コベルコ建設機械ニュース

Vol.241Jul.2018

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特集

ICT建機黎明期、
コベルコ建機はどう動く?

土木・建設業界を取り巻くICT化の波。
その現状と未来の予測について、IT活用による
建設産業の成長戦略を追求する
建設ITジャーナリスト、家入龍太氏が解説する

向こう30年間で2,100万人もの人口が減るとの予測もある日本。
すでに人手不足の波が押し寄せる土木・建設業界では、現場の生産性向上が喫緊の課題となっている。
その切り札として期待されるのが、あらゆるモノがネットにつながるIoTを駆使したICT建機。
国を挙げてその導入を促進する現在、コベルコ建機はどんな未来予想図を描いているのか。
現場の今とその実現に向けた具体的な取り組みを伝える。

労働人口の減少と生産力拡大の狭間で進む「i-Construction」

バブル崩壊後の土木・建設業界では、建設投資が縮小するなかでも、労働力過剰状態が続いてきた。その結果、現場の生産性向上への努力が後回しとなり、他業界よりICT化が遅れた業界だといわれている。もちろん、仕事の属人性が高く、特に土木分野では地形など現場ごとに条件が異なるため、ICTへの適応自体が難しかった面もある。
 とはいえ、熟練技能者の高齢化に伴う離職が始まり、若者の入職が少ないという状況から人手不足は深刻化。2014年に約340万人いた建設技能労働者数が、25年には約210万人に減少するとの試算もある。さらに、20年の東京五輪に向けた建設需要が高まるなかで、少ない労働人口でより大きな生産性を生み出す必要もでてきた。
 そこで国土交通省は16年から「ICT(情報化)施工」を建設現場に導入し、現場の生産性革命を推進する「i-Construction(アイ・コンストラクション)」の取り組みを始めている。
 ICTの積極活用で建設現場の生産性を向上させるとともに、安全性アップや経営改善、労働環境の見直しなどを急ピッチで進め、“新3K(給与がよい、休暇がとれる、希望がもてる)”と称した魅力ある現場の実現を目指している。

すでに3Dデータを活用したICT施工は普及しつつある

「i-Construction」で注力しているのが、土木工事の全工程(測量、設計・施工計画、施工、検査)における3Dデータの活用だ。従来は、人の手によって測量した情報から紙ベースの設計図を作成。丁張りに合わせて施工し、検測と施工を繰り返しながら整形を行っていた。検査にも大量の書類を要するなど、とにかく人手と時間と手間がかかっていた。
 だが、測量や設計データなど工事に必要な情報を3D化することで、事前にトラブルの芽を摘んだり、解決ポイントを探るなど実現場で生じ得る障害への対応が図れるようになった。加えて、施工の効率化と迅速化、精度アップと安全確保も可能になる。実際、BIM(Building Information Modeling)やCIM(Construction Information Modeling)など、各工程間で同じ3Dデータを共有・活用する動きはすでに本格化。ドローンや3Dレーザースキャナなどによる点群データで、現場の詳細な形状を3Dデータ化し、施工前に仮想的な現場環境を構築するといった技術を用いる動きも始まっている。

ICTのパワーを借りて今ある強みに新たな価値を

ICT施工の普及とともに、それに関するガイドライン策定や、積算基準・発注方式の見直しなど、「i-Construction」における取り組みは、当初の予定より前倒しで進んでいる。その一方で、技術は日進月歩で発展。こうしたICT化の波は今後、リサイクル業や林業といった土木工事以外の現場、またクレーンなどのマシンにも波及していき、最終的にはあらゆる施工の自動化を実現することも、もはや夢物語ではないといえる。
 ただ、現場では高い安全性や精度が求められ、少なくない投資も要するため、とりわけ中小企業においてはこれが一足飛びに実用レベルに達するとは考えにくい。そうであれば「まだ必要ないだろう」と思う人も少なくないだろうが、今後は特に公共工事などの入札でICT施工が条件となり、ICT仕様の法整備も進んでいく見込みだ。そのなかで“バスに乗り遅れる”ことのないよう、極力早い時期からできる範囲でのICT化を考えておく必要がある。
 また昨今、ITが本業の企業が自動車業界に積極的にかかわり始めたように、今後はICTを武器に異業種から土木・建設業に新規参入するケースも予想される。
 しかし、深い知見とノウハウが求められるこの業界では、道具が揃ってもすぐに仕事はできない。そこにはこれまで現場の第一線を担い、培ってきた確かな「先行者のメリット」があり、それとICTを併せたシナジー効果が、最大の武器となる。
 そもそも現場のICT化には“夢がある”ということを忘れないでほしい。少ない人手で生産性が上がれば休日が増え、給与アップにもつながる。さらに遠隔操作や自動運転が普及すれば、自宅勤務も可能になるだろう。ICTは現場が抱えるさまざまな課題を解決し、理想を叶えてくれる存在なのだ。

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これから現場はどう変わる!?
ICT施工ロードマップ

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家入龍太= 監修 太田利之= 文 スタジオ スパロウ= イラストsupervision by Ryuta Ieiri /text by Toshiyuki Ota /illustration by Studiosparrow