造船業の多様な要望に応える
港湾ロジスティクス企業
広島県尾道市 みなと海運株式会社

瀬戸内の港町・尾道。その尾道糸崎港で、鉄鋼製品を中心とした物流を担い、造船業を支えている企業がある。みなと海運株式会社だ。
回漕業に始まる同社の歴史と、現場に寄り添う物流の仕事を追った。

造船業の現場を支える物流オペレーションを提供

瀬戸内地域は古くから造船業が盛んな地域であり、なかでも広島県尾道市はしまなみ海道の起点として物流の重要拠点となっている。その尾道糸崎港で、鉄鋼製品を中心としたさまざまな製品のサプライチェーンの一端を担っているのが、今回紹介するみなと海運株式会社だ。
「当社は私の曾祖父が設立しました」と語るのは、代表取締役社長の加藤雅崇さん。「当初は、船で島々を巡り荷物を受け取り、配達する“回漕業”を営んでいたと聞いています。しかし、荷物を船から揚げる際に長く待たされることが多く、『それならば揚げる側に回った方がよいのではないか』という発想から事業転換を図ったそうです。1959年に現在のみなと海運となり、尾道・三原の港を拠点に港湾荷役事業を展開してきました。そして約20年前、福山の造船会社向けに厚板の取り扱いを開始したことが大きな転機となり、現在の事業の柱へと成長しています」
同社の仕事は、単に荷物を運ぶことだけではない。運搬から仕分け、鉄板の保管まで、造船業の物流オペレーションを一手に担っている。造船業には工程ごとの厳密な納期指定があり、それに合わせて材料となる鉄板を適切なタイミングで運送しなければならない。現場の工程と連動した、きめ細かな対応が求められるのだ。
さらに、鉄板は長さや厚みなど多様な種類があり、納入先が必要とするものを必要なタイミングで確実に届けるためには、あらかじめ細かく仕分けして保管しておくなど、高度な管理能力も欠かせない。
「私たちの仕事の主役は、あくまで製造業のお客様です。現場の状況を理解し、可能な限り要望に応えることを常に意識しています」(加藤さん)
港湾荷役で活躍するコベルコ建機のクローラクレーン

みなと海運でクレーンの免許を取得した生え抜きスタッフの1人だ
港湾荷役の現場で欠かせない設備といえば、クレーンだ。みなと海運では約30年前からコベルコ建機製クレーンを導入しており、現在は120tクラスの3台が稼働している。「コベルコ建機のクローラクレーンは、操作性の良さでオペレータからの評価が高いですね」と話す加藤さん。実際に現場で操作するオペレータの金口侑史さんも、その使い勝手の良さを高く評価している。
港では、仕分けした鉄板をクレーンでつり上げ、決められた場所へと運搬する。積み重ねる際には、わずかなズレも許されない。
「鉄板は限られたスペースにきれいに積み重ねていく必要があります。同じサイズの鉄板同士を合わせることも多く、操作する側としては非常に神経を使います。合わせるときの余裕はほんの数センチ。1センチもずらさないつもりで操作しています」(金口さん)
さらに、港湾荷役ならではの条件もある。港は風の影響を受けやすく、重量物である鉄板であっても揺れが生じることがある。そうした環境下でも、狙った位置に正確に降ろせる操作性の高さは現場にとって大きな安心材料だという。
また、金口さんが特に重要だと語るのが、旋回動作のスムーズさだ。「私たちの仕事は、建設現場と比べても、かなり頻繁に旋回していると思います。だからこそ、動き出しのスムーズさはとても重要です。レバーを入れた瞬間に荷が振れてしまうようでは困ります。スムーズに動き出して、スムーズに止まる。その安定した操作感が本当に助かっています」
現在、みなと海運の取り扱い貨物は造船業向けの鉄板が中心だが、将来はさらに仕事の幅を広げていきたいと加藤さんは語る。
「鉄板は当社の得意分野ですが、今後は鉄鋼製品全般の取り扱いにも対応していきたいと考えています。これまでは造船業界の物流を支える役割が中心でしたが、これからは業界の枠を越え、さまざまな製品を扱える会社へと広げていきたいですね」
瀬戸内の港で培ってきた経験と現場力を活かしながら、みなと海運は新たな物流の可能性を見据えている。

