特集ICT土工への第一歩 コベルコ建機がICT化へのスタートアップを支援!


エンドユーザ、販売・レンタル事業者、
そしてコベルコ建機が
三位一体となって
ICT土工の
経験を積み重ねる
近未来への危機感が
ICT建機の購入を促進

代表取締役 川下五継さん
「国の方針も工事のICT化に軸足を移している今こそ、準備が必要です。ICT土工が標準になるころ、それに対応できなかったら大変ですから。時代に合ったサービスとお客様が稼げる仕組みを提供しなければ、事業の存続はできません」と話すのは、2017年に会社を引き継いだ代表取締役の川下五継さん。「私たちの身近な生活もICTで変化しているので、仕事が劇的に変わらないはずはない」と続ける。川下さんは社長就任後から常に危機感を持ち、ICT建機導入のタイミングを図っていた。そんな折、ぜひともICT施工をやりたいというエンドユーザの要望をチャンスと捉え、18年9月にホルナビ3Dマシンコントロール(3DMC)搭載のSK200を購入、コベルコ独自の衝突軽減システムである「K-EYE PRO」も装備した。

ICT担当リーダー 南代喜郎さん
ICT担当リーダーである南代喜郎さんは、「ICT建機に関しては、私も新人も同じレベルで勉強しています。また、現場のことはお客様がプロフェッショナルですから、教えてもらうことも多いですね」と語る。災害対策の法面工事などの現場でも、分からないことはホルナビ担当者に電話したり、駆けつけてもらったりと、いい連携が実現したそうだ。
今後も川下建機工業では、強みであるサービス力を維持していくため、あえてICT建機限定のサービス専門チームは作らず、全社的に対応できる姿を目指しているという。その意味でも、サービス部門向け講習会開催の意義は大きいといえる。


ICT建機での施工に向け、川下建機工業、お客様、コベルコ建機がタッグを組みいっしょに取り組んでいる

2018年に購入したホルナビ3DMC搭載のSK200
パートナーとの役割分担が
ICT土工推進のあるべき姿

本社のヤードに並ぶレンタル用建機
「起工測量、設計、施工、管理・検査というステップのうち、私たちはローカライゼーションなどの施工分野、そしてICT建機の販売とレンタル、サービスを担います。もちろん全体を理解、把握してどう営業するかを考えていく必要はあります。ただ、“全ステップを一括して専門チームで提供する”ということは考えていません。それでは、お客様は専門チームにまかせてしまうことになるのでノウハウが残らず、従来と何も変わらない。経験を積めばできることは、自分たちでやる。件数を積み重ねて一歩一歩、ともに前進していくことが大切だと思います。ICT土工全盛の時代になってもお互いに稼げる仕組みをしっかり作っておく、今はその未来のための準備期間だと考えています」
また、同社のICT化は、若い人たちに建設・土木業界の未来を感じてもらうことにつなげたいという目論見もあるようだ。
「コベルコのICT建機に触れる過程で、手順を踏めば誰にでも使える機械だと確信しました。これまでの業界の世界観を変えてPRできるのではないか、と期待しています」(川下さん)
川下建機工業のICT土工への取り組みは始まったばかりだが、川下さんの描くロードマップには、建機メーカ、自社(販売・レンタル事業者)、お客様であるエンドユーザがそれぞれの立場で経験を積み、いっしょになって未来を切り拓こうという明確なビジョンがある。この考え方は、1つのモデルケースとして多くの同業者に支持されるのではないだろうか。
- 現場からの声
-
■自分たちでできることは自分たちでやりたいと思っていたので、こちらの要望に細かく対応できるのか確認しながら川下建機工業さんに相談しました。見切り発車で始めた部分もありましが、思ったよりハードルは低く感じました。
(ICT建機導入担当者) -
■こんなことはできないだろうと思うようなことも、意外に対応できました。扱いもそれほど難しくない印象。建機の仕事がはかどるため、それ以外の仕事との連携を考えないと時間がもったいなく感じることもありました。
(オペレータ) -
■慣れは必要だと思いますが、適切な助言と支援があれば割と簡単で思ったより違和感なく3D図面が作成できました。何より視覚的に仕事が把握しやすく、土量の計算も楽。打ち合わせや仕事の説明をするときにも便利だと思います。
(3D図面制作者)
今回の訪問先は
大霜佳一= 取材・文
神保達也= 撮影
text by Yoshikazu Oshimo/photographs by Tatsuya Jinbo