コベルコ建設機械ニュース

Vol.248Apr.2020

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特集現場に先進のICT
ICT事例 2

正確かつ迅速な施工を可能にし、
工事期間も劇的に短縮

福岡県嘉麻市に本拠を置き、土木工事を中心に手がける株式会社上瀧組では、専務取締役の上瀧直樹さんのリーダーシップのもと、ICT化にも積極的に注力。
2019年に購入したチルトローテータ、2Dマシンガイダンス(以下、2DMG)搭載のSK135SRが、これまでにない性能で同社の業務を支えている。

今回の訪問先は矢印

株式会社上瀧組
福岡県嘉麻市漆生881 
tel0948-42-0078

25年前から取り組んだ
土木のICT化が結実

photo機械好きな専務取締役の上瀧直樹さん。新型機のSK75SR-7についても「設計者を探してメールしようかと思ったくらい」とデザインを絶賛し、機械を発注。納車を心待ちにしている

photo河岸の崩れた法面を急ピッチで復旧するSK135SR。狭所での正確な作業がオペレータだけで楽にできる

「最初にコベルコ建機のチルトローテータ搭載機、SK135SRを目にしたのは、2019年3月に北九州で開かれたコベルコ建機の展示会。なによりメカらしさにあふれたデザインに一目惚れしました」と語るのは、上瀧組の専務取締役、上瀧直樹さんだ。

同社の設立は戦後間もない1948年。上瀧専務の祖父が創業し、建築から次第に土木工事中心へとシフトし、事業を拡大してきた。現在は上瀧専務の父、洋介さんが代表取締役社長を務め、国の公共工事を数多く手がけている。

上瀧専務は学生時代から独自にコンピュータのプログラミングを行うほどICTに強く、土木工事への応用にも、25年ほど前から取り組んできた。

「関数電卓でプログラムを組み、測量計算などに使っていました。でも最初は失敗ばかりでした。そこで、昔からの知り合いの測量会社へ相談し、情報交換をしながら一緒に取り組んできたことが、ICT活用を推し進める転機となりました。今、ようやく成果が実ってきたと感じています」(上瀧専務)

上瀧専務は、ICT建機の強みを、「丁張りなしで作業でき、手元作業員の助けを借りずにオペレータだけで作業が完了すること」ととらえている。チルトローテータには10年ほど前から関心があったが、初めて購入したコベルコ機が自社機としては初のICT建機となった。上瀧専務は導入の決め手をむき出しのシリンダーの「かっこよさ」だというが、機械土工基幹技能者など各種資格を持ち、数多くの重機に乗っているだけに、機能を見る目も確かだ。

「実際に試乗してすぐその良さを実感しました。バケット交換がクイックヒッチで簡単ですし、作業に関してはバケットの角度が細かく調整可能で、現場の設計面に対して常に90度に保つことができることに感心しました。現在はチルトローテータ発祥の地、北欧の現場での活用方法を採り入れようと情報収集しています」(上瀧専務)

加えて、コベルコ建機が機械本体とチルトローテータを一体にして品質保証していたことも大きかったという。上瀧組の事業は道路工事から砂防ダムまで幅広いが、近年は頻発する大雨などのため、災害復旧工事が増えている。

「こうした現場の多くは足場が狭かったり、足場が崩れているなどで仮設工事には多くの工数がかかります。だからこそ、1台の重機でさまざまな作業ができるチルトローテータが威力を発揮します」(上瀧専務)

もう一つ、上瀧専務がICT建機に期待するのは、若手の成長を促す効果だ。

「現場にICTを導入することで施工前から3次元で完成形が確認できて、施工計画や設計変更の際にも活用することができます。そして、ICT建機やチルトローテータは、生産性向上や人材不足の解消以上に、若手に“乗ってみたい”“操作して施工したい”というきっかけや夢を与えるものだと思います」

photo 動画はこちら

修復した河岸の法面を整形する。丁張りは使わず、作業をオペレータ1人で正確かつ迅速に行うことができる

これまでの建機では不可能な作業を実現

チルトローテータ搭載機が強みを発揮できる現場の一つ、泉河内川の災害復旧現場でオペレータの山片聖司さんに話を聞いた。山片さんはオペレータになって約3年、チルトローテータ搭載機を扱うのは初めてだ。

「特別な訓練などなくても、数日で操作できるようになりました」(山片さん)

工事では大雨で崩れた河岸の法面を修復。崖下から石積みして盛土し、叩き、転圧して新たに法面を形成した。

「一般的な方法では丁張りを立てて作業するため丁張りにぶつけないように気を使いますし、その部分の作業はあとになります。しかしチルトローテータ搭載機なら丁張り自体が不要で、作業が非常に速く進みます」(山片さん)

実際、石積みが完成した後、600㎥ほどの盛土工事と法面整形は3日で完了したという。また、山片さんは2DMG機能についても、作業が格段に楽になったと語り、「最初からディスプレーで仕上がり状態を見ることができ、高さも勾配も可視化されます。便利過ぎるくらいです」と評する。

現場での対応力や修理技術に定評がある販売代理店、有限会社福岡重機とコベルコ建機のサポート体制を活用し、今後、上瀧組の取り組みはさらに加速していくだろう。

photo 現場監督の上瀧悠煕さんは、チルトローテータ搭載機の作業速度を「実感値で通常の建機の3倍」と語る。また、バケット周辺に作業員を置かなくて済むため、安全面への貢献度も高いという

photo オペレータの山片さんは「チルトローテータ搭載機は、オペレータ経験のある人なら誰でもすぐに使える」と断言する

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2DMGのディスプレー。設定から外れると色とアラーム音でオペレータに知らせる。青が正常な設定範囲、それより上の値になると黄色、下の値になると赤で表示される

織田信孝= 取材・文 神保達也= 撮影(人物) text by Nobutaka Oda / photographs by Tatsuya Jinbo