コベルコ建設機械ニュース

Vol.261Aug.2023

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特集クレーン施工計画を最適化するK-D2 PLANNER®の実力

クレーン施工計画を最適化する
K-D2 PLANNER®の実力

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事業化ストーリー

建機メーカならではの強みを実装
『K-D2 PLANNER®』に
込めた想い

マウスクリックなどの簡単な操作だけで、
クレーン施工計画に必要な情報を
一貫して提供する、
建機メーカならではの機能を備えた、
シミュレーションソフト
『K-D2 PLANNER®』。
その誕生に至る背景や経緯について、
事業化への道を拓いた新事業推進部
新事業プロジェクトグループの3名が
それぞれの立場から語り合った。

>岡田 哲

新事業推進部
新事業プロジェクトグループ
マネージャー/
事業企画・事業戦略立案担当

岡田 哲

髙松 伸広

新事業推進部
新事業プロジェクトグループ
ソフトウエア開発担当

髙松 伸広

小山 夏美

新事業推進部
新事業プロジェクトグループ
マーケティング担当

小山 夏美

建設における物理空間×サイバー空間の「デジタルツイン」を目指す

——『K-D2 PLANNER®』誕生の背景を教えてください。

岡田:
私たち新事業推進部は、新しい製品やサービスを提供するために事業の企画から戦略立案・立ち上げ、また販売からサポートまで事業として成立させるまでを担っています。新規事業の立案に当たっては、社会課題を発見し、その解決策をビジネスに結実させるというスタンスを大切にしています。
小山:
そのなかで私たちはクレーン施工計画における現場の安全性や効率性、また人手不足や労働効率向上、技術の継承性などの「建設業が抱える課題」に着目し、最適なクレーン計画の実現を価値として提供するために『K-D2 PLANNER®』の事業化を目指した、ということです。
髙松:
ここで特筆すべきは、独自ツールを開発するのではなく、すでに建築設計において広く活用されている3D-CAD“Autodesk® Revit®”の追加プログラムであるアドインとして開発した点です。スクラッチで開発するのと異なり、アドインとしてのさまざまな制約がありましたが、お客様の導入しやすさや裾野の広がりという意味でも、大正解だったと思います。
岡田:
国交省のBIM推進施策に併せて、日本建設業連合会もクレーン3Dモデルの標準化を進めており、建設施工の3Dデータ活用が加速化しています。当社は建機メーカとして、この重機モデルに加えて重機の能力や特性などデジタルデータをもつ強みを活かし、計画した通りに施工が進む世界、「デジタルツイン」を目指しました。

お客様との共創体制を堅持

—— デジタルツインとしての『K-D2 PLANNER®』の魅力をさらに詳しく教えてください。

岡田:
本特集冒頭で家入先生もご指摘のように、土木建設現場では想定外のできごとが生じがちです。そこで、現場の空間状況や吊荷の形状、これに合わせたクレーンの姿勢・負荷率・接地圧など重機の状況をあらかじめ仮想空間上で再現。さまざまな条件下で発生する問題点の芽を事前に摘み、安全かつコスト、工期などあらゆる面で生産効率性に優れた施工計画の最適解を見出しておこう、ということです。また、これまで把握が難しかったブームのたわみなども吊荷重に応じて可視化表示。仮設部材との干渉チェックなども、より正確にシミュレートできます。

コベルコ建機のクレーンであれば、吊荷重に応じたクレーンの「たわみ」を表示可能。経験頼りだった仮設部材との干渉チェックも、たわみを考慮して確認でき、より安全な現場を支援。

髙松:
さらに習熟度を問わず「誰でも簡単に」直観操作できるようユーザーインターフェースに目を配り、実際に行われる施工検討会などのプレゼンテーションを想定し、施工ステップのイメージを4Dで共有できる機能も備えました。
小山:
そもそも建機メーカなので「シミュレーションソフトの開発・評価」の経験はなく、開発の早期から実際のお客様へレビューを行い、評価をお願いしました。α版ともいえる最初のフェーズでは約20社にご評価いただき、そこで改善したβ版ではより多くのお客様にモニタ活用とアンケートをお願いしました。
髙松:
そのおかげで、非常に完成度の高いソリューションに磨き上げることができたと自負しております。

施工計画のステップごとに検討内容を登録することで、いつでも検討結果を再現できる。タイムライン表示で施工ステップのイメージを4Dで共有できるため、プレゼンテーションでも活用可能。

ソフトウエアビジネスの難しさを実感

—— ソフトウエア専業メーカではないことで、ビジネス面ではどんな苦労がありますか?

小山:
『K-D2 PLANNER®』の魅力をどうお伝えするか、が課題です。ソフトウエアのマーケティング経験がなかったので、まず認知度アップがポイントだと考え、ウェビナー(Web上のセミナー)や展示会をはじめ、Web広告や新聞、雑誌など、さまざまな媒体や機会の活用を進めています。
岡田:
また、今後の拡販に向けて、販売チャネルの拡大や連携も進めています。
髙松:
現在は、導入サポートやご質問などにお応えするヘルプデスクも、私たち自身が行っています。しかし、裾野の拡大のなかで、いずれはサポートも含めて代理店様にお願いしていく体制を築いていく必要がありますね。

さらに成長性あるシステムとして

—— 今後『K-D2 PLANNER®』を、どのように育てていきたいですか?

髙松:
今、世界の建設施工ではデジタルツインの取り組みが進化しています。今後、さらにお客様との共創体制を基盤に、施工計画に加えて、現場のリアルタイムな施工実績の見える化と施工最適化を進めていきたいですね。
小山:
さらにお客様の声を反映させながらバージョンアップし、機能追加や改良を進めていきたいと思います。一方、導入後の社内運用に不安があるお客様などにも、『K-D2 PLANNER®』の魅力をご理解いただくために、先行的な導入事例などを積極的に紹介していきたいと思っています。
岡田:
お客様側で一部加工作業は必要となりますが、他社機の取り込みも可能な仕様となっています。今後、さらに幅広い重機に対応できるよう開発を進めてまいります。コベルコ建機の経営理念である「ユーザー現場主義」にもとづき、ユーザビリティを追求し、課題解決のためのソリューションとして幅広く展開していきたいと考えています。
  • 太田利之= 取材・文 text by Toshiyuki Ota
  • 三浦伸一= 撮影 photographs by Shinichi Miura