コベルコ建設機械ニュース

Vol.261Aug.2023

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特集クレーン施工計画を最適化するK-D2 PLANNER®の実力

クレーン施工計画を最適化する
K-D2 PLANNER®の実力

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ユーザ訪問

西松建設株式会社

正確なデジタルモデルを基盤に
ワークフローにもとづいた
施工計画を実現

『K-D2 PLANNER®』の開発は
初期段階より、さまざまな企業から
ご意見をいただきつつ進められた。
今回は、そのなかの西松建設株式会社様に
ご協力いただき、
同社の建築事業本部 BIM推進室の
岩崎昭治課長を訪ね、
『K-D2 PLANNER®』への関わり方や
施工計画への活用、
今後の期待などに関して話を伺った。

>岡田 哲

西松建設株式会社
建築事業本部
BIM推進室 課長

岩崎 昭治

共創の思想でレスポンス優先を提案

岩崎氏は約20年前から3Dモデルに立脚した施工計画を構想し、BIMへの取り組みを意識して、施工計画アドインの自社開発などの取り組みを進めてきた。そのなかで、製品メーカではないゆえに正確な情報が入手できないジレンマをこう語る。

「正しい情報にもとづいて、しかもAutodesk® Revit®上でそのまま動作するツールが欲しい、と考えていたのです。そんな折、Autodesk® Revit®のアドインとして開発される『K-D2 PLANNER®』の話を聞き、事業化に先立ち評価版モニタ企業の一社として協力してもらえないか、との相談があったのです。まさにグッドタイミングで“こういうツールが欲しかった”、さらに言えば“なければ困る”という気もちで、私たちゼネコンとしての想いを伝えていきたいと考えました」

『K-D2 PLANNER®』の開発チームも同席したコベルコ建機とのミーティングで、同氏が第一に掲げた要件は、「レスポンスの速さ」だった。

「最初は、なによりもスピードが大切だ、と訴えました。動作が遅く少しでもストレスを感じたのでは、ユーザとなる計画部門は使ってくれません。ソフトウエアの開発者は、ややもすると当初からあれもこれもと機能を盛り込みがちです。しかし、その負荷がレスポンスを阻害したのでは意味がない、と伝えました」

3Dシミュレーションから生まれる施工計画の浸透に尽力

さらに岩崎氏からは「徹底して現場における実際の業務の流れに準じた開発思想を貫いてほしい」という要望も出された。

「コベルコ建機の開発チームも、私たちのリアルなワークフローを把握し、理解しながら、実際にツールをどう使うのかについてしっかり検討してくれました。それがシミュレーションツールとしての実効力向上に少なからず貢献した、と考えています」

また岩崎氏自身が、社内の施工計画チームに対して『K-D2 PLANNER®』の特徴や活用メリットの説明・啓蒙活動を開始。検討会のなかで、3Dデータから事前にバーチャルな現場を形成する意義を説いた。現場や周辺状況、クレーンの位置や可動範囲などがすべて可視化され、誰もが一目瞭然となった環境下で、課題を抽出し、そこで生じ得る障害や問題点を摘み取り、ミスを排除するという、これからの施工計画に欠かせない考え方を浸透させていったという。

さらに豊かな気づきとナレッジの蓄積へ

岩崎氏は、次のステップとして成果の資産化と蓄積が大切だと語る。

「3Dデータを活用する上で、さらに新たな気づきや潜在知の顕在化、ノウハウや知見の一元化とナレッジ化を進め、次の計画への反映を図っていかなければなりません。実は、かつて2Dで進められてきた計画を再整理してナレッジとしてAI化を図ろうと試みたのですが、それらは次の時代を見越した視点で集積されていなかったのです。そこで、これからは明確な資産化を意識したスタンスで、ナレッジのアーカイビングを図る仕組みづくりを進めていきたいです。さらに、そこで整理・蓄積された成果を標準化し、属人性を排除しながら知見やノウハウの共有・伝承などの人材教育にも活用していきたい、と考えています」

また現場で働く外国人作業員の方に対しても、分かりやすく3D表示された画面の共有によって、言語や重機習熟度の違いを超えて、工程や作業の意味や手順の正確な理解が一層加速されていくものと、期待を膨らませている。

左:
BIM資材の重量情報と連携し、施工計画に必要な負荷率や接地圧などの情報表示が可能。カタログスペックや2D-CADによる施工計画に比べ、効率化を実現した。また、工事計画届への活用可能な、ブーム側面から見た断面図もワンクリックで作成できる。
右:
クレーン位置と資材情報を施工ステップごとに登録することで、その現場で使用可能なクレーンが確認できる。最小クラスのクレーンを選定すれば、コスト最適化につながる。

さらなるバージョンアップに期待

実際の現場では、メーカが混在するクレーンの活用環境が一般的だ。そこで同氏は、今後の他社製品も含めたモデル拡大に期待している、と語る。

「また施工中だけでなく、クレーンの組立や解体など、工事前後を貫く現場のライフサイクル全体を一気通貫でカバーする機能追加を計画中だと伺っています。これは、ぜひとも早期に実現していただきたいと願っています。企業においてデータは価値そのものです。これを自社ビジネスに実装し、生産性や安全性向上はもちろん、採用や教育、働き方改革の推進など人材戦略に至る諸課題解決に活用する必要があります。私たちはそんな視座を確立していきたいと、決意を新たにしています。また大学でも、こうしたデータサイエンス教育を強化し、新時代の戦力となる学生を輩出していただきたいですね」

今後も、3Dデジタルデータの活用を進め、そのなかから新たな洞察や気づき、価値を見出し、企業資産として蓄積する姿勢を強化していきたいとする西松建設。そのデータサイエンス的な戦略は、次代に向かってさらに大きく飛翔しようとしている。

西松建設株式会社
東京都港区虎ノ門一丁目17番1号
虎ノ門ヒルズビジネスタワー
https://www.nishimatsu.co.jp/

  • 太田利之= 取材・文 text by Toshiyuki Ota
  • 三浦伸一= 撮影 photographs by Shinichi Miura