コベルコ建設機械ニュース

Vol.255Jan.2022

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建機を保有し、技術を蓄積
ICT施工を牽引する

金杉建設株式会社は、工事におけるICT活用をいち早く始めた土木建設企業の一つ。
着実に技術を蓄積し、平成29年度には国土交通省の第1回「i-Construction大賞」を受賞した。
現在は受注案件の50%以上がICT施工となったが、コベルコ建機のチルトローテータ搭載3Dマシンコントロール機を導入するなど、さらなるICT化を進めている。

金杉建設株式会社は、工事におけるICT活用をいち早く始めた土木建設企業の一つ。着実に技術を蓄積し、平成29年度には国土交通省の第1回「i-Construction大賞」を受賞した。現在は受注案件の50%以上がICT施工となったが、コベルコ建機のチルトローテータ搭載3Dマシンコントロール機を導入するなど、さらなるICT化を進めている。

「i-Construction大賞」受賞を機に、
あらためて「ICT施工の普及や推進の一助になりたい」という思いが強くなりました。

代表取締役社長 吉川祐介さん

ICT施工の内製化に取り組む

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堤防のかさ上げ工事で活躍するSK135SR-7チルトローテータ搭載3DMC。足場が整地されていない斜面でも、正確かつ安全な作業が可能だ

「山形県庁に勤務していた祖父が、建設工事が民営化されていく転換期に、出身地である埼玉県の金杉村(現・松伏町)で創業。その後、春日部市の発展を予測して現在の場所に移転しました」。創業の経緯をこう振り返るのは、代表取締役社長の吉川祐介さん。土木工事を中心に事業を拡大し、現・代表取締役会長の吉川一郎さん、吉川社長と三代にわたって成長を続け、現在は社員80名を有する規模となった。東京、千葉、茨城にも拠点を持ち、埼玉県を中心とする関東圏の河川、道路、橋梁などの工事を手がけている。

そんな金杉建設のICT施工への取り組みは4、5年ほど前から始まったという。きっかけは、あるレンタル会社とともに行ったICT施工による堤防工事だった。ICT施工では、ドローンや3Dスキャナーを用いた3D測量から点群データを作成し、2D図面から3Dデータを構築する。これをICT建機に読み込ませることで、正確かつ迅速な作業を行う。この工事は完全なレンタル会社主導型で、ICT建機をレンタルしたほか3D測量や3Dデータの構築をレンタル会社が行っていた。

「当社はそれに従って作業を行えばいいので、負担は少なく工事自体の評価も高かったのですが、これでは当社に技術が残らないと思いました。また、ICT建機を自社保有することにより、利益率も非常に高くなると考え決断したのです」(吉川社長)

この判断には金杉建設の「建設機械は自前で持つ」という社風も影響している。

「会長も私も、3回使って元が取れるならレンタルより購入したほうがいいという考え方。自前の機械なら使い方における社員の習熟度が高くなり、技術も自社に蓄積されます」

埼玉県の荒川上流の築堤工事の受注を機に、ICT仕様の建機や3Dスキャナーなどを購入。その後も「自立してICT施工ができるサポート体制」を判断基準にして、着実にICT関連機器・システムを積極導入していったという。

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アタッチメントには簡易グラブを装着し、ブロックの運搬などに活用されている。この現場ではバケットは標準(幅広)タイプと細長い(幅狭)タイプの2種類を使用。キャブ内にいるオペレータだけでバケットを交換できるクイックヒッチ機能も省力化に役立っている

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市川市の堤防工事の現場。工事期間は2021年9月~22年1月。既存の構造物を取り除き、L字形ブロックを設置するなどの工事が進む。特に狭小地ではチルトローテータが威力を発揮している 

狭小地の堤防工事現場で強みを発揮

こうして多くのICT施工用機器(3D測量システム、ICT建機など)を所有するようになった金杉建設が、新たに導入したのがコベルコ建機のSK135SR-7チルトローテータ搭載3Dマシンコントロール(以下、3DチルトMC)機だ。

「展示会でバケットがグルグルと回っているチルトローテータのデモンストレーションを見て、衝撃を受けました。最初に惹かれたのは、少ない移動で広範囲の作業ができることでしたが、その後、狭小地や複雑な形状の土地での工事でも威力を発揮できることに気づき、購入を決断しました」(吉川社長)

同機はまず、千葉県市川市の江戸川の堤防工事に導入。現場代理人を務める松本真之介さんが、「この現場に入れてほしい」と真っ先に手を挙げたという。

「今回の現場は狭小地があるうえ、古い構造物の除去や新たな護岸ブロックの設置など、複雑な作業があり、チルトローテータの機能は必ず役立つと確信していました。実際に使ってみると、想像以上に作業効率がアップしました。チルトローテータは多少足場が悪くても作業ができ、ショベルを移動させることなく多様な動きができるうえ、3DチルトMCによって丁張りなどの手元作業が大幅に省力化されるのです」(松本さん)

手元作業が減らせることは接触事故の危険回避にもつながる。この点においてもICT建機やチルトローテータ搭載機を導入するメリットだと感じているという。

ICT施工には難しいイメージがあるかもしれない。しかし、最初からすべてのICT化を目指す必要はない。

「まずは、小さな部分だけ簡単にデータを組み、昔ながらの施工方法とICT施工をミックスさせて慣れていくのも一つの手でしょう。その意味でも、自社で機械を持つことが望ましいと考えています」(吉川社長)

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現場代理人を務める松本真之介さんは、この堤防工事で初めて3Dデータを組み、入力する作業を経験した。「最初は苦労しましたが、ICT施工は慣れると現場作業が非常に楽になります。3DチルトMCは、機械を自由に動かしにくい地形の土地でも便利ですね」

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オペレータ歴27年のベテラン、株式会社 西澤興業の星野重典さん。この現場では覆土の法面整形、ブロック下の整地などに携わる。「3DチルトMCを操縦するのは初めてでしたが、移動せずにできる作業の範囲が広くなり、工事の仕上がりも早くなりました。人手やコストの面でも効率化されたと思います」

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3DチルトMCによって土地の形状に合わせた作業が示されることで、オペレータの負担は格段に軽減。「各種大型モニタの表示も見やすいと思います」と、オペレータの星野さんは語る。

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3DチルトMCによって土地の形状に合わせた作業が示されることで、オペレータの負担は格段に軽減。「各種大型モニタの表示も見やすいと思います」と、オペレータの星野さんは語る。

今回の訪問先は矢印

金杉建設株式会社
埼玉県春日部市南1-6-9
tel 048-737-6211
織田信孝= 取材・文 三浦泰章= 撮影 text by Nobutaka Oda/photographs by Yasuaki Miura