コベルコ建設機械ニュース

Vol.241Jul.2018

menu

特集ICT建機黎明期、コベルコ建機はどう動く?
コベルコ製ICT建機 導入事例

施工品質と安全性を高め、
工期の大幅短縮も達成する
ホルナビ搭載機の実力

国の推奨するICT施工が本格化し、ICT建機の導入を決断する
土木・建設業者が全国各地で増加し始めている。
そんななか、コベルコ製のICT建機は
現場に何をもたらしているのか。
ホルナビシリーズを活用するお客様を訪問し、
その導入背景と現場評を伺った。

ICT建機の導入概要

導入のきっかけは?

コベルコ展示会での紹介。
他者の稼働現場で活躍を
みて以降、積極的に導入。

導入以前の印象は?

中小企業がICT建機を活用できるのか。また、施工精度にも不安があった。

使ってみた感想は?

誰でも、どんな現場でも、スピード&生産性が向上できた。

一番のメリットは?

人員の削減。既存スタッフで多くの仕事ができ、事故リスクも低減した。

今回の訪問先は矢印

株式会社森賀建設
愛媛県新居浜市萩生1306-1 tel0897-41-6610

導入したICT建機矢印

3DMG 2DMG 3DMG
愛媛県新居浜市を拠点に土木工事業を手がける株式会社森賀建設では、
施工のICT化を積極的に推進し、現場の生産性向上で大きな成果を上げている。

さらなる成長への起爆剤としてICT施工に着手

photo

森賀建設の代表取締役、森賀貞和さん。
「導入コストは必要ですが、ICT建機による施工なら工費全体を抑えることができます。
自社にノウハウを残す意味でも、導入したことは正解ですね」

「まさかこんなに多くのICT建機を使うことになるとは思ってもいませんでした」。こう話すのは、代表取締役の森賀貞和さんだ。初めてICT建機を導入したのは約4年前。コベルコの展示会に訪れた際に紹介されたことを契機に、目標までの距離をディスプレイにリアルタイムで表示するホルナビ2Dマシンガイダンスを、補助金を利用して購入した。ただ、導入後はしばらく利用機会が少なかったという。そんな状況ながらも1年半前から、同社では3D設計データを活用して重機や刃先の位置をコントロールパネルに表示しながら掘削作業を大幅に効率化するホルナビ3Dマシンガイダンス搭載機を、次々に導入していった。
「その理由は、ICT施工を行う九州の同業者の現場を見学し、優れた生産性に衝撃を受けたからです。正直、実物を見るまでは九州まで来たものの、どう断ろうか考えていました。それが一転、帰りの空港ではすぐに見積もりを依頼していました」(森賀社長)  ホルナビ3Dマシンガイダンス搭載機導入後の初めての現場では、図面通りの高さになっているか、システムへの不安もあり、施工後に目視で確認しながら作業したという。
「結果として仕上がりは完璧でした。手元作業のスタッフによる確認も不要になり、効率的に仕事ができるようになったと、オペレータからの評判も上々でした」(森賀社長)
 さらに、アームレバー操作だけでブーム・アーム・バケットの複合操作を半自動的に行うホルナビ3Dマシンコントロール搭載機も採り入れ、将来を見据えたICT施工対応の強化を図っている。
「当社ではもともと施工スピードには自信を持っていましたが、ICT建機導入後は、丁張り設置や施工後のチェックといった作業が不要になったことで、従来の3分の1、なかには5分の1まで工期を短縮できた現場もあります」(森賀社長)

- コベルコ製ICT建機の導入で -

コベルコ製ICT建機の導入で
岩手県一関市の水門建設工事現場。基礎杭の間を縫いながら掘削する高難度の作業が求められるが、ホルナビのガイダンス&コントロールで、容易かつ正確に施工ができている 岩手県一関市の水門建設工事現場。基礎杭の間を縫いながら掘削する高難度の作業が求められるが、ホルナビのガイダンス&コントロールで、容易かつ正確に施工ができている

