コベルコ建設機械ニュース

Vol.247Jan.2020

menu

特集日本のインフラ、令和の現実。
発電所の今、これから

次代を見据えたインフラ工事が進行中
武豊火力発電所5号機

海沿いに設置されることが多い火力発電所の作業は海風の影響が強いうえ、クレーンの作業は高所となるため安全で正確な施工が必須である。
今回ミックが手がける武豊火力発電所の新設工事は、周辺の民家との距離が近いことから、騒音など近隣への配慮がより重要な現場となっている。

工事概要矢印

矢印
  • 所在地:愛知県知多郡武豊町字竜宮1-1
  • 出力:107万kW
  • 発電方式:汽力発電方式
  • 使用燃料:石炭および木質バイオマス
  • 熱効率:46%(低位発熱量基準)
  • 営業運転開始:2022年3月予定

燃料の安定調達と経済効率を考慮し、石炭を燃料にした、より高効率な火力発電所への建て替えが進行中。敷地面積・約85,000㎡の大規模案件

あらゆるニーズに応える
フレキシビリティ

photo「国産ならではの信頼感と迅速なサービスがコベルコの魅力」と語る現場管理責任者の松居久喜さん

ミックは本工事のなかで、クレーンを駆使した機械や鉄骨などの揚重作業を担当。安全かつ正確な施工と、工期厳守に定評があり、それが各メーカおよびゼネコンから選ばれる要因となっている。現場の管理責任者の松居久喜さんはこう語る。

「本現場では、SL16000J-Hや7120をはじめとする大型クローラクレーンからラフテレーンクレーンまで、多くのコベルコ製の機械が稼働しています。社員数とともに保有機数も多く、どんなご要望にも柔軟にお応えできる点も、当社の特長だと自負しています」

社会的責任が「やりがい」を生む

住民に安定的な電力を供給し続ける発電所の工事という公共性の高い仕事の中で、社員のやりがいやモチベーションもさらに向上していると語るのは、20年の経験をもとにボイラー棟新設に伴う鉄骨建方、機器類据付を担うオペレータの桧山泰基さんだ。

「私自身愛知県の出身なので、将来にわたって地域の人たちの暮らしを支えるインフラ構築に関わることができる喜びを実感しています。子どもたちにも、胸を張って自慢できる仕事ですね」

本現場は風も強く、鉄骨の狭い隙間への揚重も多い。桧山さんは「これ以上ない慎重さが求められますが、そんな難度の高さが仕事へのモチベーションを引き上げてくれます」と話す。

photo 長いオペレータ経験の中で「コベルコのクレーンには、ほぼ全機種乗りました」と語る桧山泰基さん

photo 動画はこちら

大型をはじめ、現場ではさまざまなクラスのコベルコ建機製クレーンが活躍

「安全第一」と「効率的な施工」、
「近隣から地球環境への配慮」の三位一体を追求

日本の電力を支える発電所。その運営はこれからどのように変化していくのか、
ミックが施工を行う武豊火力発電所を管理・運営する株式会社JERAの担当者に話を伺った。

社会インフラの担い手として

photo 事業開発本部 西日本発電・ガス開発部
武豊火力建設所 衣浦1号地最終処分場建設所
武豊火力発電所 所長 平松住雄さん

JERAは、東京電力と中部電力の火力発電業務を統合し、燃料調達から輸送、貯蔵、発電に至る一連の業務をワンストップで推進している。kWベースでは日本における火力発電の約50%、kW/hベースでも約30%を供給する国内有数の火力発電事業者であり、世界的に見ても最大級の規模を誇る。

今回JERAは、約50年間にわたって電力の安定供給を支えてきた武豊火力発電所の石油を燃料とする2 ~4号機を一新。将来を見越した長期的視点に立って、燃料の安定調達と経済効率を追求し、石炭燃料による高効率な武豊火力発電所5号機への建て替えを進めている。

ちなみに同社は、日照や風などの自然環境に左右される再生可能エネルギーの不安定さを、調達がしやすくクリーンなLNG(液化天然ガス)火力で支えるという補完関係の強化・構築を進めている。武豊火力発電所所長の平松住雄さんはこう語る。

「電気は貯めておけないので、リアルタイムな需給調整で常に過不足のない安定供給を図らなければなりません。そこで、天候や景気変動などさまざまな社会的要因を考慮・分析しながら、柔軟な運転調整を行っています」

環境との調和を追求

新生5号機は、住宅地に隣接しているため、工事の際は近隣環境には特に配慮が必要だと、業務課長の奥村仁成さんは説明する。

「安全第一はもとより、低騒音低振動工法の徹底を図り、掘削土は搬出せずに全量を構内で有効活用しています。大型機器類は工場組立や海上輸送で搬入車両を減らし、搬入車両の洗浄や道路の清掃・散水を励行。そのほかにも宅地側への仮設防音壁の設置や緑地帯を可能な限り残地するなどの施策を行っています」

周辺環境への配慮は、運転開始後にも徹底して継続される。

「最新鋭の燃焼効率が高い設備と木質チップバイオマス混焼によるCO2削減を計画しています。また、ボイラーからの排ガスも、多重的な浄化システムでSOx(硫黄酸化物)やNOx(窒素酸化物)、煤ばいじん塵などを除去し、規制値以下のクリーンな状態での排出も計画しています」(平松所長)

今後は再生可能エネルギーの中でも太陽光・風力発電の割合は大きくなるが変動的で、全体のバランスをとる役割を火力発電所が担うという。周辺の環境に最大限の配慮をしつつ、地域全体、ひいては日本のインフラを支える工事が進行中だ。

photo事業開発本部 西日本発電・ガス開発部
武豊火力建設所 衣浦1号地最終処分場建設所
武豊火力発電所 業務課長 奥村仁成さん

太田利之= 取材・文 神保達也= 撮影(人物) text by Toshiyuki Ota/photographs by Tatsuya Jinbo