コベルコ建設機械ニュース

Vol.253Aug.2021

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KOBELCO TOPICS 「K-LOAD」 開発ストーリー

標準機に低コストで搭載できるペイロード機能を独自開発
妥協なき検証で高品質を実現
積込み効率を高める新商品
「K-LOAD」開発ストーリー

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  • 平山道夫 ショベル営業本部
    施工ソリューション部
    ソリューション開発グループ


    2010年入社。開発プロジェクト全体を広い視野でマネジメント。「2021年に新設された施工ソリューション部の目標は、モノだけではない『コト』ビジネスの開拓。その突破口になり得るK-LOADには、大きな期待を寄せています」

  • 藤崎 勲 ショベル営業本部
    施工ソリューション部
    ソリューション開発グループ


    2020年入社。ペイロード技術確立のための先行開発において、主にソフトウエア製作を担当。「K-LOADの開発は現在も継続しています。使いやすさに磨きをかけ、今後もその機能を進化させていきます」

 公共事業をはじめとする土木現場では、掘削した土砂などをダンプに積み込む際、過積載防止のため、ダンプの重量を厳密に計量している。積込み重量に誤りがあった場合には、ダンプが現場に戻って荷台内の重量調整を行うことも。そうした、積込み過剰・過少による重量調整作業の削減に効果を発揮するのが積込み荷重計量(以下:ペイロード)機能だ。今回の開発においては、よりお客様が使いやすい操作性、作業ストレスを最小限に抑えることを意識して製品化が進められた。

 そして2021年5月、コベルコ建機はついに、独自開発したペイロード機能「K-LOAD」を千葉・幕張で開催された「CSPI-EXPO2021」で発表。導入コストの大幅な削減、使いやすさにこだわった機能や簡便な操作性が好評を博している。

導入しやすく使いやすい
ペイロード機能の開発へ

 K-LOADの開発に当たり、市場調査にもとづく商品要件の精査を行ったのが、商品企画部の今岡敬介だ。
「土木業のお客様や自社の営業部隊に対しても、世の中に出回っているペイロード製品への要望をヒアリングしました。その結果分かったのが、導入コストが高い割に使い勝手が悪いという点です。そこで、すでに開発に着手していた各部署のメンバーと協議し、新たに開発するK-LOADの開発コンセプトは、『低コストで導入でき、使いやすさにも優れたペイロード機能』と設定しました」(今岡)

 ペイロード機能の導入コストが高い理由は、「ICT建機の一機能として提供されていることに原因があります」と話すのは、本開発における技術陣のとりまとめ役を担ったソリューション開発グループの平山道夫だ。
「すでに販売されている製品は、ICT建機のセンサを流用しているものがほとんどで、そのためペイロード機能はICT建機とセットで購入しなければならず、導入コストがどうしても高額になっていたのです」(平山)

 その解決策として、K-LOADではハイリーチクレーン仕様や環境機で使われている各種センサ、低燃費を可能にするための圧力センサを活用。既存の技術を活用することで、標準機でもペイロード機能を搭載できるようにし、導入コストの低減を実現した。
「ハード面の構成はこれで決定しましたが、本開発の肝となったのはソフト。さまざまな動作時に、各センサからの出力をキャッチし、開発コンセプトである“使いやすさ”を実現するソフトウエアのつくり込みこそが重要でした」(平山)

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ペイロード機能とは、土砂などの掘削時、バケット内の荷重を計量・積算し、過剰・過少積載の防止をするもの。コベルコ建機が独自開発したペイロード機能 「K-LOAD」は、低コストで導入できるうえ、持ち上げ旋回をしながらの計測ができるなど、多様な現場メリットを備える

試験場での検証データから、
ソフトウエアをつくり込む

 既存のペイロード製品の多くは、計量をするために“持ち上げの単動作業”が必要で、旋回操作を同時に行えないという“作業の制限”があった。そこで、K-LOADが目指したのは、特別な操作をせずに、掘削やバケットを持ち上げながら旋回、排土といった普段通りの作業をしているだけで自動的に計量できること。それを可能にするソフトウエアのつくり込みが、ソリューション開発グループの藤崎勲に託されたミッションだった。その遂行に向けて藤崎が取り組んだのは、試験場で実際に機械を動かし、掘削や旋回した際のセンサ情報からソフトウエアがこちらの狙い通りに動いているかを検証することだった。
「これはシミュレーションでも可能だと思われるかもしれません。しかし、ペイロード機能の開発は今回がコベルコ建機として初めてだったため、取得すべきデータの種類や内容が正確には分からず、途中でデータを記録するセンサの数を増やすこともしました。今回に限れば、実地検証が正解だったと思います」(藤崎)

 何度も土を掘り、それにより得られたデータにもとづいてソフトウエアを改善するトライアンドエラーを繰り返すこと約8カ月。当初は旋回による遠心力が、センサの出力に影響していると思っておらず、計量が正確にできなかったため原因究明に思わぬ時間を取られるといったアクシデントはあったものの、20年2月、ついに納得できる精度での計量を可能にするソフトウエアが完成した。

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グリップスイッチで積算の開始・終了を選択可能。そのため、ショベル操作を妨げずに計測できる

量産化に対応すべく
品質の向上、管理を徹底

 藤崎が完成させたソフトウエアを商品に落とし込み、量産化への道筋をつけたのが、ショベル統合システム開発グループの木原美穂だ。
「技術確立したソフトウエアのロジックが、そのまま量産時に活用できるわけではありません。ペイロード機能が他の機能に悪影響をおよぼしてしまう場合もあれば、部品の故障や特殊な操作によって狙い通りに動かなくなる場合もあります。そこで、量産化に当たっては、機能同士の干渉による影響や、部品が故障した際はどうすべきか、操作画面の視認性や操作性なども検証し、品質を高めていきました」(木原)

一方、商品の信頼性を確保するための最終検証を行ったのが、20年に新設された信頼性確認グループの重吉正志である。
「開発段階で実施してきた評価に対して、抜け漏れがないかを、現場での使われ方の観点から最終検証するのが私の役割でした。掘削や旋回などの作業時におけるK-LOADの挙動をチェックし、開発担当者が見落としがちな事象を発見して、フィードバックすることに努めました」(重吉)

 幾重にも行った品質チェックで実現した安心のクオリティー。それに加えて、低コストで導入できるメリットに、オペレータの作業負担にならない動作も可能にしたK-LOAD。開発は現在も継続しており、今後も現場ニーズをしっかり捉えた機能を実現し、積込み作業の効率性をさらに高めていく。

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液晶画面に現在のバケット内荷重、ダンプへの積込荷重を表示。積込目標に近づくと、アラームやポップアップ画面で分かりやすく知らせるので、過剰・過少積載を未然に防止できる

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※掲載内容は発行当時(2021年9月)の情報です。

山田 高広= 取材・文 木下 裕介= 撮影 text by Takahiro Yamada/photographs by Yusuke Kinoshita