ICT建機による施工力強化で受注案件は全国規模に拡大

photo

オペレータ歴3年の松本弘樹さんは、コベルコ製ICT建機を高く評価。「丁張り設置などの付帯作業がなくなったことで、疲労感も軽減できています」

ICT建機は営業面でも大きな効果をもたらしている。通常は、オペレータのレベルにより対応できる仕事の範囲は限られてしまうもの。しかし、誰もが熟練オペレータ並みの精度とスピードで作業ができるICT建機の導入で、どんな案件も逃さず受注できるようになったという。また、省人化もできるため、既存の人員でも全国各地の仕事を請け負うことが可能になり、人件費削減効果が表れているという。
 実際、森賀建設は、愛媛県から遠く離れた岩手県一関市での水門建設工事にも参加し、基礎杭を打った後の土砂の掘削を担当。ここでもコベルコ製のICT建機が、通常の3~4割増しの生産性向上に貢献している。そのほかにも、化学プラントの造成工事から火力発電所の基礎工事、ダムの河床掘削、ソーラーパネル設置に伴う整地作業まで、ICT建機の導入が数々の受注実績をもたらしている。
 加えて、「2018年からは、愛媛県が発注する公共事業においても、ICT施工を条件とする仕事に予算が付き、さまざまな案件が発生する見通し」だと森賀社長は語る。実は、森賀建設では以前から、愛媛県の職員に対してICT施工の講習会を実施していた。その成果が、県の行政にも影響を与えたのだ。

今後はICT施工のスペシャリストを目指す

さて、コベルコのICT建機について、実際に搭乗するオペレータはどんなメリットを感じているのだろう。オペレータ歴3年の松本弘樹さんはこう語る。
「私は転職してオペレータになりました。ですので年齢的にはベテランではあるものの経験が浅く、技術的な不安を抱えていました。しかし、ホルナビ3Dマシンコントロール搭載機を使えば、私のように経験の浅いオペレータでも技術的な面をカバーでき、同時にこれまでの倍以上のスピードで速やかに作業ができるようになります。コベルコのICT建機のおかげで、今では何の不安もなく現場での作業ができるようになりました」
 さらに、松本さんはICT建機の安全面における効果にも言及する。
「手元作業のスタッフや丁張り設置などが不要になり、機械と人、機械と物との接触事故の危険は確実に減少するはずです。また、現場から障害物がなくなったことで、現場内を建機が移動しやすくなり、さらなる作業効率化をもたらしています」
 現在、森賀建設では、ホルナビ3Dマシンガイダンスを搭載したSK500Dが1台とSK135SRが2台、さらにホルナビ3Dマシンコントロール搭載の20tクラスの機械が3台稼働している。
「新たにSK480の3Dマシンガイダンス搭載機の導入を決定し、今後はノーマルタイプのショベルも徐々にICT建機へと入れ替えていく予定です」と話すのは、専務取締役の森賀立哉さん。当初、ICT施工には懐疑的で、「当社のような中小企業にICT建機で施工するような大型案件があるのか」と感じていたという。しかし実際に導入すると、規模の大小にかかわらず現場の効率化に威力を発揮。誰もが作業を容易に行えるため、オペレータ採用時のハードルが下がり、人材不足の解消にも役立っている。
「前職では解体作業をしていた新人オペレータが、ICT建機のおかげで土木の現場でも即戦力となりました。すでに彼は、当社では欠かせない人材として活躍しています」(森賀専務)
 森賀建設では近い将来、すべての仕事をICT施工にする体制構築を目指している。現在、それに用いる3D設計データは森賀社長が自ら作成している。今後は現場スタッフにもノウハウを共有し、ICT施工技術の蓄積にも努めていく予定だという。
photo

専務取締役の森賀立哉さん。「コベルコのICT建機による省人化は、現場の安全性向上にも貢献しており、事故が防げることで元請け業者からの評価アップにもつながっています」 

photo photo

ICT施工に欠かせない3D設計データ。データの作成は、現場を知る人間が作るべきという考えから、森賀社長は独学でその作成法を学んだという

山田高弘= 取材・文 三浦伸一(表紙・P7-9)= 撮影 text by Takahiro Yamada /photographs by Yasuaki Miura,Shinichi Miura