SR-7(以下SK28SR)が販売開始された。開発コンセプトの中心に据えられたのが、建設機械としてのパワーを高めてパフォーマンスの向上を図りつつ機械の軽量化を実施。これら矛盾する開発要件の両立を目指した2人のメンバーに話を聞いた。
TK550G
  • 渡辺 裕樹 ショベル開発部
    小型ショベル開発グループ


    1999年に神戸製鋼のグループ会社、神鋼造機に入社し、2006年にコベルコ建機へと転籍。ミニショベルのプロフェッショナルとして、今回の開発プロジェクトでは技術スタッフにおける中心的な役割を果たす

  • 辻 剛平 商品企画部
    小型ショベル商品企画グループ


    2011年入社。次世代のモデル開発の肝となる顧客ニーズを収集・分析し、次世代モデルの開発コンセプトを提案する商品企画を担当。今回の開発プロジェクトでも、そのメインコンセプトである軽量化を打ち出した



搬送規制の法令遵守へ
3tクラスのミニショベルを軽量化

「マーケット情報からお客様に求められているニーズを分析し、その内容を機械に対する要望という形で開発部門に伝えることが私の仕事です。そうして開発スタッフとともに新たなミニショベルをつくり上げていきました」と話すのは、商品企画部の辻剛平だ。


商品企画部による顧客ニーズの分析の結果、本開発プロジェクトにおいて、最大のミッションの1つに位置づけられたのは機械の軽量化だった。というのも、欧州を筆頭に国内でも搬送規制が年々厳しくなっているためだ。今後、規制強化が進むなかで、既存の3tクラスミニショベルでは搬送規制の対象となるケースが増えていくことが懸念される。また、規制によってお客様の機械選定の選択肢が狭くなることを避けるため、既存機種のモデルチェンジとともに新たな決断が必要だった。


「今回の開発プロジェクトでは、お客様のニーズに合わせて、さまざまな仕様を選択いただいても搬送規制に対応するよう、3tを超過しないモデルを用意する必要があると考えました。そこで、3tクラスのミニショベルのラインナップとしてSK26SRというこれまでにない新機種の開発も、SK28SRのモデルチェンジとともに進めることにしました」

photo

内装品質を高め、キャブ空間の快適性を追求することで、オペレータのパフォーマンス向上に貢献

強度を保ちながら
各パーツの軽量化を図る

今回の開発では搭載するエンジンをより大きなものへと変更し、建設機械としてのパワーを高めることも要件とされていた。それだけでも旧モデルより重くなる。新たに開発に着手したSK26SRでは、そうしたプラス分の重量も計算に入れて軽量化を実現しなければならなかったのだ。


モデルチェンジするSK28SRの設計から始めて、それをベースにSK26SRの軽量化を目指したとショベル開発部の渡辺裕樹は話す。商品企画部の示したショベルに対する顧客ニーズを受け、それを実際に機械へと落とし込むのが彼の担うミッションだ。


「SK28SRをベースに設計されたSK26SRの重量は、想定したものより大きくオーバーしていました。そこで、機体のアッパーフレームからロアーフレーム、ドーザ、アタッチメントに至るまで、サイズ変更などを通じてあらゆるパーツの軽量化に取り組みました」


ただやみくもに軽量化を進めればよいというわけではない。強度といったスペックはしっかり守らなければ、建設機械としての体を成さなくなってしまう。そのため、軽量化に際して強度に問題はないかをしっかりと確認するために、試作機でのテストにフレーム部に特化した強度評価という工程を新たに設けてリスクを回避。機械としての耐久性や安全性には万全を期した。完成したSK26SRは、キャブ仕様を含めて3tクラスのトラックによる搬送が可能となる重量を実現。当初からの開発要件を見事にクリアした機械となった。

photo

コベルコ建機独創の軽量化技術を駆使し、各パーツの軽量化を追求。SK26SRでは、キャブ仕様でも3tトラックに積載できる質量を実現している

エンジン出力を高め、
ユーザメリットの向上を実現

今回の開発プロジェクトでは、3tクラスにおける軽量化モデル、SK26SRの開発に加え、旧型機からのレベルアップについても多様な面で追求している。なかでも重要視されたのが、前述したエンジンの大型化だ。


「従来エンジンの出力をもっと高めてほしいというユーザからの要望に応える形で、3tクラスのショベルに載せられる最大出力のエンジンを搭載しています。これは上位モデルと同等の能力を有するエンジンであるため、固い岩盤の掘削や坂道走行時などポンプに負荷がかかる場面でも、安定した作業ができるようになりました」(辻)


さらに、エンジンの制御システムが、従来の機械式から電子制御のエンジンに変わったという点も大きく進化したポイントだ。それによって得られる恩恵は2つある。1つ目が、オートデセルという、機械が動作していない状態の時に自動でエンジン回転数を低回転に落とす機能を付与できたこと。低燃費につながるとともに、騒音・排出ガスの低減も可能になった。そして、もう1つがダイヤル式のアクセルレバーを採用できたことだ。これにより、ユーザは作業ごとにマッチしたエンジンの回転数を常に選択できるようになり、仕事のさらなる効率化を促進できる。


内装品の見直しも今回のモデルチェンジでは見逃せない。“Performance X Design”のコンセプトにもとづく上質感あふれるキャブ空間を演出。また、エアコンの吹き出し口を増やし、オペレータの全身を包み込むように配置することで、夏場や冬場にも快適な作業環境を実現している。


すでに欧州市場などで販売され、海外ユーザから高い評価を得ているSK26SRとSK28SR。国内では2024年10月より販売がスタートしたばかりで、その評価はまだこれからだが、搬送規制への対応やパフォーマンスの向上など、まさにコベルコ建機の企業理念である「ユーザー現場主義」を体現するかのようにバージョンアップされた新型機は、国内ユーザからも必ずや受け入れられるはずだ。

photo

エンジンから内装まで、新しく生まれ変わったSK28SRも同時に販売開始

山田高弘= 取材・文 text by Takahiro Yamada