コベルコ建設機械ニュース

Vol.255Jan.2022

menu

特集ロジスティックの新潮流

パーツ供給の新たな拠点、
東条パーツロジセンター誕⽣!

現場を⽌めないテクノロジー

上空から見た倉庫

広々とした倉庫内は平屋建てのため、導線もシンプル

2020年4月より一部機能を稼働していた東条パーツロジセンター(兵庫県加東市)が21年4月、ついに本格稼働を開始した。
トラブルによる建機のダウンタイムを低減するには、迅速なパーツ供給体制の実現が必要不可欠。
コベルコ建機の国内外向け部品供給を一手に担う新たなマザー倉庫の、現場を止めないためのテクノロジーや工夫を紹介する。

約2万5000m2の床面積を確保し在庫能力を大幅に強化

近年、コベルコ建機製品の稼働台数は、年間1万台ペースで増加している。その一方で、アフターサービスにおけるパーツ供給を担う物流倉庫には課題があった。コベルコ建機の部品供給を担ってきた大久保部品センター(兵庫県明石市)は、スペース不足の問題から在庫能力が販売物量の増加に追いつかず、それをまかなうべく実施した倉庫分散の影響から物流効率が低下。お客様の求めるリードタイムで部品供給を実現できない状況も生じていた。

そうした物流の課題を解決すべく誕生したのが、東条パーツロジセンターだ。その特長は第一に、広大な敷地を誇ること。約10万m2の敷地内に建てられた物流倉庫内に約2万5000m2の床面積を擁し、課題だった在庫能力と各工程作業能力を大幅に強化。入荷検収のスペースだけでも1300m2と、大久保部品センターの5〜6倍におよぶ。また、倉庫は平屋建てで作業時に人も物も垂直移動する必要がないため、作業の省力化が実現している。

入荷から格納、出荷までが一筆書きのような導線で設計されている倉庫内には、納品された部品を包装するパッケージング作業や、定期メンテナンス用キットや修理キットのような、複数部品を組み合わせた商品を作製するキッティングスペースも確保。また、輸出用コンテナへの詰め作業を敷地内で内製化できるスペースもあり、海外出荷時の海上輸送手続き完了までのリードタイムを、従来の50日から20日まで大幅に短縮することを可能にしている。

倉庫外観 倉庫内部のロボットカー

32台のロボットカーは同時に動いているが、専用のアルゴリズムによりぶつかることはない

各工程の作業を標準化しヒューマンエラーの防止を徹底

ラベルを貼られる荷物

ラベルに表示する情報は、運送会社別にデータが入力されており、荷物によって自動で配送先情報が貼られる

進捗状況見える化システム

作業の進捗状況を見える化するシステムを導入

十字に仕切られた収納ボックス

収納ボックスは十字に仕切られ、1つのボックスに4つのパーツを収納できる

大久保部品センターの業務システムは、導入後14年以上経過したもので、ベテランスタッフの経験値に頼った管理が中心となっていた。そのため増え続ける物量に対応しきれず、入出荷時のミスを防ぎきれないこともあった。そこで、東条パーツロジセンターでは、最新の倉庫管理システムによるさまざまなチェック体制を導入するとともに、各工程における作業の「標準化」に努めている。例えば、入荷したパーツの寸法や重量、写真の撮影に加え、部品ごとの注意点をデータベース化しているのもそうした取り組みの一つだ。

そのほかにも、入荷や保管、出荷といった各工程で、作業の進捗状況を随時確認できる大型パネルを設置。保管場所では、製品をピッキングする際に同じようなミスを繰り返さないよう、起こしがちな誤りを注意喚起するパネルも用意している。

ヒューマンエラー防止を目的とした作業の標準化を推進する取り組みは、製品の品質管理にも効果を発揮している。保管や出荷の前にさび防止などの加工が必要な製品の場合、タグ付けされたQRコードを読み込むと、作業工程を写真とともにPC画面に表示。それを見ながら作業することで、出荷される製品品質の均一化に成果を上げている。

最新鋭の設備として大型自動倉庫「AutoStore」を導入

今回、東条パーツロジセンターが新たに導入したのが、大型自動倉庫「AutoStore(オートストア)」だ。これは庫内の空間全体に専用ボックスを設置。倉庫管理システムからAutoStoreのコントロールシステムに自動で指示が送られ、32台のロボットカーが収納ボックスの上を走り回って製品を集荷するというシステムだ。

建機のトラブル時に必要となるパーツは、需要の予測がつかない。そのため、迅速な供給を実現するには、在庫の種類を増やすことがポイントとなる。AutoStoreの場合、通常の収納スペースと異なり、通路を確保する必要がないため、限られたスペースに最大限の製品を収納することが可能。東条パーツロジセンターに導入したAutoStoreでは、あらゆるニーズに備えて、最大で約9万2000点のパーツを収納する機能があり、建機トラブル時の迅速な対応を実現する供給体制を構築している。

  • 山田高広= 取材・文 text by Takahiro Yamada
  • 那須亮太= 撮影 photographs by Ryota Nasu