コベルコ建設機械ニュース

Vol.241Jul.2018

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裁量を与えて
働きがいを向上。
人材不足時代の
現場のあり方とは?

建機を活用する業界・企業において、「人材不足」は大きな経営課題だ。
愛知県の東三河エリアで、海運業を中心とする多彩な事業を手がける愛知海運産業株式会社では、社員の定着率を高める施策を通じてそうした問題に対処。人材不足を回避して事業規模の拡大に成功している。

建機を活用する業界・企業において、「人材不足」は大きな経営課題だ。
愛知県の東三河エリアで、海運業を中心とする多彩な事業を手がける愛知海運産業株式会社では、社員の定着率を高める施策を通じてそうした問題に対処。人材不足を回避して事業規模の拡大に成功している。

“人が財産”という信念のもと、
社員がここで働き続けたいと思える
環境づくりに注力しています

代表取締役社長 山田俊郎さん

社員の定着率を高めるべく
未経験者をイチから育成

 愛知海運産業株式会社は、海運・燃料・建設・部品製缶・レジャー開発の5分野20事業を展開する複合型企業だ。1950年の創業時より、三河湾沿岸部への企業誘致や国際コンテナ航路の開拓など、東三河エリアの発展に貢献するとともに自らの事業を拡大してきた。主力事業である港湾運送業では、自動車輸出額で全国2位、輸入額で25年連続1位を達成している三河港において、わが国が誇る世界的な自動車メーカの完成車船積業務を担当している。さらに、すべての港湾作業に必要な事業免許を取得。沿岸部に工場を構える国内有数の大企業の荷役業務、国際海上コンテナのオペレーション業務など、三河港における港湾サービスのほぼ全域に携わっている。
 こうした多角経営が特色である愛知海運産業には、もう1つの特色がある。それが社員の定着率の高さだ。同社には長く働き続けている社員が多く、昨今叫ばれている人材不足の問題とは無縁。代表取締役社長の山田俊郎さんいわく、「その理由の1つとして挙げられるのが、未経験者をイチから育てるという採用方針にこだわっていること」だという。
「当社は専門性の高い知識を必要とする仕事が多いため、経験者を中途採用するほうが合理的です。ただ、愛情をもって新人を一人前になるまでしっかりと教育することで、社員にも仕事を覚える過程で会社への愛着が芽生えます。その結果、社歴の長い人材を多く生み出しているのでしょう」(山田さん)
 採用した未経験の新人に対しては、ベテラン社員がマンツーマンで指導。師弟関係にも似た手厚いサポート体制のもと、積極的に責任ある仕事を任せながら着実に主力へと脱皮させる育成を行っている。
「それでも退職を希望する社員はいるのですが、その場合も採用時と同様に私が自ら面談をして退職理由を確認。より多くの人材が長く働きたいと思う理想の職場環境づくりの指針として、今後の改善に役立てています」(山田さん)

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クレーン業務を担当するオペレータの小林弘幸さん(左)、牧野幹生さん(中央)、中神純一さん(右)。三者ともに愛知海運産業でクレーン免許を取得し、先輩オペレータからマンツーマンで指導を受けたという生え抜きだ

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幅広い年齢構成の愛知海運産業の社員の方々。若者からベテランまでバランス良く整った組織力で、今後のさらなる成長を目指す。写真後列の左端はコベルコ建機の四方、その隣は代理店である株式会社ヨネイの河合秀泰さん

やりがいある仕事で未来に向けた
人づくりを実践

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 現場の意見が通りやすい社風も、愛知海運産業の社員の定着率の高さを語る上では欠かせない。港湾荷役のセクションで活躍する入社36年目のクレーンオペレータ、中神純一さんによると、荷役に使われるクレーンの選定は現場に一任されているという。 「2017年3月に、鉄スクラップの船積作業用にコベルコのクローラクレーンBM800G-2を導入しました。以前はMK500を使用していたのですが、私は同時に稼働していたBM700HDの湿式ディスクブレーキの感覚が気に入っていました。その後継機であるBM800G-2をMK500との入替機種として希望したところ、私の意見を尊重してくれました」(中神さん)
 従来型では、1日中乗るとブレーキを踏む足の膝がガクガクになるほど疲れてしまったという。しかし、湿式ディスクブレーキなら踏み込む力は従来の7割程度で済むため、オペレータの疲労が軽減された。こうした実績もあり、18年にも現場の希望により2年連続で2台目のBM800G-2を導入している。
 現在、三河港ではバイオマス発電所の建設構想があり、愛知海運産業では発電事業者や自治体と協力して、その実現を目指している。結実すれば、原料となる木くずなどの荷が港に集まることで、コベルコ製クレーンの新たな活躍の場が広がり、地元の長期的な雇用創出にもつながる。  地域貢献にもなるやりがいのある仕事に惹かれて、毎年の新卒求人には若手人材が集結するなど、未来に向けた人づくりも順調。人材を“人財”として育成する地域の雄は、今後も継続的な躍進を続けていくだろう。

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BM800G-2には1.8㎥のバケットを装備。鉄スクラップをつかんだ後に旋回し、その勢いを利用しつつバケットをタイミング良く開くことで、船底の狙った場所にピンポイントで投入する

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オペレータの小林さんと牧野さんは、バケット作業において細かなペダル操作を不要にした湿式ディスクブレーキを絶賛。ショートレバーの位置も腕や肩に力を入れずに操作できると高く評価する 5.2018年に導入したBM800G-2が稼働する現場の対岸には、前年に導入した同機の姿も

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2018年に導入したBM800G-2が稼働する現場の対岸には、前年に導入した同機の姿も

今回の訪問先は矢印

愛知海運産業株式会社
愛知県田原市田原町柳町6番地 tel0531-22-1241
山田高弘= 取材・文 三浦泰章、小林 修= 撮影 text by Takahiro Yamada/photographs by Yasuaki Miura, Osamu Kobayashi