コベルコ建設機械ニュース

Vol.246Oct.2019

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特集現場を変えるイノベーション
現場を変えるK-EYE PRO編

現場の事故ゼロへ、
カウントダウンが始まる

現場における事故の撲滅は土木・建設業にとって、永遠のテーマ。この課題解決へと果敢に挑戦したコベルコ建機の新技術が、現場の事故ゼロ実現に向けて大きな成果を上げ始めている。石川県金沢市の株式会社ティー・ピー・オーを訪問し、その実際を聞いた。

今回の訪問先は矢印

株式会社ティー・ピー・オー
石川県金沢市堅田町甲84番地1
tel076-255-2102

「K-EYE PRO」の導入で
安全への意識が向上

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代表取締役
石倉澄夫さん

石川県金沢市を拠点に事業を展開する株式会社ティー・ピー・オーは、土木から型枠工事までをトータルに手がけている。関連会社を含めるとスタッフは100名以上、所有する重機は40台を数え、そのマンパワーと機械力が同社の強みとなっている。

代表取締役の石倉澄夫さんは、現場監督の経験を長く積んできた。現場を知っているため、なにより安全に対する意識は人一倍高かった。だからこそ、昨年現職へ就任したあとでまず初めに取り組んだのが、人や障害物を検知すると自動で減速・停止を行うコベルコ建機の衝突軽減システム「K-EYE PRO」搭載機の導入だった。

「以前から、なにかの拍子に稼働中の重機へ近づいた人が事故に巻き込まれるという惨事が、同業他社の現場で増えていることを聞いていました。当社がこれまで行ってきたKY(危険予知)活動は、掘削時などの本工事が対象で、重機の簡単な移動などの際に起きる、人と機械の接触事故などは考えられていませんでした。このような事故を分析すると、“誰もいないだろう、なにもないだろう”という思い込みや、慣れによるヒューマンエラーに起因していることが分かったため、新たな防止策が必要になったのです」

ティー・ピー・オーでは、重機の安全装備としてすでにバックモニタと危険を知らせるセンサを機械導入の際の必須条件としていた。しかし、作業に集中していて、周囲の人や障害物などに気づくのが遅れたりすることも考えられる。そんなうっかりや見落としがあった状況でもK-EYE PROなら、ヒューマンエラーによる事故の防止に大きな力を発揮する。

さらに、K-EYE PROの導入は、現場に思わぬ効果をもたらした。それは、センサが過剰に反応しないよう、スタッフが重機まわりを整理するようになったことだ。障害物のないすっきりと片付いた現場では、事故の危険性が軽減する。

「こうした行動は、オペレータが初心に帰り、現場の安全をあらためて考えるようになったことの表れです。K-EYE PROには、安全への意識を高めることで事故を間接的に防止する効果も期待できるようです」(石倉さん)

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左右後方の計4つの深度センサがオペレータの死角をカバー。稼働時に人や障害物を検知すると、機械の停止とともにキャブ内のディスプレイとアラームでも知らせてくれる

お客様からスタッフまで
現場での評価も上々

photo 動画はこちら

トンネル工事現場の全景。K-EYE PRO搭載機SK200を導入したことで、スタッフたちの安全意識が高まり、重機のまわりはしっかりと整理されるようになった

現在、K-EYE PRO搭載のSK200は国道のトンネル工事現場で稼働中。トンネル内で掘削した土砂を、産業廃棄物として運搬するトラックへと積み込む作業に従事していた。

K-EYE PROの導入は、現場の元請けである大林組からも歓迎されている。「働く人の命を守れない事業者は、当然ながら今後ますます淘汰されていくでしょう」と語るのは、本現場の所長を務める大林組の対馬祥一さん。他社に先駆けて、こうした先進システムを採り入れたティー・ピー・オーの安全に対する姿勢を、高く評価しているという。

「現場の安全性の向上は、女性や若い入職者に対するアピール度も高いのではないでしょうか。女性オペレータも増えていますし、事故を未然に防ぎ、より安全な現場をつくるK-EYE PROのような技術が、女性や若い入職者を呼び込む切り札になってくれればありがたいですね」

一方、K-EYE PRO搭載のコベルコ機に乗るオペレータの評価はどうなのだろう。導入当初は、少しとまどったが、すぐにこれは使えると分かったと話す山中吉英さんは、この道30年のベテランオペレータ。
「長い間オペレータの仕事をしていると、運転中のヒヤリハットの経験は正直、何度かあります。K-EYE PRO搭載機であれば、もし障害物に気がつかなかったとしても、停止してくれるので安心です」

土木建設業における事故は、最悪の場合、大切な仲間を失うことにもなりかねない。さらに、現場が止まることでコストや工期にも影響がおよぶ。「そうしたリスクを未然に防げるK-EYE PROは、業界全体の安全に対するイメージを変えてくれるはず」と石倉さん。ヒューマンエラーによる事故撲滅への歩みはもう始まっている。

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大林組の対馬祥一さんは、トンネル工事の現場を手がけることが多いという。
「狭所で多くの人が作業するトンネル内部の工事にも、K-EYEPROが使えるのであれば試してみたいですね」

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左がオペレータの山中吉英さん。K-EYE PRO搭載機SK200に関して、「最初はセンサの反応に慣れなかったが、1週間ほどで使いこなせるようになりました」と語る。
右は取締役工事部長の高井淳也さん。現場管理とともに、事故につながりかねないスタッフの体調管理にも気を使っているという

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K-EYE PRO搭載機による土砂の積み込み風景。広々とした現場は一見すると衝突の心配もなさそうだが、「なにがあるか分からないのが現場の怖いところ」と石倉さん

山田高弘= 取材・文 神保達也= 撮影 text by Toshiyuki Ota/photographs by Tatsuya Jinbo