コベルコ建設機械ニュース

Vol.244May.2019

menu

さらなる成長の基盤づくりへ
ピンチをチャンスに、老舗の挑戦

人と同様、企業も歴史を重ねると良いときもあれば悪いときもある。
今年で創業41年を迎えた大井川重機有限会社では、バブル崩壊の影響で苦しい時期を過ごしたものの、
その後は静岡を代表する基礎工事業者へ。その挑戦の軌跡をレポートする。

人と同様、企業も歴史を重ねると良いときもあれば悪いときもある。
今年で創業41年を迎えた大井川重機有限会社では、バブル崩壊の影響で苦しい時期を過ごしたものの、その後は静岡を代表する基礎工事業者へ。その挑戦の軌跡をレポートする。

目標は50周年。
培ってきた信頼をベースに
これからも挑戦し続けていくつもりです

代表取締役 田中邦登さん

業界の動きを的確に捉え、
仕事のフィールドをシフト

 大井川重機有限会社は、静岡県を拠点に各種建造物の基礎工事を手がける杭打ちのエキスパートだ。創業は1978年。基礎工事の老舗企業として、県内でもトップクラスの設備と売上高を誇っている。
 今や静岡を代表する基礎工事業者となった大井川重機だが、バブル崩壊後に訪れた景気後退期には仕事量が減少し、経営的にも我慢を強いられる時期があったという。2018年4月、代表取締役に就任した田中邦登さんは当時をこう振り返る。
「勤務していたコンクリート杭の製造メーカを退職し、大井川重機へ入社した2003年が、ちょうど厳しいときでした。業界全体が右肩下がりの傾向にあり、当社もこのまま同じことをやっていてはいけないと、危機意識を持ったことを覚えています」
 そこで田中さんは、当時の社長だった現会長の田中俊夫さんに経営方針の大幅な転換を進言。田中会長の後押しもあり、それまでメインとしていた公共土木工事から民間の建築工事へと、仕事のフィールドをシフトしていく。
 前職の経験から、この先どんな分野が伸びるかのある程度の予測はできていたと語る田中さんだが、これまでのやり方を変えることにはかなりの勇気が必要で、大きな不安も感じていたという。「いずれにしろ、ここで動かなければ将来はないと思っていました」と不退転の覚悟で望み、前職で得た人脈をフル活用。徐々に民間建築の仕事を獲得していくことになる。
 気がつけば、県内に10社ほどあった基礎工事専門の業者も今では2社まで減少。その一方で、田中さんの入社時に約20名だった大井川重機の従業員数は、現在42名へと拡大。さらに、年間300日という高い稼働率を達成するなど、経営戦略の転換は見事に功を奏し、飛躍的な成長を遂げている。トップの勇気ある決断が、この大きな成果につながったのだ。

photo

大井川重機の経営陣が勢ぞろい。左から代表取締役の田中邦登さん、取締役会長の田中俊夫さん、専務取締役の酒井一正さん、常務取締役の田中伸明さん

創業以来の伝統もしっかりと継承

photo photo photo

訪れた現場は、静岡県袋井市にある漬物工場。新たな倉庫建設のため、大井川重機のBM800G-2が杭打ち機の相番機として力強く稼働していた

動画はこちら

 田中さんが中心となって取り組んだ経営方針の転換に伴い、大井川重機では三点杭打ち機やクレーンといった重機の大型化も推進している。
「基礎杭のサイズが年々大きく、そして重くなっている現状を考えれば、重機の大型化も対応すべき必須事項でした」(田中さん)
 同時に大型化した重機を運搬するトレーラなどの機動力も充実させることで、杭打ち作業をトータルでこなす体制づくりにも着手。お客様は何も手配しなくてよい“ワンストップサービス”を実現したことで、その後に起こるリーマンショックも見事に乗り越えた。
「変えたものもあれば、変えずに継承し続けているものもあります。その一つが、『人の和』を大切にすることです」(田中さん)
 大井川重機は創業時からお客様の信頼に応えることを徹底し、一度受けた仕事はたとえ何らかのトラブルが発生しても、損得を考えずに最後までやり遂げてきた。こうした姿勢は協力会社に対しても同様で、苦しいときも“持ちつ持たれつ”の精神で乗り越えてきたという。
「仕入れ先も、一度決めたら変えずに長くお付き合いさせていただいています」と田中さん。その代表格といえるのがコベルコ建機だ。杭打ちの相番機として使用するクレーンは、創業当時から変わらずコベルコ一筋。現場のオペレータ全員が操作性を高く評価している点も、長く使い続けている理由だ。また、足に負担がかからないコベルコ建機ならではの「湿式ブレーキ」も好評で、さらに現場の大型化に対応すべく18年に導入したBM800G-2は、ウインチ能力の高さを推す声が多い。
 現在の課題は、業界全体の悩みでもある人材不足。しかし、大井川重機には離職率の低さという強みがある。そんなところにも「人の和」を大切にする、同社の伝統が息づいているといえるだろう。
 将来的には杭抜きへの挑戦も視野に入れており、19年3月にはすでにテレスコピックブーム式のクレーン、TK550Gを導入するなど、さらなる成長への準備は万全。今後、大井川重機が打ち出す経営戦略は大いに注目されるところだ。

photo

訪れた現場は、静岡県袋井市にある漬物工場。新たな倉庫建設のため、大井川重機のBM800G-2が杭打ち機の相番機として力強く稼働していた

photo

オペレータ歴27年の杉本光昌さんは現場でBM800G-2に搭乗。「Gシリーズからレバーの配置が変わったことで、より操作しやすくなりました」

photo

現場責任者の森田和利さん。「創業以来、事故ゼロなのが当社の誇り。休憩中など仕事以外の時間でも、スタッフ同士が密なコミュニケーションをとっていて、それが安全作業につながっていると思います」

photo

大井川重機の社訓。「人・和・義」を大切にとあり、会長の田中俊夫さんが会社創業時に掲げたものだ

photo

今回の訪問先は矢印

大井川重機有限会社
静岡県焼津市飯渕842 tel 054-622-6155
山田高弘= 取材・文 神保達也、小林修= 撮影 text by Takahiro Yamada/photographs by Tatsuya Jinbo,Osamu kobayashi