コベルコ建設機械ニュース

Vol.246Oct.2019

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特集現場を変えるイノベーション
コべルコ建機の挑戦

明日の現場を見据えた
現在進行形の取り組み

コベルコ建機は、今後さらにICTや安全対策を強化し、「誰でも働ける現場」の実現を目指す。
遠隔操作での遠く離れた現場の施工、ヒューマンエラーに起因する事故の防止、クレーンの組み立て機械化による省力・省人化など、誰でもストレスなく快適な環境で働ける。
そんな現場を現実にする動きはすでに始まっている。

K-DIVE CONCEPT

場所や時間に縛られない働き方で
現場を安全に計画通り稼働させる

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現場のマシンを都市のオフィスから遠隔操作するシミュレーション。女性や高齢者、ハンディキャップをもつ方なども含めた「誰でも働ける現場」の実現を体験することができる

熟練技術者の高齢化や労働人口の減少など、建設現場を巡る環境は、決して楽観視できない。そんな時代背景のなかで求められるのは、習熟度や経験の差に左右されることなく、熟練者の技術を継承・発展させながら、それぞれの事情に即した働き方を享受することができる――つまり、経験やその日の体調など、各自の属人性に左右されず、計画通り、安全に工事を進めることだ。

コベルコ建機は、そんな「誰でも働ける現場」づくりを推進している。そのキーとなるのが、ICTの活用だ。一足飛びに完全無人化に向かうのではなく、人にしかできない部分を尊重しながらICTでそれを補完・支援し、さらに人のおよばない気づきやアクションを提供することから確かな素地を築いていきたいと考えている。ここにおけるキーワードは ① 運転アシスト ② 自動運転 ③ 遠隔運転だ。クラウドマッチングシステムにより、特定の人・場所・時間などの制約を受けずに、現場の施工が可能となる「建設現場のテレワーク化」を進めている。

その具現化のために、コベルコ建機は2019年5月に日本マイクロソフトとのアライアンス体制を確立。両社は右記のロードマップに沿って、働く人を中心とした建設現場のテレワークシステム「K-DIVE CONCEPT」の実現に向けた研究開発を推進している。

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STEP1【本質的な安全】現場事務所などのWi-Fi / 無線通信などのローカル通信環境下で遠隔運転を実現し、本質的な安全を確保する

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STEP2【現場の生産性向上】LTEや5Gなど携帯キャリア通信環境での遠隔操作により現場の生産性を向上する

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STEP3【多様な人材活用】遠隔オペレータと施工管理者をつなぐネットワークシステム機能を実現し、リアルタイムでの現場情報の確認や出来高管理を可能とする。またレベルに合った作業と現場作業レベルのマッチングを行い、多様な人材活用に寄与する

クレーン周囲検知システム K-EYEPRO

クレーンの特殊性を踏まえた機能を開発し安全で生産性の高い現場を実現

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衝突軽減システム「K-EYEPRO」は、ショベルが先行して開発・実装してきたシステムだ。現在、運転中のオペレータの死角エリア内の人や障害物を検知することによって、事故を未然に防止するその機能を、クレーンに適用するプロジェクトが進行中。近々、周辺検知による安全で計画通りの施工を進めるソリューションを提供する予定だ。

クレーンは、ブームの旋回を急に止めると、慣性力がはたらき荷揺れが生じる。そこで、旋回中は、警告音を発し、停止時は旋回を起動させない。さらに周囲の画像をキャブ内のモニタに表示し、外部にはアラーム音で警告をするなどの機能開発が進められている。本システムのためのカメラやセンサ、モニタなどは後付けができ、現在活躍中のクレーンへの装備も可能になる予定。また、日々のシステム稼働状況を履歴として残し、レポート出力が可能なため、その分析と結果の共有によって危険予知対策に役立てることもできる。

クローラクレーン組立支援
SMART ASSEMBLY CONCEPT

現場での安全性と省力化を推進

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クローラクレーンの5つの組み立て工程を機械化し、現場の省力化と安全性の向上を目指す

クローラクレーンは分解して運ばれ、各現場で組み立てられる。特に都市部の現場においては組み立てスペースが狭くなってしまうため、安全面に支障をきたす場合がある。また、組み立てに伴う労力や時間も、現場の生産性を低下させる要因になりかねない。さらに、高度なノウハウが求められることから、ベテラン技術者への依存度が高く、現場の高齢化が進むなかで将来への不安もいっそう高まっている。

そこで、コベルコ建機は従来の組み立て手法自体を変革し、省力化や省人化を実現する「SMARTASSEMBLY CONCEPT」を掲げ、その開発を進めている。また現場の広さの制約を緩和するため、ブームが伸縮するテレスコピッククローラクレーンの活躍の場も広がっているが、コベルコ建機ではTKシリーズを基盤にこの分野をさらにカバーしていく。

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TKシリーズはブームが伸縮するため、輸送性や狭い場所での作業性が高くなっている

産学連携体制

オープンイノベーションで次代の現場を創出 広島大学と連携して次世代建機の研究を進める「コベルコ建機夢源力(むげんりょく)共創研究所」や豊橋技術科学大学への「コベルコ建機次世代クレーン共同研究講座」の設置をはじめ、産学や産産の連携で、より広い視野に立ったオープンイノベーションによる研究開発を推進。外部の研究者との交流や共同研究を通して、次代を見据えた建機の発展や成長への貢献を進めている。

山田高弘= 取材・文 神保達也= 撮影 text by Toshiyuki Ota/photographs by Tatsuya Jinbo