コベルコ建設機械ニュース

Vol.270Oct.2025

menu

 

継続的な機械化を進め
より魅力的な職場を目指す

県土の約7割を山林が占める和歌山県。林業が盛んな紀南地方にある西牟婁森林組合は山林所有者から委託を受けて、植林、育成、間伐、保安林の保護などを通して森林整備を行っている。そして伐採された木材の販売を担う最終的な部門が、田辺木材共販所。グラップルを付けた油圧ショベルの積極活用で効率化を図り、市場として価値を高めている。

県土の約7割を山林が占める和歌山県。林業が盛んな紀南地方にある西牟婁森林組合は山林所有者から委託を受けて、植林、育成、間伐、保安林の保護などを通して森林整備を行っている。そして伐採された木材の販売を担う最終的な部門が、田辺木材共販所。グラップルを付けた油圧ショベルの積極活用で効率化を図り、市場として価値を高めている。

市場として細かな地域対応ができる。
それが強みだと思っています

西牟婁森林組合/
田辺木材共販所 所長 打越仁さん

共販所の作業効率を高めるSK210DLCハイキャブ仕様機

photo

グラップルで木材をつかみ、なめらかな動きで作業する。SK210DLCハイキャブ仕様機

複数の組合が合併して、現在の西牟婁森林組合が設立されて51年目。田辺木材共販所は、2026年に設立50周年を迎える。

「ここは地域の中心である田辺市近郊にありながら、街中からはちょうどいい距離で離れていて山にも近い。また運もあるのかもしれませんが、組合が管轄するエリアでは害虫が樹木を食べてしまうあかね材の被害も少ない。そうした地域性もあって、長きにわたりこの地で人材も育ち、技術も積み重ねられて発展してきました」と語るのは、田辺木材共販所・所長の打越仁さん。

扱うのはスギ・ヒノキを中心とした紀州材。伐採されて運び込まれた木材を丸太の形に整えて、セリ市を行い業者に販売する。

そこで活躍するのが丸太をつかむためのアタッチメント、グラップルを付けた油圧ショベルだ。この春、コベルコ建機のSK210DLCハイキャブ仕様機を導入した。丸太を高く積み上げるためにハイキャブ仕様は必須。また、丸太の頭を揃えるために垂直型の大きめの排土板が取り付けられた。

共販所でのオペレータ歴が30年以上になるという木村幸雄さんは「以前使用していたものよりグラップルが大きくなったため、丸太をつかむ量が倍くらいになりました。つまりトラックから木材を下ろすなどの作業スピードが倍になったということです。振動が少ないこともストレス軽減につながります。また、排土板がない場合、地面で丸太を揃えることになりますが、小石が入ってしまうなど製品を傷つけるリスクが大きくなるので、排土板は大変役立っています」と、木材を扱う現場ならではのメリットをあげてくれた。

こうした機械化によって作業効率を高めている共販所だが、売り上げのピークは30年ほど前だという。

photo

丸太の径を採寸しやすいように先端を揃える。要望通りの大型の排土板は非常に使いやすいとオペレータの木村さんにも好評

厳しい環境のなか、地域密着の姿勢を堅持

「日本の家屋の構造も変わってきました。仏間や客間は少ないですし、ヒノキやスギの枠がアルミになったり、集成材による新建材のボードや外材を多用したり。従来の国産無垢材の需要は減少する一方ですね」と打越さんは国内林業の現状を受け止める。

また、補助金や助成金をベースとする森林組合という性格上、ときの政策による影響も受けやすく、事業環境も厳しさを増すという。

そんな状況にあっても、「一番の強みは地域に深く根づき、地域の要望に細かく対応できる点であり、広域合併後もこの地域密着の姿勢は変わりません。製品には自信をもっていますし、別の販売ルートを模索することはありません」と、打越さんは語る。

また、一次産業である林業においては少子高齢化の荒波のなか、人材確保という課題に対してもさまざまな取り組みを行っている。機械化推進による作業負担の軽減はもとより、年間休日の増加、安全対策の徹底などに加えセリ市の開催日を火・水・木曜日にしている。これは月曜や金曜だと、週末出勤の可能性が高まることへの対策だ。

こうした細部にまで目の届いた職場改善をすすめる打越さんは、今後の林業に関して次のように話してくれた。「Jクレジット制度のように森林を維持することに金銭的価値が生まれる動きもあり、林業を取り巻く環境は複雑化しています。また、バイオマスエネルギーなど新しい用途への展開も期待されています。そうした環境のなかで、当組合としては勤務条件を時代に即してアップデートし機械化を進めるなど、より魅力的な職場環境を整備し続けることで、『地域に貢献したいという人材』とのマッチングを目指していきます」

地域を愛し、これからの林業の可能性に触れるこうした言葉から、打越さん、ひいては西牟婁森林組合の強い想いが伝わってくる。共販所ではさらなる効率化を視野に、現在ヤードで稼働している機械を順次新しくしていく予定だ。このような前向きな姿勢は、地域での存在感を高め、職場としての魅力向上につながるはずだ。

photo

オペレータ歴30年以上という木村幸雄さん。「グラップルが大きくなったことで丸太をつかめる量も重さも約2倍になりましたが、重機のパワーが強いため安定感があり問題ありません」

photo

今回の訪問先は矢印

西牟婁森林組合/田辺木材共販所
所在地/和歌山県西牟婁郡上富田町生馬316-5
tel 0739-47-3939
大霜佳一= 取材・文 三浦泰章= 撮影 text by Yoshikazu Oshimo/photographs by Yasuaki Miura