コベルコ建設機械ニュース

Vol.255Jan.2022

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特集ロジスティックの新潮流

お客様のビジネス継続性を支援する

ロジスティックの新潮流

有識者&担当者が語る建機メーカの
物流管理のあるべき姿

昨今、労働人口の減少やコロナ禍による市況の激変に企業が直面するなか、
さまざまな危機を回避あるいは低減し、ビジネスを途絶えさせない『BC(Business Continuity):事業継続性』が大きな経営課題となっている。
なかでも現場の最前線で活躍する建設機械のトラブルは、施工の遅れを招く由々しき事態だ。

今回は、本格稼働を開始した東条パーツロジセンターを中心に、コベルコ建機の部品供給戦略を紹介する。
まずはじめに、通販物流代行会社を経営し、物流コンサルタントとしても活躍する角井亮一さんに、メーカの物流管理について話を聞いた。

photo:角井 亮一さん

角井 亮一さん

株式会社イー・ロジット
代表取締役社長

1968年大阪府生まれ。2000年に株式会社イー・ロジットを設立し、代表取締役社長に就任。同社は21年3月末現在、276社・倉庫面積4万5300坪を誇る国内トップクラスの通販専門物流代行会社となっている。約200社の企業組織であるイー・ロジットクラブを中心に、物流人材教育研修を実施するなど、小売やEC企業に対する物流コンサルティングを行う

昨今、労働人口の減少やコロナ禍による市況の激変に企業が直面するなか、さまざまな危機を回避あるいは低減し、ビジネスを途絶えさせない『BC(Business Continuity):事業継続性』が大きな経営課題となっている。なかでも現場の最前線で活躍する建設機械のトラブルは、施工の遅れを招く由々しき事態だ。

今回は、本格稼働を開始した東条パーツロジセンターを中心に、コベルコ建機の部品供給戦略を紹介する。
まずはじめに、通販物流代行会社を経営し、物流コンサルタントとしても活躍する角井亮一さんに、メーカの物流管理について話を聞いた。

メーカの責任として万全のパーツ保有量と期間を確保

コロナ禍に伴う世界的な生産停滞は、食料や日用品をはじめ、石油や資材、部品など輸入依存度が高い日本の産業や人々の暮らしに多大な影響を与えた。モノ不足に加え、米中の経済急回復に伴うコンテナ不足を起因とする輸送コスト上昇による値上げラッシュや、石油の政府備蓄放出などのニュースは記憶に新しい。

しかし一般に流通業では、過剰在庫は経営の圧迫要因となる。そこで、欠品による販売機会を逃さない最小量の在庫である「適正在庫量」を、いかに割り出すかが重要な経営課題とされている。株式会社イー・ロジット代表取締役社長の角井亮一さんは、「これに対して、お客様のビジネス戦力となる建機のパーツセンターの在庫の持ち方は大きく異なる」と語る。

DXの推進で、BCを支える迅速対応を担保する

見える化が進むパーツロジセンター

入荷や保管など各工程の進捗状況もデジタル連携。見える化が進むパーツロジセンター

「マシントラブルによる作業停止は、そのまま工期や収益に影響します。そこでメーカは万一の欠品を招かないように、常に潤沢な在庫を保有しています。また、パーツの多くは一品一様のオリジナル品なので、ある程度の量を製造してストックしておいたほうが効率もいい。建機は製品保証期間も長いので、常に十分な量のパーツが長期間キープされているのです」

迅速なデリバリーも、ビジネスへの影響を最小限に留めるためのポイントだ。

「B to Cの場合は、多少時間はかかっても送料を抑えたい、もしくは逆に割増料金を払ってでもすぐ手に入れたいなどの選択肢が存在します。しかし、現場の稼働を左右する建機の場合は、常に最速のデリバリーが求められます」

しかもパーツのお届けはサービス体制と一体となってこそ初めて意味を持つ。そこで、コベルコ建機では、基本的なパーツは各センターにストックし、有事の際にはサービス担当者がそのパーツをすぐに届ける体制が構築されている。

「コベルコ建機のパーツロジセンターには、高密度保管による収納効率向上と迅速かつ正確な出入庫を支援する『自動倉庫型ピッキングシステム』などが導入されていると伺いました。ロボットが出入庫を行うこうしたシステムは、多品種少量のパーツも重要視する保守部品サービスの現場にこそ最適です。今後メーカの物流拠点でも、このようなDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略が一層重要になっていくでしょう」

さらに角井さんは、建機メーカが顧客の安定稼働要求に応えるためのDX施策として、金融業界の事例が参考になると話す。

「基本的に24時間/365日稼働するコンビニエンスストアのATMで障害が発生すると、そのATMに一番近い場所にいるサービス担当者、あるいは最寄りのパーツセンターと近くを走行中の空車および待機中のトラックを、GPSを使ってマッチングし、復旧のスピードアップを実現しています」

もちろん、サービスの迅速化を図る以前に、万一の事態を招かないための日常的なメンテナンスも重要になる。この点では、お客様自身が行っている始業・終業点検とともに、コベルコ建機のサービス担当者による定期巡回や遠隔監視システムが活躍。なんらかの不穏な兆候を察知したり、一定の運転時間から部品の点検や交換を自動的に促したりするシステムが予防保全に貢献している。コベルコ建機では、東条パーツロジセンター新設による供給体制強化はもとより、遠隔監視システムやサービスセンターの体制強化などの支援を充実させ、今後ともお客様のビジネス継続性をサポートしていく。

自動倉庫型ピッキングシステム

コベルコ建機の東条パーツロジセンターの自動倉庫型ピッキングシステム

  • 太田利之= 取材・文 text by Toshiyuki Ota
  • 那須亮太= 撮影 photographs by Ryota Nasu